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JAEAの先輩職員をご紹介!(研究職)

関川 卓也
原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター       放射線挙動解析研究グループ

2023年度入所。東海村にある原子力科学研究所原子力基礎工学研究センターで研究業務、PHITS普及業務に従事。釣りが好きです。

JAEAに入所したきっかけ

私は学生時代から高温超伝導の理論研究を行ってきました。特に生体の遺伝情報を担うDNAと、長年超伝導の原理が未解明なタングステン酸化物で観測された超伝導を対象に研究を行ってきました。物質の計算をすることが本当に大好きで、博士取得後も研究を続けたかったので物質科学の専門家を募集していた放射線挙動解析研究グループの研究職に応募しました。放射線物理に分野を変えることで、独自の研究を展開できるのではないかと考えたことも応募した理由の一つです。

放射線物理と物性物理の融合とその最終目標、
"放射線駆動物性学"

現在の研究業務では、物質中を放射線がどのように行き来するかを計算することができる"放射線輸送コード"PHITSと、物質の安定構造や電子状態を計算できる"第一原理電子状態計算"ソフトウェアOpenMXを組み合わせて、生物の遺伝情報を担うDNAに放射線がどのような影響を与えるかを調べる理論研究を行っています。この研究で、放射線がDNAの電子を剥ぎ取ることでDNAの化学反応部位が変化することを突き止めました。これは放射線が物質に入射してから性質が変化するまでの流れを理論的に追跡することができたことを意味しています。私はこの研究を行っていく中で、物質に放射線照射を行うことで有用な性質を持つ材料を作ることができるのではないか、これはJAEA発の新研究分野になるのではないかと考えました。この分野を"放射線駆動物性学"と名付け、私がこの分野を立ち上げ、牽引していこうと考えています。この研究はPHITSの適用可能性をさらに物質科学に広げ、新たな分野を創出するものです。現在、その第一歩として放射線照射を行ったDNAにネオジム磁石と同じ原理の磁性が実現する可能性を理論的に予言しています。多額の外部資金を取らなければ検証実験を行うことが難しいので難航していますが、今後実験グループと共同して実験的な検証や解析を行う予定です。

新しく立ち上げを計画している”放射線駆動物性学”の模式図

JAEAに入所してよかったこと

JAEAに入所してよかったことは、原子力工学以外の分野から入所した職員に対してとても親切なことです。JAEA、特に原子力基礎工学研究センターはやはり原子力工学分野の専門家が多いのですが、同じ専門の職員同士で固まって閉鎖的な雰囲気になるようなこともなく、分野を超えた議論も活発に行われています。また、スーパーコンピューターの性能もさることながら、計算資源を潤沢に使わせてもらえるので目一杯計算を行うことができることもJAEAの魅力だと感じています。
また、思いがけず海や湖沼が近かったのでよく釣りに行きます。海岸の地形変化や水中の様子を予想して、上手く狙い撃ちできた瞬間が最高です。

甲斐健師研究主幹との議論。一緒に新しい物理を開拓したいです。
釣ったクロダイ。このサイズだと引きが強いです。

学生時代の専攻と入所後の担当業務の関係

学生時代の専攻である物質科学計算と今の業務で扱っている放射線輸送計算を接続する研究業務を行っています。私の学生時代の専攻は高温超伝導の理論研究で、物質をコンピュータの中で再現して、その性質を計算できる第一原理電子状態計算と、物質中の電子同士が絡み合う効果を議論できる強相関電子系理論を組み合わせることで高温超伝導メカニズムの解明や高温超伝導を実現するための予言を行ってきました。
しかし、これらの理論は高温超伝導体だけでなくほとんどの物質に適用することができます。これらの理論計算と、放射線挙動解析研究グループで開発しているPHITSを組み合わせることによって、物質に放射線が入射してから物質の性質が変化するまでの流れを追跡できる計算システムの構築を行っています。

研究職の研究活動 ー応募書類の提出は計画的に!ー

研究を続けたかったので、大学と研究所を中心に就職活動を行っていました。JAEAの公募には大学に来た案内にリクルーターを経由して応募しましたが、他の公募は日本物理学会等で懇意にしていただいている研究者の方々に応募したい旨を話して連携を取りつつ応募しました。
また、就職活動を行う上で締め切りまでになるべくリクルーターの方と応募書類のブラッシュアップを繰り返すようにしました。応募書類のわかりやすさや論理的な流れは数回の添削を受けるだけではそこまで改善しないので、リクルーターの方と密にやり取りするのが大事だと思いました。JAEAではかなり楽しく研究生活を送ることができるので是非検討してみてください!