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職場の人のこと
時給ではあるけれど、カメラマンになってもうすぐ1年になる。
ずっとどこかで思っていた。写真を仕事にしてみたい。どんな形でもいい。2023年の5月、勢いのまま僕はカメラマンの求人に応募した。
やってみればなんとかなるもので、仕事として写真を撮ったことのない僕が、カメラマン歴約15年の方と一緒に仕事をさせてもらっている。同じところから派遣されているので、立場としては形式上僕と同じだけれど、キャリアには明確な差がある。僕の師匠と言っていいかもしれない。
仮に、その方を道田さんと呼ぶことにする。もちろん本名ではない。
道田さんは仕事のできる人だ。僕の対極にいる存在。とにかくいろんな経験談が口から出てくる。自慢話のような雰囲気を想像するかもしれないが、あくまで話の流れで「そういえば昔」と引き出しが自然に開いていくような。本当に経験が豊富な証拠だと思う。
コミュニケーションがうまく、要領もいい。初めての物事を理解するのが早い。テキパキとしている。
僕は基本的にマイペースなので、その差に苦しむこともあるし、いつも足を引っ張って申し訳ないなと思っている。
道田さんはせっかちで怒りっぽいところがあって、僕はよく怒られている。最初は何度も休憩時間にトイレで泣いたものだが、僕が「できないものはできない。向き不向きがある」と吹っ切れたことと、道田さんはかなりその日の機嫌に言動が左右されることが多いということがわかったので、もう慣れてしまった。そういう人なんだと分かり、一喜一憂することも減った。
◇◇◇
僕は自分より立場が下の人間にあれこれ言うことがめちゃくちゃ苦手で、早い話すぐ舐められてしまう。舐められは肌で感じるのですぐにわかる。そして舐められている空気と、これ以上舐められたくない気持ちが僕をさらに緊張させる。だから僕は後輩と話すのが苦手だ。
道田さんは生まれ持っての先輩肌だと思う。たくさんの兄弟たちの末っ子だと聞いて納得したものだ。僕の経験上、上に兄弟がいる人の方がしっかりとした先輩になりやすい傾向があると思う。ちなみに、僕は長男。
道田さんに厳しくされたことを恨んだこともあったけれど、いまは感謝している。なぜなら、明らかに前よりも写真が上手くなったし、職場でいい動きができるようになったからだ。しかしこれはあくまで「前の僕」と比べてであって、僕は一般的に言う「仕事のできる人」では到底ない。
道田さんは「いつまでもこんなところで働いてられへんなぁ」と時折こぼしている。僕も彼はもっと輝ける場所があると思っている。
そして僕も、日の丸構図で商品写真を撮るだけのこの生活を無限に続けようとは思っていない。とにかく盗む。プロの技術を盗めるだけ盗む。そういう気持ちでいる。ライトの当て方、背景のラインの見方。全てが今は栄養になっている。
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いいのか悪いのか、趣味で撮る写真でさえ水平がきちんと出ていないと気持ち悪いと感じる体になってしまった。写真で大事なのはそこじゃないのにね。でもこれはこれで、いま自分に起こっている変化として現在進行形で楽しみたい。
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