DC映画ユニバースの変遷をジャンプ漫画に例えながら説明する
アメコミ映画を日本の漫画で表すならば…
MCU=ドラゴンボール
ダークナイト三部作=スラダン
スナイダーバース=バガボンド
ハマダバース=こち亀
ジョーカー=レベルE
ザバットマン=ジョジョ奇妙
ガンバース/DCU=浦中/るろ剣
…というのが私の感覚。
以下、理由の解説。
2012年ごろ、MCUという王道で大成功したシリーズを『ドラゴンボール』としよう。同じ頃、ワーナー首脳陣はDCコミックスの版権を持っているので、同じくユニバース構想で対抗したいと考えた。
ノーランが作ったダークナイト三部作は、言うなれば、ドラゴンボールとほぼ同時期に人気でジャンプ黄金期を支えた『スラムダンク』である。ドラゴンボールよりリアル志向なのも似てるよね。
ワーナーはノーランにヒーロー映画を作り続けて欲しかったが、ノーランは最高に盛り上がったタイミングで強い意志で降りた。これもスラムダンクを絶頂期に連載終了した井上雄彦と通じる。
そこでワーナーは、DCコミックスの大ファンで、300やウォッチメンで定評があったザック・スナイダーを総合ディレクターに選んだ。
スナイダーが作ったDCユニバースは『バガボンド』である。一作目のMOSはノーランが共同プロデューサーに入ってるので、まだスラムダンクっぽさが残っていたが、第二部の佐々木小次郎編から筆のみで描くスタイルを変えて、どんどん玄人好みの味わいになっていった。
ワーナーからアッセンブルを急かされていたこともあり、スナイダーは長尺の映画に色んな要素をどんどん詰め込んで、二作目BVSにして早くもスナイダーの芸術性は究極に達した。このように高品質な作品を連発しながらも、マーベルに染まっていた批評家とワーナーが求めていたのはドラゴンボールのようなポップさだったので、ワーナーはスナイダーを当初のグランドデザインが完結する前に辞職に追い込んだ。
スナイダーが降ろされた後は、DCコミックス出身のジェフ・ジョーンズが後任の目算だったと思われる。
しかし、ジョーンズはスナイダーの映画を魔改造して監督ジョス・ウェドンの好きにさせたので、ジョスティスリーグが興行的に失敗した責任ですぐ解雇された。
そこで繰り上がり方式でプロデューサー(つまり経営者としての手腕はあるがアメコミの優れた素養はない人)ウォルター・ハマダがそれ以降のDC映画の陣頭指揮を執った。ハマダは各作品の監督にクリエイティビティを丸投げして、表向きには「それまでの作品間のつながりを薄める」という口実を用意した。裏を返せば「私はマーベルのケビン・ファイギのように全ての作品の関係を考えてグランドデザインを描けません」と言ってるようなものである。
DC映画は1話完結で何も考えずに楽しめる『こち亀』になった。
まあつまらなくはないし、読めるけど、ドラゴンボールやスラムダンクのように熱狂的に燃えることはないため、ファンはどんどん離れていった。
テコ入れのためにワーナーはユニバースに属しない2つの世界線を作った。トッド・フィリップスのジョーカーは突き詰めた芸術性とメタ視点を組み込んだ『レベルE』である。またマット・リーヴスのバットマンは、やってることは王道なのに見せ方だけがファッショナブルなところが『ジョジョの奇妙な冒険』と似ている。
またファンの声があまりにも根強かったので、2021年3月にワーナーはスナイダーが編集まで完了していたのにお蔵入りだったジャスティスリーグスナイダーカットの公開(配信のみ)に踏み切った。この作品は一般客からも批評家からも高評だったが、ワーナーの当時CEOアン・サノフが4月に「スナイダーバースの今後の展開は無い」とメディアで宣言したために、逆に炎上がエスカレートする事態となった。(これはスナイダーカットが日本公開される5月より前だったので、日本ではあまり報道されなかった。)
2022年4月にワーナーはディスカバリーに吸収合併されて経営層がチェンジした。数字だけ見ると、スナイダーとハマダではハマダが圧倒的に成績が悪かったので、効率主義者の新CEOザスラフはハマダをすぐに解雇した。
しかしハマダの後釜を決める作業は難航した。いまや伝説になりつつあるノーランやスナイダーの後に続いて、DC映画の責任者ポジションに入るだけのキャリアや資質や度胸がある人が居なかったためだ。
ノーランはオッペンハイマーのクリエイティビティの相違を理由にユニバーサルに移籍した後だったし、スナイダーはWBを事実上解雇された後にネットフリックスと準専属契約を交わしていたので、2人をカムバックさせる交渉は失敗したのだと推察される。
結局、半年後の2022年11月に(消去法で選ばれたようにしか見えない)ジェームズ・ガンとピーター・サフランが就任して、さらにそこから3ヶ月ほど使って2人はアイデアをまとめて、2023年1月末に次のユニバース構想を発表した。これが現行のDCUである。
スナイダーからハマダが横取りして、最後は舵取り不在のまま、沈みながら進んできたDCEUは2023年12月のアクアマン2を最後に終了した。
なお、すでにガンはDCEUで幾つか映画を作っていたが、それらは『浦安鉄筋家族』だった。下品なギャグでひたすら突き進む。さすがにDCUはR指定にできずに行儀良くやると思うので、まあ『るろうに剣心』のようなものになるだろう。
え、なぜ、るろ剣なのかって?
それは、もちろん…
「るろうに剣心」作者、児童ポルノ所持容疑で書類送検…「単純所持」アウトの基準は?(2017年11月25日 09時29分)弁護士ドットコムニュース
だからよ。(笑)
みんな、忘れてないよね?
一応、ガンは8ヶ月後にディズニーに再雇用されたけどね。
でも結論まで見ると、結局はガーディアンズVol.3を途中まで制作済みだったので、公開中止にすると興行面で莫大な損失が生じるのと、小児性愛と児童性犯罪の疑いがある人物でも応援するバカで妄信的なファンの反感を買わないためでしょ。
ディズニーは長い時間をかけて法務的に問題ないこと(裁判でガンを有罪にできるだけの証拠はなさそうという点まで)だけ慎重に確認してから、作りかけてた映画だけさっさと公開して、その後にすぐに絶縁してワーナーに押し付けてる。
なので、まあ、ディズニーはガンを「限りなくクロに近いグレー」だと判断したのでしょうね。
やっぱり、性根が下劣な人じゃないと、あのピースメイカーのような「下品に振る舞えば面白い」と勘違いしてるFラン大学生ような映像作品は作れないのよ。ありゃ酷いって。まあ脳内が中学生男子のバカには面白く見えるのかもしれんけどさ。
私はガンの作品は下品すぎるので嫌いです。例外として、ディズニーが配給した作品は《ディズニーフィルターシステム》のおかげで見れたものになってるね。ガーディアンズVol.2は割と好きよ。
それはジョス・ウェドンに感じるところと一緒ね。
さて。
話題を元に戻そう。
もう一回リストアップするけど、スナイダーバース(バガボンド)とジョーカー(レベルE)だけ小学生が読むには難しい漫画なんだよね。
この小学生にどこまで優しくするかという論点は運命の分かれ道。ヒーロー映画なんて、本質に立ち返ると、第一は子供向けの娯楽から発祥しているものだから。「ヒーロー映画として求められるものとして子供対応は外せない」と感じる会社重役や批評家や観客が多ければ、レビューサイト等でスナイダー監督作品の点数はそりゃ下がるわけで。そこらへんがMOSやBVSやBOPやJOKER2が低評価になった原因かな、と私は思うよ。
面白いかどうかじゃなくて、相応しいかどうかで選んでるでしょ?
アメコミ映画ってそういう批判的な感想が多いじゃん「こんなのスーパーマンじゃない」みたいなやつ。そういうことよ。
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(了)