【終活110番018】親子殺人が多いワケ

ちょっと重たい話ですが、毎年600件ほど殺人事件が起こります。そのうち9割は顔見知りによる犯行です。で、被害者と加害者の関係性でもっとも多いのが、なんと親子なのです。6割がそうです。親が子の、子が親の命を奪うわけです。

なぜ、このようなことになるのでしょうか。
こたえは、親子ほど近い関係は他にないからです。
血を分けた近い関係であるからこそ、蜜月の時は最高にうまくいっている。盤石の親子愛です。ところが、何かのきっかけでささくれだったような感情が一方に芽吹いてしまうと、うまくいっていたときと同じレベルで憎しみの感情に突き動かされるようになってしまう。

親子殺人でもっともやりきれないのが、いわゆる老老地獄殺人です。他にも、老老介護とか老老心中とか、超高齢社会の闇ともいえるような悲しい事件が増えています。容易に想像されるのが老親の介護や認知症の問題です。介護保険制度が施行されて20年以上たちますが、今でも家族介護で疲弊しているケースがかなりあるということです。

でも、もっと突き詰めて考えていくと、家族介護に至ってしまった理由があるはずです。それが、他でもない、そなえておかなかったことによる哀しい顛末だと思います。この話をすると、「いや、そなえたくたって、おカネがなくてそなえられないことだってあるんだよ!」という声が必ず出てくるのですが、それは、やはりちがうのです。

将来的に要介護状態に陥ってしまったとして、しかもその時におカネが十分にないことが予測されるのであれば、その前提でそなえておくべきことがあります。具体的なゴールとしては三つあります。具体的には、自宅で看取ってもらうか、ギリギリまで自宅で粘って最後は救急車を呼んで病院で死ぬか、特別養護老人ホームに入るか、です。

親側は、このうちどれを希望するのかを決めて、子どもに伝えておかねばなりません。できれば、各選択肢を実現するための手続き等についても調べた上で子どもに伝えておきたいところです。でも、それがむずかしいようであれば、子どもに頼んで、自治体の介護保険課や社会福祉協議会に問い合わせたり、出向いてもらったりしておくことです。もしかしたら、この作業すらも面倒でできないという人もいるかもしれませんが、何もそなえないままに事が起きて老老地獄に堕ちていくよりは、子ども側の苦痛も少ないはずです。

これはいちばん悲しいケースだと思いますが、置かれている社会的状況にかかわらず、自分の老後のことで子どもの人生を損ないたくないと思うのであれば、やはり、そなえておくことが不可欠です。これは親にとって果たすべきさいごの大仕事です。長生きしなければならない時代において、これを放棄することは親失格と言わざるを得ません。晩節を汚すようなことだけはしてほしくありません。

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