
営業の成約率を高めるためのAI活用研修 ― 開催レポート
ジャイロ総合コンサルティングの渋谷です。
「提案書、今日中に送れます」― この一言で、お客様の表情が変わるのを何度も見てきました。先日、東京金物卸商協同組合での研修で、AIを活用した営業改革についてお話しさせていただきました。元々、訪問販売の最前線で働いていた私だからこそ見えてきた、実践的なAI活用法をご紹介します。
営業現場が抱える課題
現代のビジネス環境において、営業担当者は「非生産性業務」の増加という大きな課題に直面しています。不景気で先行きが不透明になると、お客様からの要望は細かくなり、打ち合わせの回数は増える一方です。しかし、これらの追加業務に対する対価は据え置かれることが多く、営業担当者の負担だけが増していきます。
「御社のことをもっと調べておけばよかった」「提案書の作成が間に合わなかった」よく聞く営業マンの悩みですが、実はこれ、全部AIで解決できますし、当社では営業提案のスピードアップを実現させることができています。
営業提案書作成の新しいワークフローについて
営業フローには多くの無駄が存在しています。しかし日々の営業が忙しすぎて、どこを改善すべきか?どこをAIに置き換えるか?まで棚卸しする時間が取れないのが現状ではないでしょうか。ということで今回の研修で営業活動のどの部分をAIにすべきか?をレクチャーさせていただきました。
Step1:商談内容の記録(30分)
LINEが提供しているAiNoteを使って商談を録音&文字起こしします。私は画面をスマホで開きながら、重要なキーワードをAiNoteのメモ欄に直接メモするようにします。「この発言、後で使えそうだな」と思った箇所には、その場でブックマークを付けることで文字起こしツールそのものを議事録ツールに変えています。商談終了後、AIが自動で文字起こしを完了させますし、音声記録に紐づいてメモ情報も記録できますのでとても便利です。ちなみに文字起こしした内容は、クラウド上に保存されるので上司が事務所で商談内容をほぼリアルタイムで把握することも可能です。
Step2:提案内容の文章化(20分)
文字起こしされた内容をChatGPTなどのAIに投げ込みます。
「お客様の課題をまとめて議事録として出力、解決策を提案する文章とお礼メール文を作成してください」と指示します。ChatGPTは文脈を理解し、論理的な提案文章を作成してくれます。その際に、重要な文章にはマーカーを付けて、と指示するとマーカーを付けてくれます。加えて、商談のお礼メール文を併せて出力させることで、「本日はありがとうございました。」という通り一遍等なメールではなく、商談内容を踏まえたカスタマイズされたメール文の作成が可能です。
Step3:プレゼン資料の作成(15分)
作成された文章をGammaに投入します。「この内容をプレゼンテーション資料に変換してください」と指示すれば、見やすい資料に仕上げてくれます。画像の配置や、箇条書きの整理まで自動でやってくれるんです。
この3ステップで、なんと60分程度で提案書の完成です。研修では必ず「えっ、本当にそんなに早くできるの?」という反応(笑)。
情報管理とフォローアップ
NotebookLMを使ったお客様ごとのデータベースを作成することもお勧めです。商談内容、提案内容、お客様の反応など、全てを記録。AIがこれらを分析し、次の提案のヒントを提供してくれます。
あるお客様への2回目の提案時、「前回のお話にあった○○について、このような解決策はいかがでしょうか」と具体的な提案ができたときは、「ちゃんと覚えていてくれたんですね」と、とても喜んでいただけます。また担当が変わったとしてもこれまでの営業スタイルをAIに確認してから商談に行くことで引き継ぎもしっかりできます。
AIツールの使い分けと注意点
正直に告白すると、最初は私もAIツールの使い方で躓きました。特に、AIが作成した提案書が無機質すぎて、お客様の心に響かないことがありました。そこで気づいたのは、AIはベースを作るツールであって、そこに営業マンとしての経験や直感を加えることで、初めて価値のある提案になるということです。
セキュリティの観点では、ChatGPTを使用する際は「一時チャット」モードを活用するなど、情報管理には十分な注意を払う必要があります。
実践のポイント
AIを活用する際の重要なポイントは、完璧を求めすぎないことです。私は必ず「たたき台として送らせていただきます」と伝えます。これには2つの利点があります。1つは、スピード感でお客様に誠意を示せること。もう1つは、お客様との対話のきっかけになることです。
「AIを使うと営業が機械的になるのでは?」という懸念をよく聞きます。でも、私の経験では真逆です。面倒な作業から解放されることで、お客様との会話に集中できる。表情や声のトーンまでしっかり観察できる。むしろ、より人間的な営業ができるようになります。
明日からでも始められます。まずはAiNoteで商談を録音することから。そして、ChatGPTで文章を作成し、Gammaで資料化する。この流れを掴むだけで、営業活動は大きく変わるはずです。
そうそう、最後に一つ。どんなに優れたAIでも、お客様への「ありがとうございます」の一言は、人間が直接伝えましょう。心のこもった言葉は、どんなAIにも真似できない私たちの強みなのですから。
それでは、みなさんの営業活動がAIとともにより充実したものになることを願っています。明日からの実践で、何か困ったことがありましたら、いつでもご相談ください。