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うるう年の仕組みを完璧に分からせる

イトーダーキさんからまたまた発注を受けてしまった。そして安易にそれを受けてしまった。

うるう年とはなぜ必要なのか。どんな仕組みなのか。
説明してほしいというのだ。

イトーさん自身は次のとおり説明している。

地球は太陽の周りを公転しており、これが365日かけてぐるりと一周するのにかかる時間を「1年」と呼ぶ。しかし、この1年、きっちり365日なわけではない。実際には365日と約6時間ちょいなのである。

この6時間が積もり積もって、地球の本来の位置を調整するために4年ごとに「うるう年」として1日が加えられるわけ。

アンダースタン?

え、これで十分じゃないすか?
もう完璧に理解してるじゃないですか。

しかしイトーさんはこう言う。

うーーーーん。
分かりそうでわからない。

まあ、そういうことってあるよね。
何となく雰囲気で理解したのだけれど、もっと手にとるように理解したい。幸田文がエッセイの中で

貪欲に承知したい。

幸田文『木』より


という一風変わった表現を使っていたけれど、そういうこと。

では、「全て理解したぜ」と言ってもらえるくらいに、しっかり説明してみよう。

1 地軸って何?

まず、北極点と南極点を結ぶ「地軸」というのがある。

地軸とは

地球はこの地軸を中心として自転している。
自転しているから、太陽に当たる時間帯と当たらない時間帯があって、それゆえに昼と夜の区別があるのだ。
ちなみに自転は、北極点の上から見て「反時計回り」である。

2 地球は傾いて公転している!

そして、地球は地軸を23.4度傾けた上で、太陽の周りを1年かけて回っている。
この「傾いている」というのが分からない人もいるかもしれない。
「宇宙空間なのだから、傾きも直立もクソもないだろう」と思われるかもしれない。

傾いているとはこういうことだ。

地球は円を描きながら太陽の周りを回っている。その円を「公転面」と呼ぶ。
その公転面に対して、地軸が23.4度傾いているのだ。

傾いて回っている

3 傾いているから季節がある!

さて、想像していただきたい。あなたは北半球(北極圏くらい)に住んでいる。
地球がA地点にいるとき、あなたはどう感じるだろう。

暑くない???
そう、地球がA地点にいるとき、北半球の人間にとっては太陽に当たる時間がやたらと長いのだ。北極点近辺だと、24時間ずっと太陽光に当たり続けることになってしまう。夜が来ない。

つまりA地点は昼が最も長い日。夏至(6月21日)に当たる。
逆にB地点は昼が最も短い。冬至(12月21日)に当たる。
C地点とD地点はそれぞれ、春分と秋分に当たる。

つまり、地球の位置によって季節が決まるのである。

地球の位置によって季節が決まる!

4 一年経つごとに地球の位置はズレる

では、いよいよ本題に入ろう。
地球は太陽の周りを、ぴったり1年で回っているわけではない。正確には365.2422日かけて回っているのだ。

ここからは、6月21日(夏至)という日付に着目して説明していこう。
どの日を選んでもよいのだが、A地点が最も説明しやすそうだからだ。

さて、ある年の6月21日に地球がA地点にいたとして、翌年の6月21日には地球はどこにやって来るだろう。

A地点ぴったりではない。
正確には、A地点にギリギリ届かないくらいの、若干手前に位置するはずだ。
そう、「A地点の0.2422日分手前」に来るはずなのだ。

1年経つとこれだけズレる(角度は大袈裟に表現してます)

じゃあ翌々年の6月21日はどうなる?
1年で0.2422日ズレるのだから、それを2倍すればいい。

そう、「A地点の0.4844日分手前」の位置だろう。

さらに3年後の6月21日は、「A地点の0.7266日分手前」の位置だろう。

3年経つとこれだけズレる!

ということは。

年を経過するごとにそのズレはどんどん広がる。
376年後の6月21日には、地球はこーんな離れた場所に来てしまう。
そう、春分の位置に来てしまうのである。

376年経つと、もはや春!

もはや春じゃん。
6月21日なのに、桜が満開になってしまう。

さらに753年後の6月21日はどうなるか。

753年経つと、もはや冬!

もはや地球は正反対の位置に来る。
冬じゃん。6月21日なのに、雪が降ってしまう。

こういうことを防ぐために導入されたのが、うるう年である。

5 四年に一度、ズレを補正してみよう!

4年間で地球の位置は、0.9688日分ずれる。
そこで4年に1回、例外的に「1日多い年」を導入することによって、地球の位置はほぼ元通りになる。

4年間で発生するズレをなくそう!

これは便利だ。よし、4で割り切れる年は「うるう年」と呼ぶことにして、2月29日を設けることにしようではないか。

こうして生まれたのが「うるう年」である。

6 百年に一度、ズレを再補正してみよう!

さて、この話には続きがある。
先程「ほぼ元通り」と言ったが、うるう年を設けても、地球の位置は正確にいうと元の位置から多少進んでしまう

0.9688日分の遅れを取り戻すために1日進めるわけだが、それは進めすぎである。

1-0.9688=0.0312
となり、そう、細かい話ではあるが、0.0312日分だけ進めすぎなのである。

細かい数字であっても、積もれば山となる。
4年で0.0312日分進むということは・・・。
おやおや、100年経つと0.78日分も進んでしまうではないか。これは看過できない大きさである。

せっかくうるう年があっても、100年経つと大分ズレる!

そこで今度は「例外の例外」を設けることでこれに対処しようということになる。
100年に1回、本来ならば導入されるべき「2月29日」を導入せずにおこうというわけだ。

100年に1回は「例外の例外」でうるう年を無くそう

「例外の例外」を考慮した新しいルールはこうだ。

4で割り切れる年は、うるう年にしよう。
ただし100で割り切れる年は、うるう年ではない年にしよう。

「例外の例外」の導入

これで万事解決だ。
と思いきや・・・。これでは終わらない。

7 四百年に一度、ズレを再々補正してみよう!

+0.78日のズレを補正するために、1日減らしたわけだから、これは減らし過ぎである。
1-0.78=0.22
となり・・・。

ダメだ。100年でー0.22日分のズレが生じてしまうではないか。
ということは、400年でー0.88日のズレが生じてしまう。これは看過できない。

400年経つとー0.88日ズレてしまう!

これを解決するには、「例外の例外の例外」を作るしかない。
四百年に一回は、例外の例外の例外で2月29日を設けることにしようではないか。

四百年に一回の「例外の例外の例外」

「例外の例外の例外」を考慮した新たなルールは次のとおりだ。

4で割り切れる年は、うるう年にしよう。
ただし100で割り切れる年は、うるう年ではない年にしよう。
ただし400で割り切れる年は、うるう年にしよう。

「例外の例外の例外」の導入

これが現在のうるう年のルールである。皆さんは西暦2000年がうるう年だったかどうか、記憶にないかもしれないが、うるう年だったのだ。
なぜなら2000は400で割り切れるから。

ちなみに、このルールでもなお、多少のズレは生じる。
400年で0.12日分のズレが生じるということは、3200年で0.96日分のズレが生じることになる。おお、これは看過できないぞ。

よって、「例外の例外の例外の例外」として、
ただし3200年に1回は、うるう年ではない年にしよう。

というルールを作らなければならないが、まあ現時点でそこまで考慮しなくてもよいだろう、ということで、これはルール化されていない。

さて、ここからは「うるう年」の語源とか、法律上の規定などを紹介しようと思っていたのだが、さすがに力尽きたのでここまでとしたい。

皆さん、貪欲に承知いただけたであろうか。

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