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その一言で僕たちは次に行ける

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テレビドラマ「やれたかも委員会」(主演 佐藤二朗 白石麻衣 山田孝之)

私がその夜の一部始終を話すと、彼らは私の話を基に互いの意見を交わし、その可能性を検分するだろう。そして議論を尽くし終えたら、正面に座る孤星塾塾長・能島譲は「やれた」の木札を高く掲げてくれるに違いない。両脇に座る二人のうち、オアシスと名乗るミュージシャンも追随して「やれた」札を上げてくれるはずだ。

もう一人のワールドホリデー協会理事・月綾子は「やれたとは言えない」の札を掲げ、

「男女の立場を逆にしてみるとわかるのですが、女性なら許されることが男性なら許されない──、‘やれたかも’の世界においては特に多発している問題です」

などと「男女逆だったら問題」を持ち出して異論を挟むかもしれない。だが、気にすることはない。彼女も「やれなかった」とは言っていないのだ。

そして最後に能島は言ってくれるだろう。

「やれたかもしれない夜は人生の宝です。生涯大事にしてください。いい‘やれたかも’でした」と。

成就した恋よりも、成就しなかった恋の方がその後長く尾を引くのは、よくあることだ。この場合、「成就」とは何をもって成就とするのかにもよるが、およそ恋愛とは成就しないものなのだ。

だが、成就しなかった恋よりもさらに長く引きずるのは、あと一歩勇気を出せば「成就したかもしれない恋」なのである。結論の出ぬ間に幕が引かれてしまった恋愛は忘れられない。

あの夜の、あと一歩の勇気はあのコにとってウエルカムだったのか、それともノーサンキューだったのか──、男は尽きることなく自問自答を繰り返す。もちろん、答えは出ない。

だから彼らに相談しないではいられない。彼らは私の話を真剣に聞いて、そして大真面目に議論し検分してくれるに違いない。その結果、判定はいつものように割れるかもしれない。

でも、

「いい‘やれたかも’でした──」。

その一言によって私は「ありがとうございました」と言って、前に進むことができるのだ。

画像引用元 クランクイン! WEBザテレビジョン

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