『近江商人の哲学』/山本昌仁

p.6 過去の風景を再現するだけでは意味がないので、建築家の藤森照信先生にお願いした。ここでしか見られない風景を作り出す。

p.7 自然に学ぶ。なぜ菓子屋が田んぼをやるのか。お米がなければ明日から大福も作れません。お米がどうやって育つかを体験し、知ることも私たちにとっては大切なこと。

p.8 ここは何かを売る場所というよりは、たねやの生き方を知っていただく場所

p.9 近江商人は、近江に本拠地を残したまま全国で行商、わおこない、諸国産物回しといって、その土地に足りない物産を運び込んだ。

p.10 成功した近江商人には、故郷に橋をかけたり、寺社仏閣に寄進したり、山に木を植えて治水するひとが珍しくない。彼らにとって近江は自分の家

p.11 先義後利。目先の利益を追うのではなく、まずは相手が喜ぶことを優先する。細く長くであっても、組織が永続することを優先する。

p.27 たねやは、バブル時代にホテルや料理屋などから大口注文をとることをやめ出した。値引きしてでも大量に卸すよりも、店で売ることを選んだ。

p.48 手作業のほうが不味くなる理由。和菓子は人間の手が加われば加わるほど、ダメになっていく。記事が作業台に付かないように粉を降り、手に粉をまぶす。粉を加えると生地は硬くなる。名工と呼ばれる菓子職人は手に触れている時間が短い。

工場でカットしてすぐに包装するほうが日保ちする

p.50 人間には作れない水羊羹。
世の中に出回っているのは缶詰。高温で殺菌することでいつまでも保存が効くようにしてる。高温で熱すると小豆が変質して風味が飛ぶ。

食品を長持ちさせたいとき、①殺菌のために熱する、②砂糖を加える、③最初から無菌でつくる。

たねやはグリーンルームで完全無菌状態にして水羊羹をつくる。熱を加えず飛躍的に美味しくなる。機械があればこその話し。手作業でこの美味しさを作り出すのは不可能。

p.54 手作業ですべき部分と、機械に任せたほうがいい部分を見極める

p68 ヤンチャだったが、舌が鈍るのでタバコは吸わなかった。

p.73 たねやは業界でも珍しくアート室をもっていて、商品のパッケージデザインも、店舗のディスプレイもすべて自分でやる。

p.76 業界の仲間を見ると、普通の大学を出て銀行や外資系金融機関に勤めたりしてから家業を継ぐ人が多く一般的。しかし、父は菓子屋が数字の勉強してどうすんねん。菓子屋やる意味ないやないか。という考えだった。職人に指示を出すのでも、菓子を理解しているかどうかで、言葉の重みが変わってくる。

p.82 要は売れたらええ。売れへんもんを一生懸命作ったらゴミになる。そしたら農家の方に顔向けできない。

p.83 もう味だけで判断してもらえる時代ではない。見せ方も含め、トータルでお客様を感動させないといけない。

p.87 京都や東京には製餡会社がたくさんある。実は多くの和菓子屋は自分であんこを炊かず、製餡会社から買っている。小量販売の店では自分で炊くのは効率が悪い。
当社は菓子に合わせて餡子を専門で炊く人がおり、何十種類の餡子を作っている。
小豆の皮だけでも大変な量になるが、うちは農園で肥料にすればいい。大都市では産業廃棄物として引き取ってもらうしかない。大都市の菓子屋が製餡会社から買うことが多いのにはそういう理由もある。

p.135
ラコリーナ設計者の藤森照信氏。
やっぱり本物を使わないとダメなんですよ。張りぼてで偽物を作るぐらいだったら、トタンを使う方がカッコいい。安っぽいからと敬遠されるトタンが、長い目でみればもっとも自然に近い効果をあげる。どこかに似たものがあれば途中でもやめる。

p.144
普通の会社ならアウトソーシングする部分も自分たちでやる。菓子屋では珍しく、デザイン室を自社に設けている。

p.160
自分一代で良いと思ったらいけない。次の世代のことも考えて行動しろ。こういう視点こそ近江商人の知恵

p.192
謝るような仕事はするな。でも、謝る必要のないことに謝ったらいけない。

p.196
八日市の杜では、寿司屋のように目の前でケーキを作って食べられるシェフズカウンターを設けている

p.203
見える化が意識を変える。
私は計算する人、あなたは売る人という感覚になってしまいがち。お客様の相手をするのは販売スタッフの仕事、自分たち菓子職人には関係ないと考えてしまう。

p.204
机に張り付いてるだけで、仕事してる気分になるな。

p.205
なぜフリーアドレスか。笑わなければ怒られるような職場にしたかった。

p.208
お客様はそこで働く人間に対しても興味をもたれる。だから自分の仕事を、自分の言葉で説明する。

p.224
人事評価や管理にかかわることを少しずつかえた。頑張った人が評価されるべき。
基本給の比率を下げて、能力給の比率をあげた。
売り上げの数字で評価しない。予算制度をやめた。現場の人間が前年度の売上を気にしすぎると、今年はそれを上回ることばかり考えて無理をする。

p.225
自分の成績しか見ていない。お客様の方をむいていない。予算制度があるためにそれを達成することしか考えなくなった。
製造現場においては、製造数だけ上げてロスが出ても気にしないような風潮を改めるために、ロスを評価の基準にした。

p.229
自分の後釜を育てろ。自分が倒れたときに代わりがないようでは、リーダー失格。

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