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脳に情報をダウンロードすれば「身につく」ことになるのか?

 過去に鑑賞して印象に残っている映画のシーンがあります。「マトリックス」という作品にて、脳に電線を差し込んで格闘技の情報をダウンロードし、仮想空間で格闘技の練習試合をするというシーンです。どんな運動や学問でも、脳に直接ダウンロードできれば簡単に身につくのか、と当時の私はあこがれていました。
 あれから年月が経ち、最近初めての子どもを育児している中で、「あのマトリックスのシーンのように、脳に直接情報をダウンロードすれば子どもに『身につく』ことになるのかな」、という疑問が浮かびました。そこで今回は、「脳に情報をダウンロードすれば『身につく』ことになるのか?」というテーマでnoteを書いてみました。

○目次
・そもそも「身につく」とはどのような状態か
・算数を知らない子どもに「相対性理論」をダウンロードして身につくのか?
・ダウンロードよりも仮想空間での体験で「身につく」かも

○そもそも「身につく」とはどのような状態か
 まず、「身につく」というのがどのような状態なのか定義してみます。私は三段階に分かれていると考えていて、第一段階は「頭には入っている状態」です。脳の記憶領域に情報が入っている状態ですが、脳から取り出すことはまだできません。第二段階が「単純に情報を取り出せる状態」です。イメージとしては、穴埋め問題で空欄に当てはまる単語を書けるように、頭に入れている情報そのものについて問われたら答えられるようなレベルで、脳から情報を取り出せます。最後の第三段階が「複数の情報を組み合わせて取り出せる状態」です。論述問題で、複数の情報を組み合わせて自分の考えを記載することができるレベルです。
 第二段階までは、本当にその情報の本質や意味を理解していなくとも、ただの暗記として記憶しているだけでも対応できます。しかし、第三段階については意味が理解できていないと、他の情報と組み合わせることができません。私たちが社会でより良く生きていくためには、第三段階の「身につく」状態になっていることが必要です。

○算数を知らない子どもに「相対性理論」をダウンロードして身につくのか?
 さて、脳に情報をダウンロードする技術が確立したとして、その方法でどのレベルの「身につく」状態まで行けるのでしょうか。
 思考実験として、算数をまだ知らない年齢の子どもに相対性理論の情報をダウンロードしたと考えてみました。ダウンロードしていますから第一段階の「頭には入っている状態」はクリアできていると思います。では第二段階の「単純に情報を取り出せる状態」はどうでしょうか。子どもに対して、「相対性理論って何?」と聞かれたら、ダウンロードされた通りの文章を暗唱することを何度か練習させておけば可能そうです。しかし、「○○の条件で相対性理論を使ったエネルギーの計算をして」と言われたら、たとえ計算式自体を暗記していても、そもそも算数を知らないですから計算できないでしょう(この場合、計算式のことは単なる「絵」として覚えているような状態だと想像しました)。
 第三段階の「複数の情報を組み合わせて取り出せる状態」はもっと厳しい。「宇宙における時間と空間はどのようになっているのかな?」と聞かれても、その問いに対してダウンロードした相対性理論を使って回答するという発想が出てこないと思います。なぜなら相対性理論の意味(宇宙における時間と空間に関する理論、ということ)が分かっていないからです。

○ダウンロードよりも仮想空間での体験で「身につく」かも
 ここまで、脳へのダウンロードでは「複数の情報を組み合わせて取り出せる状態」まで身につけることは難しそうだと考えてきましたが、映画マトリックスで出てくるもう一つの技術、「仮想空間」を使うことを思いつきました。
 例えば、歴史を学ぶ際に学びたい時代の世界が広がる仮想空間に赴き、歴史的な出来事を間近で見て学ぶのはどうでしょうか。単に教科書を読む・映像を見る現代の学習よりも、仮想空間でその時代の人々と会話をしてみたり、複数の人物の視点で同じ出来事を見てみるなど、様々な体験で学べた方が記憶をしやすそうです。さらに、自分自身もその時代の人物になりきって、自分ならどのような判断を下すかをシミュレートして、「複数の情報を組み合わせて取り出せる状態」レベルの身につきを体得することができるかもしれません。

 皆さんはどう思いますか。

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