陰陽五行の世界 日本料理
私たちは物事をプラスとマイナスの二極でとらえる事がよくあります。善/悪。明/暗。右/左。男性性/女性性...などなど。 人間の身体をもってしても、はじめに二極、二つに分類して考える傾向があり、 そしてその後に5つ、あるいは5の倍数を単位として考えるそうです。 私たちの腕は2本あり、指は5本。2と5。これが基本となって世界をとらえているのでしょう。 東洋哲学の根幹である陰陽五行もこの2と5。 人間の身体性から自然観、宇宙観を創造した哲学です。 陰陽五行の考えは中国で生まれ、各地へ広まりその土地土地の風土によって育まれてきました。 日本には5〜6世紀に暦とともに伝来したとされています。 陰陽五行というと、気学や四柱推命などの占いと合わせて考えがちですが、占いだけでなく、 伝統的な東洋文化、日本文化の中に見つける事ができます。 日本文化の中にある。というよりも、日本の伝統文化は陰陽五行の基礎を汲んで構成されているのです。 茶道も華道も、能や音曲、建築なども。相撲などは非常にわかりやすい例でしょう。 茶道についてはまた改めて書くとして。 最近非常に興味深く思ったのは「日本料理」です。 日本料理には調理の際の決まり事があるそうで、それが「五味」「五色」「五法」だそうです。 五味とは、甘・鹹(塩辛い)・辛・酸・苦 の味。 五色とは、赤・黄・青・白・黒 の色味。 五法とは、生・焼・煮・蒸・揚 の調理法。 この3つの「五」は五行から導きだされた料理法です。 食材は陰陽に分けられ、それぞれが陰陽五行の理に合った調理法や盛りつけで料理されるのです。(2→5) そして「包丁」。食材を調理できる形に整える役割を担う包丁にも陰陽があります。 和包丁は片刃ですが、握って右側、研いで刃のついている方を陽。刃のついていない左側を陰と定められています。 包丁に陰陽を定めただけでも驚きですが、その包丁を素材にどう当てるかや、陰の素材、陽の素材其々の切り方、また包丁の入れ方で生じる陰陽などなど細かくルールがあるのです。 例えば、リンゴなど丸いものを包丁でむくとき、当然ですが刃のある右側が食材に触れることで皮をむけます。 刃のある右側(陽)が常に当たる丸い食材は陽とされました。 そして丸いものを四角く切るとき、包丁の左側が食材に触れます。ここから四角い食材は陰とされました。 食材を盛りつける器にも陰陽が。品数にも陰陽が。とどめなく、きりなく陰陽五行の世界が繰り広げられるのです。 私たちの日常でも、魚の盛りつけ方や、ご飯とお味噌汁の位置など、常識とされていることの背景にも陰陽五行が 関係しているのだと改めて知りました。 世界の中でも美しい日本料理。その美意識の裏にある陰陽五行の思想は、食を通して陰陽五行の世界観を再現しよう。 また、陰陽五行の宇宙観を食して自然の摂理に乗ろうという思いなのかも知れません。