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寿都鉄道クロニクル 第二部 バーチャルの力で未開通区間を開通させる
このブログ記事は、日本原子力文化財団の依頼により吉田 匡和さんに取材・執筆をいただいた記事になります。
寿都鉄道クロニクル 第一部 いにしえの世界をタイムリープの記事はこちら
第一部では寿都鉄道の面影を辿りました。第二部では開通できなかった「幻の区間」を旅します。寿都鉄道は1968(昭和43)年8月14日に廃止とされていますが、閉鎖登記簿を見てみると正式な会社解散決議は1987年7月20日の株主総会によってなされています。
鉄道廃止後も会社を清算せずにギリギリまで踏ん張っていたのは、岩内線と連絡して函館本線の勾配緩和別線にする計画が存在していたから。国に買い取ってもらえば一発逆転。その大勝負に賭けていました。しかし1985年に岩内線は廃止されます。
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同年6月6日のNHKニュースの特集「まぼろしの西海岸鉄道」で、寿都鉄道社長が「岩内線延長による用地買収を期待して会社組織を残してきたが、6月30日をもって岩内線が廃止されることから会社をこれ以上存続させる意味がなくなった」と述べています。
発車のベルが鳴り響く
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ここから先は、岩内まで続く計画だった「西海岸鉄道」を空想してみましょう。けん引するのは「SL冬の湿原号」でお馴染みの蒸気機関車C11です。発車のベルが鳴っていますよ。乗り遅れないでくださいね。
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寿都駅を出発した列車は北上し、岩内を目指します。「歌棄(うたすつ)」を過ぎると、たくさんの風車を背にします。この集落は1955(昭和30)年に合併するまで「歌棄村」という独立した自治体でした。
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透明度が高いので水中カメラで海中を撮影しました。浅瀬に小さな魚やヤドカリ、岩場にはカニが見え隠れしています。来年の夏は磯山さやかさんと磯遊びしたいな。
難所を越えて北へ進む
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日本海を車窓に映し、列車は蘭越町に入りました。次の停車駅は「貝の舘」です。貝類専門博物館という通好みな渋さ。沿線で数少ない観光スポットですが、オトナの事情で詳しい紹介は別の機会にします。
行く手を阻む難所が続く
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景色は荒涼とした岩肌に変わります。岩内まで延長するためにはいくつものトンネルを掘らなくてはなりません。1972(昭和47)年10月24日に着工(工事実施計画)が認可され、完成までに10年の工期と約100億円の工事費が見積もられましたが、赤字になることは明らか。いかりや長介さんでなくても「ダメだコリャ」と思う無謀な計画でした。
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雷電温泉郷は、当地に国道が開通した1963(昭和38)年に誕生しました。最盛期には9軒の温泉宿が営業するなど賑わっていました。しかし風光明媚な景勝地も冬は荒れ狂う難所になります。宿の廃業が相次ぎ、2019年に最後の一件が廃業したあとはバス停にその名を残すだけとなりました。乗降する観光客はもちろん民家もありません。律儀に停止するバスに切なさを感じます。
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列車は前方に泊原発を眺めながら終点・岩内を目指します。日本海を背にして国鉄岩内線と接続。寿都鉄道の旅は完結しました。
過去と現代が交差する時間
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岩内駅から岩内線(14.9Km)に乗り換えて函館本線の小沢駅まで旅を続けます。
旧幌似駅は鉄道記念公園として鉄道の歴史を後世に伝えています。ホームにはスハフ42 507と、それに連結したワフ29500形ワフ29587有蓋緩急車(ブレーキ操作装置が取り付けられた車両)の2両が静態保存・展示されています。
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スハフ42の「ス」は客車重量を表し、軽い方から「コホナオスマカ」まで7段階あります。「ハ」は普通客車、車掌室があると「フ」が付きます。42は形式番号で末尾の257は製造番号を表しています。
隠れるつもりはない隠れ宿「みつがしわ」
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小沢駅は1904(明治37)年に北海道鉄道の駅として開業し、1907(明治40)年に国鉄に移管されました。その後は岩内線の分岐駅や小沢〜銀山間の稲穂トンネル建設など「鉄道の街」として発展しました。「男はつらいよ 望郷篇(昭和45年公開)」のロケ地であり、映像から当時の様子が伺えます。
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本日は小沢駅前旅館「みつがしわ」に宿泊します。インターネットの情報が乏しく、謎に満ちているクロニクルな旅にふさわしい宿です。お宿は若さ溢れる穴田さん夫婦が経営しています。小沢駅がある共和町は奥様の出身地だそう。長年続いた駅前旅館の廃業を知り、2018年に新しくオープンしました。
1970年開業の名湯「ワイス温泉」
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夕食までの時間を近くのワイス温泉で過ごします。1970年開業、時が止まったようなたたずまいが味です。泉質はナトリウム-塩化物・硫酸塩泉(アルカリ性低張性高温泉)。露天風呂はなく浴室は昔の銭湯のよう。気持ちいいですよ〜
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ロビーで、とんでもないものを発見しました。ボウリングの玉のような大きなメロンが千円!バスケットボールのようなスイカが800円!思わずメロンを手にしていました!
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カレーライス用のスプーンで豪快にいただきます。果汁が口の中に弾け飛ぶ!このメロンを食べないなんてドウカシテイル!食リポも忘れる美味しさです。
本日のメインイベント、焼肉一本勝負を開始します!
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今回の旅の宿として「みつがしわ」を選んだのは、本格的な焼き肉を提供しているから。穴田さんは焼き肉店の勤務経験があり「どうせ店を出すのなら宿泊施設もやっちゃえ!」と考えたそうです。
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焼き肉にビールは必需品。最高な状態で運ばれて来ました。飲酒運転は絶対にダメですが、宿泊なら好きなだけ飲めます。
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続いてカルビ、サガリ、牛レバー、塩ホルモン、味噌ホルモンの「焼き肉オールスターズ」が登場。網のステージでセッションを開始しました。ほとんどのメニューがタレ以外に塩もOK。厳選した肉をルスツから取り寄せているそうで、品質の高さが期待できます。後ろの席から「肉が美味しすぎて酒飲むの忘れてたよ!」という声が聞こえてきました。そのフレーズいただき!
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口に入れただけで、噛む前から美味しさが広がります。味付けはシンプルな塩。誤魔化しがない肉本来の旨味に感激です。
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とうとう最後の二切れになりました。追加を頼もうかと思いましたが、ランチも焼き肉定食だったことを思い出してラストにします。「どんな肉を食べても君のことは絶対に忘れないよ!」そんな思いを込めて最後の一口を飲み込み、後ろ髪を引かれながら席を立つのでした。
宿 みつがしわ
住所:岩内郡共和町小沢1725
電話:0135-67-7478
HP:https://mitsugashiwa.com/
廃線の旅は考古学のような楽しさがある
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火照りを冷ますために食後の散歩がてら小沢駅に向かいます。闇を切り裂いて最新型H100形気動車、通称DECMOが入線しました。乗り降りする人もなく列車は動き出し闇に消えていきます。
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寿都鉄道や岩内線のように、小沢駅もまた北海道新幹線開業とともに消えゆくさだめ。目の前の光景は現実ではなく、クロニクルの世界の延長線なのかも知れません。
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タイムリープしてみると、なぜ寿都鉄道が誕生し、どんな期待が寄せられていたのかわかりました。廃線をたどる旅には考古学に似た楽しさがあります。みなさんも古い文献を読み解くような「クロニクルな旅」に出かけてみませんか?
【取材協力】
寿都町教育委員会(写真提供及び展示品紹介)
北海道博物館(特別展示撮影)
取材・記事作成:吉田 匡和