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タコの遊具に甘い告白


昔、近所にタコの形をした遊具があった。足をかたどった数本の登り口があり、ひとつは滑り台になっている。調べたら割とどこにでもある遊具らしい。おそらくあるあるだと思うが、それを有する公園は近所では「タコ公園」と呼ばれていた。

タコの内側、つまり脳みその部分は空洞になっており、少し秘密基地のようなスペースになっていた。そして外側、頭のてっぺんは見晴らし台のようなものがあった。かつて幼少期の僕はここから見た景色をどう感じたのだろう。

タコ公園にはタコ以外の遊具もあり、こぢんまりとしたもはや置き物としか思えない動物の乗り物はタコの引き立て役となっていた。

いくつかの遊具には油性ペンで「〇〇を見ろ」と指示が書かれていた。例えば、入口の柱に「ゾウの背中を見ろ」と書かれていて、ゾウを見に行くと「ウサギの耳の裏を見ろ」という具合だ。

最終的には「タコの脳天を見ろ」と書かれていて、タコの脳天を内側から見上げると「愛してるぜ」と書いてあった。

推測だが、中学生くらいの男の子が愛の告白に使ったんだと思う。「タコ公園の柱の文字を見て」あたりからスタートしたんだろう。今思うと恥ずかしさを感じる。本人はやっぱり恥ずかしいんだろうか。それとも、こんなこともう忘れているかな。

当時の子供は、これをアトラクションだと思って遊んだ。僕も遊んだ。ゲームみたいで楽しかった。友達は「あれきしょすぎるよな」と苦笑いしていたが、こうして話題になる程度には公園の名物になっていた。

小学校低学年の僕には、愛の告白なんて大人っぽいと思ったし「愛してるぜ」という言葉をかっこいいと思った。そして僕なんかにこんな時期は来るだろうかと謎に不安に駆られていた。

今はタコはとっくに塗装し直されて落書きは綺麗になくなっている。

それでも、地元民の記憶の片隅には残り続けているんだろうなと確信してしまう恥ずかしい愛の告白。何人にも見られた甘酸っぱいプライベート。公共のものに落書きをするのはもちろんいけないことだけど、当時は彼らは彼らだけの世界を生きていたんだよな、きっと。

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JAM
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