
やさしさがひらく
目を覚ます。
窓の外は雪。
見慣れない景色を、寝ぼけ眼でしばし堪能する。

体操を済ませ、簡単な朝食をとる。
薪ストーブについているオーブンで、レンコンを焼く。昨夜火を入れたイノシシのベーコンの油が残っていて、傑作の一皿となった。

雪の中を歩く。
未踏の積雪を行く。
ふりかえると、わたしの道ができている。

紅葉が美しい季節に訪れたときと、同じところを歩こう。

鳥たちのさえずりは、ほとんど聴こえない。

地蔵川まで降りる。秋には「子どもたちが渡るのに、ちょっとの勇気が必要」と言って笑っていた橋も、今は試練の道となる。


無事に橋を渡り、安堵。
おや、雰囲気が変わった。
橋のこちら側は、ぐぐっと動物たちの気配が高まる。


森の入口。この扉をくぐって、わたしにはやることがあった。

「カン、カン、カン……」
スコップをペグで叩き、森の住民たちに挨拶をすること。
これは、2泊あった今回の滞在で毎日やった。
「お邪魔します。歩かせてもらいます」

この季節にしか見えない道。
おずおずと後につづく。

川の向こう側から見たツリーハウス。
前回来たときには、半分ほどだったのに。

今回もツリーハウスに登り、樹上回廊を行く。
このツリーハウスには「ゆずり合って通ろう」という注意書きがあるだけで、「大人禁止」と書いていないところが気に入っている。

鳥の目線になれる回廊からの眺め。
川のせせらぎが心地よかった秋。

今は、耳に入るせせらぎにはすこしの緊張感がともなう。
緊張を抜け、コテージへ戻る。気がつくと口笛を吹いていた。音痴だけれど「Beauty and the Beast」を何度もくり返して。
心が落ち着き、やさしい気持ちになっていた。

***
キャンプ場の外にも足を伸ばす。あったかくしたお地蔵さんにもご挨拶。

雪のために働く車とすれ違う。頼もしさがある。

雲に覆われていた空に、光がさす。
山が見えたのは、ラッキーだった。

「火の見え方がかっこいいんです」
「ルオムの森」の、かっこいい薪ストーブにあたる。

「山と川と暮らし」の玉井つぐみさんによる「狩猟にまつわるエトセトラ―山で見つけたあれこれ展―」へ。

わたしが入った森のすぐ近くには、本当に野生動物たちが暮らしている。
いのちの跡が、それを教えてくれた。

鳥の羽根も、標本のようにきれいに並べられている。
つぐみちゃんが眼差しを向けたものたちを、愛おしく、ときに畏怖の念を抱きながら鑑賞した。

帰り道、友人の玉井さんが軽井沢まで送ってくれた。
凍結した道路をおそるおそる走る車が前方に。
「準備と下調べは必要。事故につながる」
無理に追い越そうとせずに、徐行をしながら玉井さんは言った。
できることは、環境が下支えしている。環境に裏切られたことの少ないわたしは、準備も下調べもどこかで軽視してやいないだろうか。
多くの学びを抱きながら、雪は降りつもる。
※北軽井沢・スウィートグラスに遊びに行ってきました。
秋の滞在の様子はこちらから。
〈お知らせ〉
「狩猟にまつわるエトセトラ―山で見つけたあれこれ展2025―」
会期|3月9日(日)まで
時間|11:00〜17:00 ※月・火休み。ただし2月24日(月・祝)は営業。
場所|ルオムの森 百年の洋館2F
(群馬県吾妻郡長野原町北軽井沢1984-239)
主催|山と川と暮らし
〈おまけ〉
▼「山と川と暮らし」玉井つぐみさんの眼差しがわかる記事