
人材育成から読み解く「自分らしい起業」のヒント
ジャイロ総合コンサルティング株式会社の渋谷です。
昨日、新潟県商工会連合会主催の創業セミナーにて「人材育成とチーム営業」をテーマにお話をさせていただきました。セミナーの内容を、ここでは私自身の視点で振り返りつつ、皆さんがこれから起業や事業運営をするうえで役立つポイントをまとめてみたいと思います。
「自分の性格」を理解する大切さ
セミナーではまず、「人を育てる前に、自分自身をどう使うかが肝心だ」というお話をしました。人材育成というと、つい「誰かを雇ってどう使うか」だけを考えがちです。しかし、創業直後の社長や個人事業主にとっては、自分の性格・得意分野・苦手分野こそが事業の強みや弱みを大きく左右します。
派手好きか、じっくり型か
たとえば「人見知りしない人」は初対面の営業が得意かもしれない。逆に「コツコツと数字を積み上げるのが好き」な人は、継続的な顧客フォローが得意かもしれません。自分の性格に反したやり方を無理に続けると苦しくなり、続かないことが多いのです。“薄利多売”が性に合う人とそうでない人
お客さんに喜んでもらうことを第一に、利益を低めに設定しても「顔を合わせながら長く付き合う」ことに楽しみを感じる社長もいます。一方、「少数でも高い利益を得た方がやる気が出る」という社長もいるでしょう。どちらが正解・不正解ではなく、“自分の性分”に合った商売モデルを作らないと長続きしません。
落ちているときこそ本性が出る
事業には必ず波があります。売上が好調のときは周囲も前向きで、対外的にも好印象を保ちやすい。その一方、伸び悩んだり不況や災害などの「有事」に見舞われるときこそ、人の本性や会社の体質が露わになります。
苦しいときにどう動くかを見る
「平時に良い人が、有事でも良い人とは限らない」。落ち込んだ状況で、社長やスタッフがどんな行動を取るかで、その会社の底力がわかります。これからパートナーを探す場合でも、「追い込まれたらどう動くのか」を見極めるために、小さな仕事から任せてみるなどの“お試し期間”を設けるのがおすすめです。落ちているときは慌てて動かない
資金が目減りしはじめると焦りが募り、「いつもなら絶対やらない手」を打ってしまうことがあります。結果的にさらに苦しくなり、逆転の余地を自ら潰すことが多い。下手な特効薬を試すよりも、余計な出費を抑えて静観する方が得策ということもあります。その期間を乗り越えれば必ず上向くタイミングは来ますが、焦って自滅しないよう“撤退ライン”を事前に決めておくのがポイントです。
人の力を借りるタイミングとアウトソーシング
「人材育成」と言うと、どうしても正社員を採用し、内部で育てる話になりがちです。しかし、創業期や小規模事業では必ずしもそれが最善とは限りません。
アップル型か、家族的経営型か
大きく分けると「必要なときだけ外部人材を呼ぶ(アウトソーシング型)」のか、「少人数でも腹を割って共に苦労する仲間を抱える(家族的型)」のか、経営者の性格や価値観によって向き不向きが変わります。営業はなるべく経営者自身で
「コミュ力お化け」を雇って営業を全て任せると、その相手に権限や顧客が集中し、最終的には経営者が振り回される危険があります。仕事の“入口”を一方的に他人に預けないよう、可能な範囲で「自分に合ったやり方」を研究し、仕事を取れる仕組みを身につけることが大切です。些細な仕事から試す
人の力を借りたいときは、最初から企業の核となる業務を任せるより、小さな業務や短期のアウトソーシングでお互いの相性を確かめるほうが失敗は少なくて済みます。
非生産的業務の処理はAIに任せる
セミナーでは、「非生産的業務」こそが付加価値につながるという話もしました。たとえば、商談後の議事録作成などは直接売上にならない「面倒な仕事」ですが、相手からすると「こんなに丁寧にまとめてくれるのはありがたい」と大きな評価につながるポイントでもあります。
AIで圧倒的に差をつける
議事録や提案書を素早く作成するために、いまや音声の文字起こしや文章の要約をAIに任せれば数分で仕上がります。競合他社が一週間かける作業を20分で出せれば、相手からの信頼は一気に高まるわけです。
人を雇うなら、会話を引き出す「入口」でのヒアリング力や、お客さんに提案をする「出口」での説明力など、“AIに置き換えにくい部分”にコストをかける。そうすれば非効率な業務はAIに任せて、事業主やスタッフの負担を減らすことができます。
老舗が持っている“財産”を狙え
今後は不況や変化の波により、老舗企業が苦しむ場面がさらに増えるかもしれません。古くからの体制が「ガバナンスの崩れ」や「時代に合わない商売」に直面し、事業整理の流れが出てきます。
“放出”される人材や顧客を取り込む
老舗が培った熟練スタッフや固定客がフリーになるのは、新規参入の起業家にとって大きなチャンスです。「うちはまだ若いから」と遠慮する必要はありません。むしろ、老舗が動けなくなった後に似たポジションを押さえることで、自然と良質な顧客や人材が集まる可能性が高いのです。
まとめ
自分の性分を理解して、無理のないビジネスモデルを作る
景気の波と有事に備え、撤退ラインと逃げ方を決めておく
人を雇うなら最初は小さな仕事で相性を確かめ、本質的に共感できる相手を選ぶ
面倒な作業はAIを活用して差別化を図る
老舗の放出人材・顧客をチャンスに変える
ここに挙げた項目はすべて、「企業は人で伸びるし、人で潰れる」という言葉を裏付けるための具体策です。自分を知り、人を動かし、AIの力も借りつつ、自分の強みに合ったビジネスを作っていく。これが、創業期から事業を軌道に乗せるための大きなポイントだと考えています。