大都会クアラルンプール
クアラルンプール①
小さいながらに風格を保つ街マラッカを抜け、相変わらずのプランテーションをバスは進む。
といっても、ジョホールバル→マラッカ間よりは、田畑や他の樹木、町が見えるから、風景は少し違う。
クアラルンプールにはいくつかのバスターミナルがあるが、私がたどり着いたのはTBSというテレビ局のような名前のターミナルだった。
TBS、こと、Terminal Bersepadu Selatanはクアラルンプール最大のバスターミナルである。
クアラルンプールの市内に入って圧倒されるのは巨大な道路とビル、そして空中を走るモノレールである。
シンガポールという都会国家からこの旅を始めた私だが、ジョホールバル、マラッカとお世辞にも都会とはいえないところを通って来たので、衝撃を受けた。
東京出身だからか、都会を見るとなんともいえない、迫り来る現実感のようなものを感じる。
それもそのはず。
クアラルンプールは東南アジアでは、シンガポール、バンコクに次ぐ第三の都市なのだ。
Y字の街
大都会クアラルンプールは川と丘の街だ。
クアラルンプールとは、「泥の(ルンプール)川の合流地点(クアラ)」を意味する。
名前からわかるように、街の中心には、ゴンバッ川とクラン川という二つの川が合流し、一つの川となる地点がある。
つまり、この街の中心部は、Y字に流れる川によって、北・東・西の三つの区画に分かれているわけだ。
そして、東西二つの区画には大きな丘がある。
西の区画のほとんどは丘が占めているが、東の区画は丘の間に平地がある。
その影響もあるのか、西の区画のほとんどは国家や州の施設だが、東は丘の麓だけでなく、丘にまで繁華街が広がっている。
繁華なるビンタンの丘
私の最初の宿はブキッビンタンこと、ビンタンの丘にあった。
丘というとのどかな場所のように見えるが、この場所はクアラルンプール市の繁華街。
強いていうなら、クアラルンプールの新宿である。
この地区のメインストリートはブキッビンタン通り。
丘の小高いところを貫く目抜通りである。
通りには高いビルが並び、電気屋や飲食店、旅行会社に日本のカラオケまであらゆる店が並ぶ。
通りの突き当たりにはパビリオンクアラルンプールという巨大なモールがあり、そこには高級ブランドが軒を連ねている。
私が行った時は高級車のショーをやっていたから、やはりここは高所得者向けの場所なのだろう。
このあたりには、パピリオンだけでなく、さまざまなモールがある。
棲み分けがあるのか、どこもかしこも高級というわけでもなく、宿のそばにあったブルジャヤ・タイムズスクエアや、プラザ・ロウヤッなどは比較的庶民的なモールだった。
そういえば、マレーシアでは、ジョホールバルやマラッカでも大規模なモールをよく見かけた。
この国はモール文化があるのかもしれない。
だが、多くの観光客にとって、ブキッビンタンはモールではない。
宿の多さもさることながら、ナイトマーケットがやはり華である。
メインストリートのブギッビンタン通りから一本入ったアロー通りは、夜になると大規模ナイトマーケットになる。
アロー通りは、クアラルンプールを東西に駆け抜けるプドゥ通りから分岐して、ブキッビンタン通りを並走するように進む。
ナイトマーケットの灯りは、アロー通りのスタート地点であるプドゥ通りから、終点まで続いている。
歩行者天国となっているアロー通りの左右には巨大なイートインスペースがあり、屋台で頼んだ食べ物が食べられるようになっている。
各スペースの入り口にはメニューを持った人が立ち、
「お兄さん、お姉さん、ご飯かい?それならうちにきな」と道ゆく人に声をかけている。
時々現れるタイ式マッサージの店や、ちょっとした飲み物を売る店、とにかく色々な店から、歩いているだけで声がかかる。
ここで食事をするのもいいだろう。
だけど、やはりどうにも高くつくし、私はついぞナイトマーケットで食事をとることはしなかった。
もう少し南に下ったところに、10号胡同と呼ばれる飲食店街があり、私はそこで夕飯をとったが、その話はまた別でしようと思う。
ナナスの丘とランドマーク
ビンタンの丘を下ると、外国人向けのバーの類が並ぶ界隈が現れる。
さらに北へと向かうと、すぐに別の丘が見える。
ブキッナナス、こと、ナナスの丘だ
ナナスの丘の上には、この街のランドマークの一つであるクアラルンプールタワーがある。
1990年代からある由緒ある電波塔で、最上階のレストランからこの街が見渡せるらしい。
らしい、というのは、登らなかったからである。
とはいえ、このタワーは街中基本的にはどこからでも見えるので、方向感覚を鍛えるには役立った。
ナナスの丘から東へ、つまり、川から見ると、ビンタン、ナナスの二つの丘の向こう側に、有名なペトロナスツインタワーがある。
さして期待はしていなかったが、ツインタワーは眩いメタリックで、八芒星の形が独特の直線美を生み出していて、なかなか圧倒されるものがあった。
ツインタワーの前には広場があり、観光客が写真撮影に余念がない。
カメラマンがたむろしていて、写真を撮らないかと声をかけてくる感じも、アジアの観光地という感じで、鬱陶しさ半分、面白さ半分という感じである。
***
クアラルンプールの東側地区の丘の周辺は、新しい街だと言えるだろう。
都会に、高層ビルに、ランドマークといった、いわばクアラルンプールの象徴はこの地区に集中する。
とはいえ、大都会には必ず、下町が存在する。
だが、その話はまた次回。
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