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博多へは帰れない〜ルヴァンパーリーと夢と現と~

去る11月4日、国立にいた。
アイコンとこれまでの投稿を見てもらえばわかる通り基本的にはギラサポである。
ただなんとも居ても立ってもいられず、国立へ向かった。

この投稿はこちらのnoteへの勝手なアンサー? 返歌? だと思って書いている。

長いこと地元を離れている人間として、共感できることと思うことが沢山あったので。

10月15日、愛媛FC戦を現地で見つつ今シーズンの何回見たことかという負け展開の中、アビスパが準決勝2戦目も仕留めて決勝進出という情報が入る。
最初はすげーなあ頑張れ〜くらいだったが、28年目で初めてのタイトル目前みたいな話をいろいろ見てると「国立、行きたくねえか」という気持ちが強くなり、気づいたらライブ遠征で培った安く移動するテクを駆使し、ダイナミックパッケージでサクッと新幹線とホテルを抑え、国立のチケット応募完了。一般でも普通に先行でゴール裏取れてホッとする。

北九州出身のためギラサポだが、個人的にはギラヴァンツのギの字も無かった小さい頃に親父に連れて行ってもらった博多の森とアビスパが全ての原体験だと思ってるのでアビスパに苦い感情はない。(ダービーを除く)

近くのスーパーでお弁当買って、なんかコロちゃんコロッケとか買ってもらって、試合開始のわりとギリギリに着いてバックスタンドのコンコースを出た瞬間の緑。あれが全ての始まり。
デイゲームでは青空と映える芝、ナイトゲームなら照らされるグリーンと夜のコントラスト、いい大人たちが大声で歌ってゴールが決まったら一斉に立ち上がる異様な雰囲気。スタジアムは異世界への入口だった。

別の言葉を借りれば──あれが「土曜の夜の夢」なのであり、おそらくその夢に今もまだ取り憑かれている。

というところでアビスパも気にかけつつギラヴァンツを追っているという次第であり、特にカテゴリが違う今は土日でそれぞれの試合を見ていることが多い。
ここ数年、ずっと「一家に一台前寛之」と言いながら前のプレーに心酔している。加藤弘堅が去ったあと気の利くボランチがおらず、本当に羨ましい。

そんな自分にとっての“オリジナル”であるアビスパが国立に行く、28年目で初ってことはこれ逃したらもう今後一生ないかもしれんと思ったら即決だった。
それから国立までの3週間、なんとなくソワソワしつつ通勤の車でアビスパチャントとか聴きながら行くようにしたが、昔と全然変わってなくてそこまで予習せんでも大丈夫そうかもとか思いつつその日が近づく。

金曜に前日入りし、サッカーショップKAMOとかでユニフォーム買うたろと思ったら全然売ってなくて愕然としつつ、当日朝のグッズ販売に賭けてなんとかオーセンをゲット。
去年のサンフレッチェが日付の刻印付きのやつ売ってたみたいだからそれ期待してたんだけども。

国立 8時半頃

開場してからは一瞬だった。
前座のお子様サッカーで全然反応しない浦和とワイワイお祭りの福岡とで、やっぱタイトル常連はピリつき感スゲーけどこっちのお祭り感のがいいなーとか思いながら。

山笠チャントがね、好きなんすよね。
うちにもヤッサはあるけど、攻撃に転じるときのオイサの圧がマジで好きなんだよね。

太っ腹 まだ食べてない

アビチアさんが出てきて歌い始めてもユラユラ旗を動かしてるだけの浦和の不気味さとか、浦和サポが声出し始めた後のいろいろの聞こえなさとか、反響と浦和の声とで中心との声がズレまくってわけわからんとか、ノブリュウの声の安心感とか、一瞬で前のゴール決まって何も見えんかったけど周りの知らん人と抱き合って喜んだこととか、宮のゴール決まって何も見えんかったけど周りの知らん人と抱き合って喜んでこれはもう勝ったわと思ったこととか、山岸のPK失敗からその直後の浦和のVARが何も見えんかったけどなんかPK無しでホッとしたこととか、その後から浦和の猛攻でもうみんな1分毎くらいに後ろの時計をチラチラ見てまだ20分もあるんかよと思ったこととか、8分!?ふざけたロスタイムですね!と思ったこととか、カンテのシュートがポストに当たるまでの瞬間があまりにもスローモーションだったこととか、最後の笛が鳴って周りの知らん人と抱き合って喜んだこととか──

うれしいね

そしてまあ長い前置きからのここからが本題というか。
いろいろが終わって「博多へ帰ろう」の大合唱。

歌いつつも思う。
みんなと同じように博多(福岡)へは帰れない。
きっと国立に駆け付けた人たちの中にも沢山そういう人はいて、そのまま東京に住んでるのかもしれないしどっか別のとこから来たのかもしれない。

博多へは帰れない。

高校を出て福岡を離れてから大学、就職、転職、転勤……といろんなところを転々としてきた。福岡に帰ることはなかった。一度福岡に帰るつもりだったときはあったが、結局様々な流れの中で福岡に戻ることはなかった。
今の仕事をしてる以上はきっとこの先も福岡に帰ることはないだろう。そのうち熊本くらいまでは行けるかもしれないが。

こうして地元を愛して、福岡を愛して、時にぶつくさ文句を言いながらも愛するクラブをずっと身近に見ていられる人たちが羨ましい。
今、基本的には毎週DAZNで見て住んでるところの近場アウェイに来たらたまに行くような感じである。テレビで見るのとスタジアムで見るのは全然違う。

前述の通り、スタジアムは異世界だ。

ゴール裏住民なら叫んで跳んで長年の仲間と話してそれだけでもストレス解消になるかもしれないし、スタグルやイベントや、様々な角度からサッカーだけじゃなく楽しめることが沢山ある。
自宅でDAZNを見ているだけだと不甲斐ない試合を見た時のストレスは蓄積し、勝ち試合でもあの日国立で味わったような高揚感は手に入らない。
東京駅のお土産売り場をユニフォームで歩き回って、たまに同じユニフォームの人を見かけて心の中でおつかれっした!と声を掛けたりして家に帰るまで続くような高揚感はない。

遠足の締め チキン弁当

ないものねだりなのもわかっている。
これで仕事やらいろいろなものを全てリセットして福岡に戻ったとして、数ヶ月、もしかすると数週間でもういいかなと思うかもしれない。
逆に、こうして地元のことなど何一つ顧みずに外の世界を動き回っている生活を羨ましく思う人もいるかもしれない。結局隣の芝は天然芝なだけなんだろう。

だからこの先も、博多へは帰れない。
叶わない望郷の念を胸の奥で転がしながら、遠く離れた地で君たちが訪れるのを待つ。

願わくば──同じく博多へは帰れない者たちにとって、アビスパやギラヴァンツの存在が故郷を思い出させるひとつの拠り所であればいい。
そしてそれが、それこそが百年構想の目指すべき場所だと思っている。

初心にはかえれない

あの日見上げた国立の空は、一生をかけていろんな場面でフラッシュバックし続けるのだろう。


P.S. 2020のダービーとかで池元友樹と城後寿が挨拶でも試合中でもいいけど絡んでる写真とか持ってる人いたらください。

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