老兵は死なず
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映画「ザ・テキサス・レンジャーズ」(主演 ケビン・コスナー)
人の一生では老化が急に進む時期が2度あるという。それは四〇代半ばと六〇代前半らしい。この夏、スタンフォード大学がそんな研究結果を発表した。
これは、私自身を顧みてもその通りだと思う。四〇の大台に乗った頃、
「俺って、歳を取らないのかな……」
などと周囲に嘯いていたことを思い出す。その頃は未だ筋トレやランニングも二〇代の頃と変わらない量をこなしていて、肉体的な衰えはほとんど感じていなかった。
しかし四〇代も半ばを過ぎると、まず目が遠くなった。次に頭も禿げてきた。そして人の名前が急に出てこなくなったりして、いよいよ歳を取ったと認めざるを得なくなった。
その後は肉体的な衰えを日々感じながらも、とはいえ生活に支障があるほどではなく、つつがない暮らしを送っていた。ところが、六〇を過ぎたこの数年。持病の痛風を発症する頻度がやたらと高くなった。
さらにはヘバーデン結節で手指はいつも痛いし、股関節痛も頻発する。どこか一箇所の不調が完治しないうちに、他のどこかが悪くなる──老化というのは、こういうことなのかと実感しているところだ。
さて、こんなことを長々と書いたのは、要するに寄る年波には勝てないということを言いたいのである。この映画は、引退したテキサス・レンジャーズの二人、フランクとメイニーが若きアンチヒーローのボニー&クライドの追討に乗り出すという話である。
かつては一世を風靡したフランクたちだが、今やすっかり歳を取り、下っ腹が出て小便も近い。走れば息が切れ子供にすら追いつけないし、肝心の射撃の腕も見る影はない。老いぼれだから当たり前だ。
だが、それをそのまま描いているのが好い。アメリカの映画にありがちな、年寄りが若者と格闘して次々と殴り倒すわ、精力絶倫で若い女のコにもモテモテだわ、などというのはリアリティがない。
体力勝負では若者に勝てないのだ。じゃあ、なにで勝つのか──。経験に基づく確かな知恵。それしかあるまい。フランクとメイニーは見事それを実践した。老兵は死なず。彼らを見習いたい。
蛇足だがマツコ・デラックスが言うには、恋愛をしなくなると一気に老けるらしい。これも当たっていると実感するところである。
画像引用元 Netflix