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講師は勘違いしやすいし、軌道修正しにくい職業
ジャイロ総合コンサルティングの渋谷です。
講師をやって約20年。
講師業ほど裸の王様になりやすい職業はないと思っています。
特に講師をやって3〜5年目に陥りやすいですね。
実際に、僕も陥りましたので共有させていただきます。
セミナー集客=講師の質と勘違いする
講演会やセミナーへの集客が成功して多くの人が集まると勘違いがはじまります。集まるのと講座の内容は別物。
人がたくさん集まるから、自分の講義は素晴らしいのだ。と勘違いが起こりやすいですが、実際には集客力と中身が乖離していることは比較的多い。
期待して参加してみたが、いざ受講するとガッカリするパターンです。
なんとなく、自分自身のテーマに多くの人が集まると自分の力かもと思ってしまうのですが実際にはテーマ性や主催者の頑張りであることが多い。
身内型セミナーが増えて勘違いが加速する
セミナーなど特に自主開催などを行っていると、いつのまにか受講者の多くがリピーターばかりになっているケースがあります。または知人のツテで参加するなど、もともと好意を持っている人が受講者として増えていく。
こうなると「良かったよ〜」「今日もいい話聞けたよ」というポジティブな反応が溢れかえり講師の充実感も高まります。
これを身内型セミナーと僕は言っているのですが、身内型セミナーはやっていて気持ち良い。自分の価値観を理解した人しか来ないし、マイナス意見を言う人もいない。何より身内だから、講師自身もリラックスして講座が進められる。想定外の質問もそうそうこない。めちゃめちゃ甘い世界です。
セミナー講師が、身内型にハマっていくと、もう抜け出せなくなる。
誰からも指摘されず、ヨイショの嵐、しかも講師としての緊張感も圧倒的に少なくなる。人は楽な方に流される生き物ですので、いつの間にか「私の生きる世界はこっちかも」と安易な方向性へ流される可能性がでてきます。
これ僕もありましたが、大体3〜5年目で一度は流されます。
しかし身内型セミナーは、どこかで頭打ちするのと、身内型セミナーって身内の外からはすごく異質な世界に映ります。
内輪で盛り上がり、内輪で褒め合い、内輪で頑張る。
僕はビジネスを教える講師なので、身内だけで仕事を続けると空気が淀み、腐っていく。と受講者に伝えているのですが、自ら陥るケースが多かったりします。
マーク・グラノヴェッターが弱いつながりと強いつながりについて論じていますが、講師業でも強いつながりに依存すると新しい情報が入らなくなるのと、周囲(身内の外)から浮きやすくなります。結果、新規顧客の開拓や自分と異なる価値観の人間を拒否するようになりやすい。様々なチャンスを潰すことになりかねません。
マーク・グラノヴェッターの「弱いつながりの強さ」理論(The Strength of Weak Ties)は、1973年に発表された社会ネットワーク理論であり、個人や集団の情報流通や社会的機会における「弱いつながり」の重要性を示したものです。この理論は、密接で親密な「強いつながり」よりも、疎遠で表面的な「弱いつながり」が、新しい情報や機会をもたらす可能性が高いことを主張しています。
強いつながり(家族や親しい友人)は、同じような情報や価値観を共有しているため、新しい情報の流通には限界があります。一方で、弱いつながり(知人や友人の友人など)は、異なるネットワーク間の架け橋となり、新しい情報や視点を得る上で非常に有効です。たとえば、転職やビジネスの機会は、親しい関係ではなく知人を介して得られることが多いという研究結果もあります。
この理論は、ソーシャルメディア時代のネットワーク形成や情報拡散、イノベーション研究にも応用され、社会的なつながりの多様性を重視する重要性を再確認させています。
知識が増えると人を見なくなる。頭でっかちになって勘違いする
講師業は日々新たな知識を調べてブラッシュアップをしていかないと生き残れない職業でもあります。ですので、様々な知識をインプットしていきます。
人は自分が学んだ知識を誰かに伝えたい。という欲求があります。知識と知恵の違いについてはここでは触れませんが、頭でっかちになりやすいのが講師業。知識が増えると何が起こるか?顧客(受講者)が求めているものを提供するのではなく、あなたにはこれが必要です!という「べき論」中心の講座になっていく。
受講者視点というよりも、自分の知識に酔いしれ、自分の知識が正解だと思い込み、それを受講者に押し付けるスタイルになっていきます。
これも僕は5年目に訪れました。なんで受講者はテクニックばかりに走るのだ!!まずは目的をしっかり定めるべきである!!だから結果がでないのだ。という最悪なパターンの講師でした。結果、受講者は僕の話は殆ど効かなくなるので、結果は当然出ませんし、リピートの依頼も減少しました。
どんなに「こうすべき」と思ったとしても、腑に落ちるようにしなければそれこそ本末転倒。行動してくれなければべき論にはなんの意味もありませんし。
年数が増えるほど指摘されないので勘違いする
講師業は長くやるほど指摘されなくなります。
大体、「良かったです!」と言われるものの、翌年依頼がない。という結果で思い知らされます。
長く講師をやっていくとそれなりの雰囲気が出てきますし、実績を積みますので、主催者としても非常に指摘しにくくなります。
結果、雰囲気を悪くするよりも「依頼しない」という選択肢を取るようになります。
だからこそ年を取れば取るほど、謙虚に人の話を聞き、指摘を受け止めるようにしていくことが求められます。俺は偉いんだ、という発想ではそれこそ裸の王様になってしまいます。
とはいえ、どんなに注意してもそういう時期は訪れるもので、そこで気がつくか、ドツボにハマっていくかの分かれ道ということでしょう。