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Mr.Childrenと“Rock'n'roll”

デビューから25周年を過ぎても今なお最前線を走り続けるバンド、Mr.Children。かつては「終わりなき旅」「Tomorrow Never Knows」など、今では「HANABI」「GIFT」など時代に合わせてヒット曲を作り続けている。

そのヒットの多さも相まってかJ-POPの王様のような扱いだったり、SUMMER SONIC出演時にちょこちょこ耳にした場違い感であったり。何を言う? Mr.Childrenは紛れもないロックンロールバンドだ。今までも、これからも。

ミスチルがそこまでロックバンド扱いされないのはあまりにも大きくなりすぎたこと、(これはスピッツにも同じことが言えると思う)そして小林武史のアレンジに起因するところがあるだろうと思う。

もちろんMr.Childrenがここまでになるにあたって小林武史の貢献というのは大きく、“5人目”として小林武史がいなければ今のMr.Childrenがないこともまた明らかである。しかし、「I♡U」「HOME」辺りの少しくどいと言ってしまいそうになるピアノアレンジであったり、ライブで自分がメインかのようにピアノソロを入れる姿に少し辟易していたファンもいるだろう。

念のため言っておくが、筆者は現状嫌いなアルバムなどはない。「HOME」に関しては発売した頃にはあまり好みではなかったのだが、年を食うにつれてこのあっさりとしたまとまりのアルバムは非常に喉越しがよく、聞きやすくなった。逆に若い頃大好きだった「シフクノオト」「I♡U」なんかのシングルを詰め込んだアルバムが少し重いと感じるようになってしまったりはあるが。

少し脱線した。小林武史の貢献は計り知れないけれども、Mr.Childrenがやりたいこととして本当にそうなのか? という部分はずっとつきまとっていたように感じる。その辺りで桜井和寿と小林武史との不仲みたいな話や、ap bank fesがない時期などでなんとなくそういった雰囲気は漂っていた。(あまりこの辺はぼやっとしたまま話してもよろしくないのでこのくらいで)

そして2015年発売の「REFLECTION」で小林武史からの脱却が進む。個人的な話ではあるが、この「REFLECTION」で久々にミスチルのRockを物凄く感じて嬉しかったのを覚えている。

Mr.Childrenというバンドを語るにあたってオタクと有名な曲は知ってるよという人との大きな違いが、ダークなミスチルへの捉え方であると思う。有名な(売れた)曲で言うと「終わりなき旅」なんかは完全に応援ソングとしての代名詞だし、「HANABI」は歌詞的には暗めではあるものの繊細なメロディラインからそこまでの暗さは感じない。

ただ、これは声を大にして言いたいのだがミスチルの真骨頂は人間の闇を煮詰めたようなダークな曲なのである。ダークな曲を、ダークなロックを彼らはずっと作り続けている。

あまりここで「こんな風にひどく蒸し暑い日」が~などと話しても伝わりづらいので、もう少し有名なところでいくと「NOT FOUND」なんかはけっこう暗めだろう。

気持ちのいいサビに持って行かれてスルーしがちだが、

あと どのくらいすれば忘れられんのだろう? 過去の自分に向けたこの後悔と憎悪

と、かなり病んでいる。この暗さこそが実はMr.Childrenの真骨頂であると思っているので、「REFLECTION」でそこともう一度向き合ったような気がして嬉しかったのだ。

そして去年。19作目の「重力と呼吸」が発売される。

このアルバムは完全にMr.Childrenのセルフプロデュース作品となっており、小林武史からの脱却と合わせてロックバンド・Mr.Childrenへの回帰を果たした。ベースの中川敬輔はわりとうねるベースラインと言うか、メロディアスなラインを弾くことが多いのだが、「海にて、心は裸になりたがる」では8分のルートが中心という若いロックバンドのようなベースラインを弾いている。

そしてこれも私の印象で語ってしまう部分ではあるが、これまでミスチルは直球のラブソングというのはあまり歌ってこなかった。「君が好き」くらいだろうか。ただこれも暗いミスチルの曲であり、純粋なLOVEではなく少し斜に構えたような部分がある。それが本作のリード曲、「Your Song」では、

そう君じゃなきゃ 君じゃなきゃ

という直球を投げ込んでいる。このようにロックバンドとして直球の10曲を詰め込んだ「重力と呼吸」で、ようやく自由にロックを謳歌できるようになったMr.Childrenを感じるのである。

また、このアルバムを語る上では「himawari」は欠かせない。「君の膵臓をたべたい」の主題歌となった曲だが、初めて聴いたときには「ロックなミスチルが帰って来た」と思った。「DISCOVERY」や「Q」に入っていてもおかしくないようなバンドサウンドに、(キミスイに合わせた部分はあるだろうが)暗めの歌詞と私の好きなミスチルが詰まっていた。

「重力と呼吸」発売時に一通り曲を聴いてみてから、これは賛否あるだろうなと思った。それはMr.Childrenが小林武史と作ってきた、ポップなミスチルを求めている人にはこのアルバムは微妙だろうと思ったからだ。

しかし、私のように“この”ミスチルを待ち望んでいた人間もいる。大きくなりすぎたMr.Childrenというバンドはもはや多少何があろうとその地位は揺るがない。大きくなりすぎて動きづらいこともあるだろうが、それを上手く使って自分たちのやりたいことを好きにやってくれと切に願う。

(私はチケットが全然当たらずどこにも行けなかったのだが)最近YouTubeなどに公式が上げているライブ映像を見ると、凄まじくエネルギーを感じる。桜井和寿はここ数年で明らかに喉の調子が一番だし、中川敬輔は昔からの落ち着いたベースに渋みが増し、惚れ惚れする。田原健一は淡々としているイメージが強いが最近はよく笑顔が見えるし、鈴木英……JENはJENである。この円熟のMr.Childrenを生で見たいのだが、なかなか叶わない。

上でも述べたが、「重力と呼吸」は19作目だった。「10力と呼9」で19なんてなんて話も聞いた。9作目の「Q」みたいなものだろう。

来年は2020年。次のアルバムが出れば20作目。「こころ」「お伽話」のようなストックもある。

何が言いたいかわかるだろう?


来年は“ロックバンド”Mr.Childrenの年だ。

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