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ネオ売り子

半年に一度、原木しいたけの販売をお手伝いしている。
青山ファーマーズ・マーケット。表参道の国連大学前で、毎週やっている市場だ。しいたけが出てきたときだけに出店するので、半年にいっぺん。

兵庫県・猪名川(いながわ)町から直送される原木しいたけは「仲しい茸園」のもの。
春子(春にできるしいたけ)は最高級のものが送られてきた。

「冬子(どんこ)が有名だけれども、春のしいたけも最高なんです!」
「今年の冬はしっかり寒くって、雨も多かったので、すごく大きなしいたけができました〜。食感と香り、味わってほしい!」
さあ、見てってくださいね〜! と売り子をする。

このところの表参道(ここだけじゃないかも)、とにかく外国からのお客さんが多い。
しいたけを生産する中さんは、英語も流暢。
「ドゥーユーノウ、シイタケマッシュルーム?」
ペラペラと英語圏のお客様に接客をする。

わたしも負けじと
「ベリーデリシャス!!」
と声を張る。

そこに、スマホを片手に現れた若い女性が。
中国語で何やらスマホに語りかける。
「ここは何を売っていますか?」
スマホに文字が表示される。
「原木しいたけです」
こちらもスマホに向かって大声で答える。

……ありゃりゃ、うまく翻訳できない。
設定をし直して、もう一度。
「原木しいたけを売っています。わたしたちは里山を守るために原木しいたけを生産しています!」
またスマホに向かってしゃべる。

……今度はうまくできたようだ。
彼女がスマホにしゃべる。
「あなた方は素晴らしい活動をされていますね」

えへへ、そうっすか。やや照れながら(わたしが照れる場面ではないのだが)中さんにも伝える。
「謝謝!」
中さんも嬉しそうだ。

このやりとり、わたしたちはねばり強く何度もくり返した。彼女もわたしの心意気を買ってくれたのが、乾しいたけを購入してくれると言う。

支払い方法を聞かれたので
「現金か、paypayで払えます」
とやる。

彼女は現金を持っていないらしく、アリペイという電子マネーがあるのみだと言う。

世界を飛びまわる中さんは、中国出張の際に入れたというアリペイで送金を受けられないか試してくれた。
……結果、アリペイは中国では使えるが、日本国内での支払いはできないようだ。

その理由を翻訳ソフトを使って、ていねいに説明してくれた彼女。
結局しいたけは買ってもらえなかったけれど、わたしたちの大事にしていることは伝えられた。

「謝謝!」とくり返しながら彼女は去っていった。
こちらこそたくさん話を聞いてくれて、ありがとう……。

なにか渡したかった。こういうときに、飴ちゃん持ってる人でいたい。

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