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『I Promised You The Moon』感想その2

書いては消しをしていたら、だいぶ前にその1を書いてから随分時が経ってしまったが、このままだと年を越しかねないので、今年のうちに載せておこうと思い立った。
最近『スメルズ ライク グリーン スピリット』という日本のドラマを見ていてジェンダーについて感じることがあり、最初にそれを感じたのは今も大好きなこのドラマだったので、それについても少し感想を書いておきたかった。

テーの性格

私はITSAYとIPYTMを通じてテーについて”気難しい”という印象を持っていた。自分の気持ちをうまく伝えられなくて相手に誤解されるような、または相手を傷つける行動をとったり、他者の考えや選択を受け入れられなくて不機嫌になり感情を爆発させたりするテー を見て、扱いにくくて気難しいという印象を持っていた。
IPYTMの途中あたりからその印象が変わり、彼はとても単純で真っ直ぐな子供のような人なのだと感じるようになった。自分のその時々の気持ちがそのまま出てしまう人。空気や他人の気持ちを読んで自分の言動を加工しないせいで、結果的には不穏な状況を作り出してしまうこともあるのだが、よくも悪くもそんな結果まで見通せない人。そして、それを健気に受け止めてきたのがオーエウだった。
IPYTMで私が彼の単純さを実感したシーンはいくつかある。
一つは、大好きだった演劇部のキム先輩が、演劇の道を諦めて卒業後はキャビンアテンダントになると聞いてからのシーン。その前に喧嘩をして険悪になっていたオーエウとテーだったが、キム先輩の進路を聞いて傷ついたテー がオーエウを訪ねる。オーエウはまだちょっと険悪な雰囲気を漂わせてテー に会ったのだが、いきなり泣き出すテー。事情のわからないオーエウは戸惑いながら、とにかくそっと優しく彼を抱きしめてやるしかなかった。ママとチビちゃんか・・・。
これ以外は深刻なシーンではなかったが、例えば、いろいろあって結局別れた二人がオーエウの勤務するオフィスで久しぶりに再会したシーン。テーの目の前でオーエウが仕事のメールを打つとテーは "すごい" と感心し、オーエウが簡単に今の自分の業務内容を説明すると、ふんふんと聞いていたテーがニコッと笑って「よくわかんない」という。このシーンとBillkinの演技を見て、テーの子供のような単純さを感じた。
もう一つは最後のシーン。ブーケを片手にした自分とオーエウのツーショットをSNSに上げたテー。テーは嬉しそうだけど、奥に映るオーエウは”そんなこと軽々しく世間に知らせていいの?”と言わんばかりの怪訝顔。テー って子供みたいだなぁと感じた。
こんな風に書くとテーが単細胞だというネガティヴな印象になるかもしれないけれど、決してそうではない。テーの言動には「よくないことかもしれないけど、人ってそういう反応することあるなぁ」と理解できるものも多くて、世話が焼けるけど結局憎めない人だった。ITSAY からIPYTMを経て、人物像が厚みを増した感じがした。


ジェンダーというもの

私はこnoteにB Lやブロマンスについて書いているけれど、ジェンダー問題を理解するためにB L作品を見ているわけではない。ずっと昔に偶然出会ったときにその美しさと切なさに引き込まれ、大人になってもずっと好きだというだけ。BLドラマなどをジェンダー問題を考える材料としてみることはない。

そんな私なのに、このドラマを見ていて、テーとオーエウはお互いに同性を好きだけどジェンダーが違うんだなぁということを意識した(私の捉え方が正しいかはわからないが)。BLドラマを見てそんなことを考えたのは初めてだった。
それを感じたシーンは、二人がまだ大学生になりたての時、オーディションを受けに行ったときだった。カフェの店員の役だったと思うが、カメラテストを受けたオーエウが監督から「女っぽい」と言われて落ち込んでいた。テーはそんなオーエウを慰めていたが、フワッとした話し方や可愛い雰囲気はおそらくオーエウ本人が選んで意識的にやっているものではなくて内面から滲み出てしまうものだったのだろう。”もう少し男っぽく”と言われてすぐ声や話し方や動作を男っぽく変えられるというものでもないのだなぁと、オーエウを見て感じた。そしてそれはテーとは違う。個人の性格によるところも多少はあるのかもしれないが、オーエウはテーと付き合うようになってから少しずつ女性的な雰囲気を強めていった。しかし、テーは相変わらず男子だった。オーエウの雰囲気や話し方、仕草、服装の好みなどは女子的になっていったが、だからと言って完全に女性の格好をするわけではなかった。それはドラマの中にも出てくる ”女性の服装で女性として仕事をしている男性として生まれた人” とはまたジェンダーが違うのだろう。ジェンダーの多様性を感じた。オーエウが変化していく様子の描き方がとても自然だったので、いつの間にかとても女性らしくなっていたオーエウに違和感を感じずにこのドラマを見られた。
基本的にBLドラマと実社会でのジェンダー問題を結び付けない私にとっては、このドラマはそういう事を自然と意識させられたという点でもとても印象深い作品だった。


今思い返しても、大好きな作品。俳優の演技はもちろん、映像も音楽もいい。
少し落ち着いたら、手元にある分だけでも一気に見直したい。
また思い立ったら追加の感想を書いているかもしれません。