【デキる上司の十訓十戒014】説教しない

以前に紹介した意識アンケートでも、聞き手を萎えさせる話の常連のひとつが「説教話」であることがわかっています。説得同様、だれだって他者から説教されるのはきらいです。ところが場数を踏めば踏むほど、年齢を重ねれば重ねるほど、人は説教話を好むようになるから困ったものです。

就業時間外に飲み屋とかでこれをやられたら、部下は一発で上司を嫌いになるでしょう。挙句の果てに、「キミらは1,000円でいいよ」なぁんてお金まで要求されたとしたら、パワハラで訴えられるのが今の時代です。どうしても説教しなければならない局面があったとしても、それは就業時間内に、できればリアルタイムですべきです。リアルタイムがむずかしければ、上司であるあなたの耳に入ったらなるべく早めに、です。

そして、他の社員がいない場所で、クールにこう言います。「こういう話が耳に入ってきたんだけど、事実関係を教えてもらってもいいかな?」。まずは部下の言い分を聞くのです。これなしにいきなり説教モードに入るのはリスキーです。あなたのためになりません。部下の言い分を確認した上で、やはりクールに諭します。

「そういうことだったんだね。わかったよ。私たちの仕事っていうのは、事実かどうかよりも顧客の目にどう映るかで判断されてしまうことがあるからな。お互い気をつけよう。つぎの定例会議でも全員に再確認してもらうように話をするよ」。

当事者に説くというよりか、チーム全体で共有・再確認しよう。そんなスタンスです。このとき、部下の人格を損なうような伝え方はしないよう注意してください。ヒトではなく行為にフォーカスして諭すことです。誰しもミスをすることで何かを学び、少しずつ成長していくものです。上司であるあなたにしたって同じはずです。同じ会社の同じ組織のメンバーです。悪意を持ってミスを犯している部下など、そうそういるものではありません。みんな会社や組織のために貢献したいという気持ちで毎日がんばっているのだと思います。

口述しますが、説教の延長線上で怒鳴りだす上司がいます。これはもう論外の外です。職場は軍隊ではありません。例え新入社員であったとしても、彼らにも自尊心というものがあります。先述したように、上司に一方的に怒鳴られ頭を下げれば、部下はそれで終わったように錯覚します。上司は上司でフラストレーションから解放される。見かけ上は一件落着のような気がしますが、実は何にも解決していません。どこが悪かったのか。なぜ指摘されたのか。どうすればよかったのか。こうした本質的なことを考えて、気づいて、納得して、そして改めてもらわない限り、この問題は未解決のままなのです。人財育成が上司のミッションである以上、軌道修正してもらうよう誘い導かなければダメだということです。

上司の怒りは職場のムードを重くします。上司に対する恐怖心のせいで自由な発言が減っていき、職場は見事なまでに暗くなります。朝昼晩の挨拶も蚊の鳴くようになり、「ありがとう」「わるいな」「助かるよ」「やるじゃん!」「問題ない?」といったメンバー相互の声かけも消えていきます。上司に本心を言わなくなります。当然、相談なんて持ちかけるわけがありません。

いつしか仕事に直接かかわるコミュニケーションもなくなります。部下たちは上司の顔色をうかがいながら仕事をするようになります。ネガティブなことを速やかに報告しなくなります。顧客ではなく、上司を向いて仕事をします。上司に言われたことしかやらない、できない部下ばかりになります。

そして、上司のいないところで陰口のオンパレードとなります。なかには精神を病んで病気がち、休みがちになる部下も出てきます。あなたはすっかり裸の王様になります。こうなったらおしまいです。部下のまちがいや至らない点を指摘するときほど、一拍おいて、作戦を立ててからアプローチするよう心がけたいものです。

こうしたことを理解できていれば、部下のミスをネチネチあるいはガンガンとつつくことはしないはずです。そうすることで最も大きなダメージを負ってしまうのは他ならぬ上司であるということを、すでに読者のみなさんはご理解いただけていると思います。

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