人生で初めて「お酒の飲み方」を知った日
30歳を過ぎてから、ふと今までの人生を振り返ったときに、僕には「お酒」にまつわる思い出がとても多かったような気がする。
そんな僕のお酒にまつわる思い出をここにつらつら書いていこうと思う。
人生で初めてお酒を飲んだのは、大学に入る前、高校か予備校に通っていた頃、「大学で失敗したら駄目だから」と親父が家で缶チューハイを勧めてきたのが最初だった。(お酒はハタチになってからなのでマネしちゃ駄目)
たしかアルコール度数は5%もいかないような甘めのものだったため、初めてのお酒に口をつけた僕は「こんなのジュースやん!」と余裕をぶっこいてぐびぐび飲んでいたが、気づいたら家のソファで気絶するように寝ていた。親父は笑っていたが、そうして僕のお酒との付き合いが始まったわけである。
その後、もちろん未成年なのでお酒を飲むことはできないので、家で黙々と練習していたわけである。(お酒はハタチになってからなのでマネしちゃ駄目(2回目))その甲斐もあってか、大学に入って2部活にも入ると飲む機会もたくさんあったが、お酒の失敗もなく色んなお酒を飲んできた。
学生の頃は、「飲み会の最後まで生き残るのがカッコいい」という謎のプライドと共に、誰よりもお酒を飲み、後輩がしんどそうであれば代わりに飲み、どうしても後輩が飲む必要があれば「これ日本酒だから」と水を渡してとにかくなが~くお酒を飲みたがっていたのだ。
そんな飲み方をしていた頃は、お酒の味がどうとかをあまり気にすることもなかったのだが、あることがきっかけで「お酒の飲み方」を知ることとなる。
20歳になってから、大学入学を機に地元を出て一人暮らしをしていた僕に親父がふと「飲みに行こう」と誘ってきたのだ。
親父と二人で、というのは実は高校生の頃からちょこちょこあった。小さい頃から親父は仕事の関係で帰ってくる時間が遅く、ほとんど話すことがなかったのだが、高校生になり、僕があるとき彼女にフラれた時なぜか親父に電話をかけて、「よし、飯食いに行こう」ととても高い寿司屋に連れていかれたのが最初だ。
そこから家族の中でも男同士というのもあり、母親には言いにくいようなことを親父に話すところからより仲は深まっていったのだと思う。そんな親父からの飲みの誘いはもちろん断ることもなく、二つ返事で「いいよ」と言ったのだ。
地元に帰っていた時にその日は訪れた。親父が良く行くおばんざい屋さんに行って腹ごしらえをして、どこに次は行くのかと思い連れていかれたのが、「Bar」だったのだ。
暗い空間にキラキラした間接照明と棚一面に並んだボトルとグラスの数々。20歳そこらの僕にとっては未体験の空間で、その日は飲んだこともないカクテルやウイスキーを飲んだ。その日は緊張しっぱなしだったが、親父は「20歳になったら子どもと飲むのが夢だった」ととても嬉しそうだったのを覚えている。
飲んだこともないお酒を飲みながら、そのとき僕はBarという空間にすでに魅了されていた。こんな風にカッコよくお酒を飲んでみたい。バーテンダーの人とあんな風にしゃべってみたい。もっと色んなお酒を知りたい。
その日が、僕にとって、真の「お酒の飲み方」を知る日となったのだ。