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【試合の終わらせ方 完全版】「2024 J1リーグ 第37節」柏レイソルvs ヴィッセル神戸 分析レポート

「2024 J1リーグ 第37節」

柏レイソルvs ヴィッセル神戸 分析レポート

1-1(前半1-0/後半0-1)


Ⅰ.「はじめに」

 突然ですが今回は「全文無料公開」と致します。
 今節の試合展開が大筋、事前分析を掲載した以下の記事2本の内容通りとなってしまったため、いつも通りの形での分析レポートの作成が困難であり、実験的な形での記事となってしまったことが主な理由となります。
 
 ちなみに完全に「レイソル目線」の分析となりますので、ご了承下さい。

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Ⅱ.「残留争い&優勝争い 現状確認」


 勝てば自力で残留を確定できるレイソル。
 引き分け以上で今節での優勝の可能性が出て来るヴィッセル。
 残留争いと優勝争い。双方の行方を大きく左右することとなる重要な一戦。

 結果としては「まさか」と言うべきか「またか」と言うべきか、レイソルが5試合連続、後半アディショナルタイムに失点を喫してしまい「1対1」のドローゲーム。

 この結果を受け、コンサドーレの降格が確定
 他会場に目を向けると、ジュビロが劇的な逆転勝利を掴んだ一方で、アルビレックスはホームでガンバに手痛い敗戦。
 最終節、16位レイソル(勝ち点41/得失差-11)・17位アルビレックス(勝ち点41/得失差-15)は、引き分け以上で残留確定
 18位ジュビロ(勝ち点38/得失差-18)は、勝利とレイソル・アルビレックス何れかの敗戦が絶対条件。その上での得失点差争いとなるため、出来る限り大差での勝利が望ましいという厳しい状況。

 優勝争いに関しては、サンフレッチェ・ゼルビアが揃って勝利したため、ヴィッセルは今節での優勝とはならず
 1位ヴィッセル(勝ち点69/得失差22)・2位サンフレッチェ(勝ち点68/得失差31)・3位ゼルビア(勝ち点66/得失差22)の3チームに優勝の可能性が残されたまま、最終節を迎えることに。
 サンフレッチェは4位ガンバと、ゼルビアは5位アントラーズとのアウェーゲーム。
 ガンバ・アントラーズは優勝の可能性はないものの、4位以上を確定できれば、来シーズンのACLEもしくはACL2の出場権獲得の可能性があるだけに、両試合とも激戦となること必至。
 ヴィッセルはトップ3唯一のホームゲーム。自力で優勝を決められる点も含め、優勝に向けて有利な立場にあると言える一方で、サンフレッチェは得失点差で大きなアドバンテージを持っており、最後まで何が起こるかわからない状況。

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Ⅲ.「レイソル 前線からのプレス」

 話は今節の「柏レイソルvsヴィッセル神戸」戦に戻ります。

 この試合に関して、僕は以下の様な展開を予想していました。
「スタメンの選手の前線からのプレスは整理されており、ロングボールに対応できる高さのあるDFがいて、セカンドボールの回収の意識も高いため、試合終盤までに複数失点することは、可能性としてはかなり低い」
※【事前分析】の記事から引用

 実際にロングボールに関しては、基本的にヴィッセルの大迫選手に対して立田選手、武藤選手に対してジエゴ選手がマークにつき、(退場の件はさておき)ヴィッセルのダブルエースとも言える2人に対し、自由を与えることなく、ボールを弾き返せていました。
 セカンドボールの回収に関しても、3ラインをコンパクトに保ち、拾いやすい状況を作り出すことで、(体力の関係もあり、全体が間延びし始めるまでは)球際の強度の高いヴィッセルに負けることなく、よく拾えていたと思います。

 このロングボール・セカンドボールへの対応は、上記した様に素晴らしかったと思いますが、これは前線からのプレスあっての流れであったと考えています。
 そのプレスのポイントは以下の通りです。

① 基本はヴィッセルの4バック対して4枚(2トップ+両SH)で同数プレス
② ヴィッセルが同数を避けるため、GKもしくは中盤の扇原選手が最終ライン中央に入り、ビルドアップを始めても、その中央に対しては牽制のみ。基本的にプレスにいかない
③ ヴィッセルの左SB初瀬選手から前線への斜めのロングボールは蹴らせない

 ②に関しては、2トップがCBを見ながら、GKもしくは扇原選手を牽制する形を取っており、ここから大迫選手にロングボールが入る分には、基本的に問題ないと捉えている様に見受けられました。
 理由は恐らく、特にGKからであれば、蹴り始めの地点が低く、大迫選手・自陣ゴールまでの距離があるため、基本的に脅威に欠ける点に加え、中央から中央の角度のないロングボールであれば、幾ら身体の強い大迫選手とはいえ、191センチと上背がある立田選手であれば競り勝てると踏んでいたのだと思います。
 
 ②の局面において、ヴィッセルのロングボール及びセカンドボールに対応することで、次にヴィッセルはGKもしくは扇原選手からCB・SBへとパスを入れ始めます。
 そうなれば2トップがCB・SHがSBへとプレスに行き、確実にフィード・パスのコースを限定し始めます。
 そうすることでまたもやロングボールで競り勝ちやすくなり、プレスが嵌まっているため、ヴィッセルSBのところでボールを回収しやすくなります。現に特に前半、酒井高選手からサヴィオ選手がボールを奪えていたのは、彼の献身性はもちろん、この仕組みあってのことだと思います。
 
 また、反対サイドの初瀬選手にボールが入った際は、彼から武藤選手やサイドに流れた大迫選手への、角度のついた高精度のロングボールを警戒し、コースの限定ではなく、蹴らせない形でのプレスを掛けていた様に見受けられました。

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Ⅳ.「レイソル 試合の終わらせ方」

 5試合連続、後半アディショナルタイムに失点。
 これは不運でも何でもなく、やはり「試合の終わらせ方」に問題があると僕は考えています。
 
 『【徹底検証】「柏レイソル 試合終盤の失点要因と対策」』の記事にて、僕は「試合の終わらせ方」に関して、主に以下の3点を指摘・提案させて頂いていました。

 今節のレイソルからは、上記の様なことをやろうとしていた姿勢は見受けられました。
 しかし、選手が全力でプレーしていたことは十分に伝わって来ておりますが「試合の終わらせ方」に関して、僭越ながら、その細部までの徹底・落とし込みが甘かったと言わざるを得ないと思います。 
 そこでこの章では、今節の改善点も織り交ぜながら、事前分析では少し抽象的であった部分も明確にした上で「試合の終わらせ方」を提案してきたいと思います。  

自陣で選択してはいけないプレー

 まず、試合を終わらせに掛かった際、自陣で絶対に選択してはいけないプレーは「ドリブル」「自陣でのパス交換」となります。 
 もちろん、チームとしてどんな状況でもパスを繋ぐスタイルを徹底しているのであれば、その美学を否定するつもりはありません。
 ただ、レイソルの現状を考えた場合、この2点はどの選手であろうと徹底的に禁止すべきです。そうでなければ、ミスが起きた際、仮に失点に直結することはなくとも「無難にクリアしていれば」「一度プレーを切っていれば」その後の状況は変わっていたということになり兼ねません。
  

自陣で選択すべきプレー

 反対に自陣で選択すべきプレーとしては、相手のプレッシャーの低い順に以下の通りとなります。 
① サイドライン方向に巻いたボールを敵陣角に送り込む
② 敵陣深くまでクリア(出来れば軌道は高く)
③ 近くのサイドラインにクリア 

図Ⅰ.「試合の終わらせ方」自陣で選択すべきプレー①

 ①に関しては図Ⅰを見て頂きたいのですが、ストレート系のボールを蹴った場合、少しコースが外れるだけで相手のゴールキックとなってしまう可能性があります。これではプレッシャーのない状況を最大限に活かせたとは言い難く、もったいないプレーとなってしまいます。
 
 同じストレート系のボールでも、サイドライン方向に飛んでいれば、仮に味方に届かなくとも、敵陣深くからの相手のスローインとなり、そのスローインを跳ね返せればショートカウンター、もしくは再度、敵陣角を狙うことが可能となります。
 また、スローインを跳ね返せなくても、ボールをサイドラインで切り続けることで時間を稼ぐことが出来ます。但し、切り続けてしまうと、最終的には自陣まで入り込まれてしまうため、その点は注意が必要となります。
 
 そうなるとやはり最適解は「巻いたボール」ということになるかと思います。
 巻いている分、ゴールキックになるリスクは低く、味方がボールに追いつく可能性は高くなります。また、仮にボールには追いついたものの、相手と五分に近い場合、サイドラインにボールを出してしまえば、上記と同じスローインの局面に持ち込むことも出来ます。
 
 ちなみにどのボールを選択するにせよ、特に交代で入ったフレッシュな前線の選手には、味方の動きを予測し、オフサイドに気をつけつつ、的確に敵陣角へと流れてもらう必要があることも確認しておきたいと思います。
 
 ②に関しては、やはり出来る限り「ボールを自陣のゴールから遠ざけるプレー」を選択し続けたいため、敵陣角に送る余裕はない場合、このプレーを選択して欲しいと思います。「出来る限り軌道は高く」というのは、高く蹴り上げた分、少しでも時間を稼げる点に加え、前線の選手が競りに行く時間を作るという意味も込められています。
 

敵陣で選択してはいけないプレー

 敵陣に入っている分、当然のことながら、自分たちのゴールまでの距離は開いており、ボールを奪われても自陣と比較して、失点のリスクは低いと考えられます。また、状況によっては得点を狙える可能性も十分にあるかと思います。
 
 しかし、だからと言って「ゴール正面でのパス交換」「ゴール正面でのドリブル」は自陣と変わらず、選択してはいけません
 ゴール正面・中央でボールを失えば、最短距離でカウンターを喰らってしまい、失点に繋がる可能性が高まってしまいます
 そのため、足元の技術に自信がある選手も含め、この点は選択の徹底が必要となります。

敵陣で選択すべきプレー

 そのため、まずは敵陣でも角にボールを運ぶことを選択してもらいたいと思います。
 そして、そこで身体を張ってのボールキープが基本となりますが、仮に敵陣角でボールを失ったとしても、自陣のゴールへの距離は遠く、角度も正面と比較して限られているため、即失点に繋がる可能性は低いと考えれるので、キープの姿勢を何度か見せた後、それをフェイクに敵陣角から相手ゴールに迫ることは、ひとつの選択肢として持っておくべきだと思います。
 
 但し、敵陣角にボールを運び、一度もキープの姿勢を見せないまま攻撃に転じ、ボールを失うことは、時間を稼げておらず、攻撃の形としても振りが利いていない分、もったいないプレーであると言えるため、避けて欲しいと思います。

試合の終わらせ方 まとめ

 自陣では……
・「パス交換」「ドリブル」禁止の徹底
・サイドライン方向に巻いたボールを敵陣角に送り込む
・余裕がない時は「前線へクリア」(出来れば高い軌道)
・更に余裕がない時は「近くのサイドラインへクリア」
・ボールを受ける選手の意識も重要
 
 敵陣では……
・「ゴール正面でのパス交換」「ゴール正面でのドリブル」禁止の徹底
・最優先は敵陣角を取ってのボールキープ
・ボールキープを見せた後の攻撃への転化はOK
・ボールキープを見せずに攻撃へ転化することはNG

 
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 あとは「試合の終わらせ方」の前に、選手たちも口を揃えて言っている様ではありますが「得点を複数あげること」が重要となって来るかと思います。
 ここまで色々と書かせて頂きましたが、極限の精神状態で体力も限りなく消耗している終盤に、適切な判断をし続けることは、難しい作業であることは多少なりとも理解しているつもりです。
 そのため、やはり、試合終盤を「2-0」「3-0」というスコアで迎えることが、特に現在のレイソルにとっては必要であり、チャンスは多く作れていることを考えると、まずはそこを目指すべきなのかなとも思います。
 
 「2024 J1リーグ第37節 柏レイソルvs ヴィッセル神戸」の分析レポートは以上となります。
 有難うございました。

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お読み頂き、有難うございます。 チップの使い道としては「記事作成の環境整備」への充当を主に考えております。 今後とも宜しくお願い致します。