正常性バイアスと同調性圧力
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映画「ドント・ルック・アップ」(監督 アダム・マッケイ)
レオナルド・ディカプリオにジェニファー・ローレンス。メリル・ストリープやジョナ・ヒル、さらにはアリアナ・グランデ等々と、これだけ豪華な出演者を並べておいて、このドタバタ劇は無いんじゃないのォ? 製作費もそれなりにかかっているように見えるし……(ラストはCG感丸出しだけど)。
とは思ったものの、よく考えてみると、これは現代の世相を映す風刺画だとして観れば、なかなかどうしてよく出来ている。
物語は──ある日、大学院生のケイト(ジェニファー・ローレンス)が光学赤外線望遠鏡を通して地球に向かう巨大彗星を見つける。担当教授のミンディ博士(レオナルド・ディカプリオ)が計算すると、6か月後に地球に衝突し、その衝撃で人類を含むすべての生物は絶滅することがわかる。
早速、その事実を米大統領オーリアン(メリル・ストリープ)に知らせに行くが、彼女は自身の再選に躍起で「とりあえず静観しよう」などと言って取り合わない。呆れたミンディとケイトは人気のテレビ番組に出演し、事の深刻さを必死に訴えるも、番組キャスターや視聴者からは変人扱いされる。
その後も、大統領が再選のパフォーマンスに利用したり、ミンディが番組キャスターの色仕掛けに絡めとられたりする間に、巨大彗星は確実に地球に迫る──というストーリーだ。
そうなのだ。今の世の中、隣家のお兄ちゃんから国のトップまでの誰もが、目の前の些末な小事にかまけて、大きな問題を見ようとしない。現代人は皆、一種の正常性バイアスと同調性圧力にかかっている。
だから、今そこにある危機をシリアスに訴えれば、精神が病んでいるとされるか、怪しげな陰謀論者と同一視される。実際にありえそうである。というか、今年正月の能登半島地震のときにも津波の切迫性を絶叫して伝えたHNKアナウンサーがネット上で揶揄されるということが実際にあった。
そんな人類の行き着く先は滅亡しかない。それで初めてリセットされる。
それが運命(さだめ)ならね、従うしかないんだよ(ナウシカの大ばば様風)。
画像引用元 DOLLY9