【認知症予防大作戦004】好きな相手にストレートに想いを伝えよう
時代を超えて女子学生の好きな作家として名前が上がる太宰治がこう言っています。
愛とは言葉だ。言葉がなけりゃ、この世の中に愛はなくなるんだ。愛の実体に言葉以外の何かがあると思ったら大間違いだ。聖書にも書いてある。言葉は神なりき。これに命あり。この命は人の光なりき。
中学高校と男子校で過ごした私は、他校の女子生徒にアプローチする目的で、教養を身につけるためにかなりの本を読み漁りました(笑)。太宰は私の行動スタイルに影響をもたらした作家のひとりです。塾で知り合った女の子に声をかけるとき、いざとなると緊張してその場から逃げ出したい気持ちになる自分を、太宰の言葉を借りて、こう叱咤したものでした。
あの子のことが本当に好きなら、黙っているというのは卑怯な独りよがりだ。好きだって口に出すのは、そりゃあ誰だって恥ずかしい。でも、その恥ずかしさに目をつぶって怒涛に飛び込む思いで愛の言葉を叫ぶところに愛の実体があるんだ。黙っていられるのは、結局その程度の愛なんだ。恥ずかしくて言えないというのは、つまりは、相手より自分が大事なんだ。怒涛へ飛び込むのがこわいんだ。断られて傷つくのがこわいんだ。本当に好きならば、魂の底から愛の言葉が出るものだ。どもりながらでも、たった一言でもいい。切羽詰まった真実の言葉が出るものだ!
いゃあ。書きながら、あの日あの時の場面が鮮明によみがえってきて胸キュンになりますよね(笑)。なるほど、聖書も「初めに言葉ありき」として、言葉が秘めている無限の可能性を示唆しています。この言葉を用いて行われるのが「話す」という行為です。だからこそ、この「話す」という行為には、びっくりするほどの影響力があります。話す力次第で、恋愛や仕事など人生の浮沈がかかることさえあります。しかも自分のみならず、他者の人生までをも変えてしまうことさえあるのです。
あなたも好意を寄せる相手に、素直に気持ちをぶつけてみましょう。その際におすすめするのが、自己開示メッセージという伝え方です。自己開示というくらいですから、必ず主語を明確にして、「私は…」で始めるようにします。
日本語というのは、主語の存在が要らない構造になっています。たとえば英語では「アイ・ラブ・ユー」というのに対して、「愛しているよ」のひとことで済ませてしまいます。たしかに、これが日本文化の奥ゆかしさなのかもしれません。でも、それを口実というか隠れ蓑にして、主語を曖昧にしてばかりというのはいかがなものでしょうか。
ましてや、想い人に愛を伝えるとき、恥ずかしさをこらえて伝えるからこそ、告げられた相手の心を揺さぶるということもあると思うのです。自己開示メッセージでは、このようになります。
「〇〇さん。今日はより一層エレガントですねぇ。バッチシですよ! 私ね、いつも〇〇さんがセンスのいいコーディネートで来てくれるから、すっごい幸せな気持ちになれるんですよね。だからね、これからもたっくさん会ってほしいです。お願いできますかねぇ」
「〇〇さんって、本当にダンディですよね。今日のネクタイのステキなこと! とてもよくお似合いですよ。そうだ。バレンタインデーには、私にネクタイを選ばせてほしいなぁ~。ねっ、〇〇さん。いいかしら」
「〇〇さん。今日も髪型、完璧ですね! こんな風のある日でも崩れてないですよねぇ。そんな〇〇さんと並んで歩けるのが、私には何よりもうれしいんですよね。いつも歩いてる道まで輝いて見えますもん」
「〇〇さん。私はあなたが大好きです。私はね、〇〇さん。あなたがいつもやさしい笑顔で微笑んでいてくれるから、やさしい眼差しで私のことを見つめてくれるから、ああ、明日も元気に生きていけるって思えるんです。なんだか父のことを思い出してしまいますわ。だからね。私はあなたのことが本当に大好きなんです」
どうでしょうか。もしもこれを読んで、「こんなこっばずかしいこと言えるわけないでしょ」とか、大笑いしてしまうようだとしたら、相手に対するあなたの好意はその程度のものだということです。その相手は、残念ながら、老いらくの恋の相手とは言えません。曲がりなりにも恋というのは、命の炎を燃やして、命を削りながら取り組むべきものなんです。いま一度、ターゲットの選定をやり直す必要があります。
でも、「いや、自分にはデキる!」という人はOKです。まずは、相手がそこにいると思って、愛の言葉を吐いてみましょう。ひとり語りを繰り返すだけでも、ときめいてくるはずです。そして、脳内に恋愛ホルモンが分泌されてきます。癒され、やすらぎ、やさしい気持ちで胸のあたりが温まっていくように感じられるはずです。
ハズレなしのコツは、とにかく相手をホメることです。老若男女問わず、ホモサピエンスには「誰かの役に立ちたい」という潜在的かつ根源的な欲求があります。その日、会う人のために、女性も男性もおめかししてくるのです。会ったらすぐに、相手のビジュアルをホメてあげましょう。髪型、服、靴、ネイル…。何でも構いません。そして、自分に会うために時間をかけて準備してくれたそのプロセスを汲み取ってあげたいものです。
そんなふうに言われたとしたら、相手のほうは当然うれしくなります。「自分は特別な存在なんだ」という自己重要感が満たされ、「この人を幸せ気分にしてあげてるんだな。この人の役に立っているんだな」という自己承認欲求が満たされます。結果として、脳内に快楽ホルモンが分泌されてハッピーな気持ちになります。すると、「なんかこの人と一緒にいると楽しいな。なぜだろう。あっ。もしかして、私はこの人のことを好きなのかもしれない…」という認知不協和の解消が、アタマの中で展開されていきます。
想いを寄せる人との仲を進展させようと思うなら、まずは、目についたビジュアルをホメること。そして、その裏側にあるプロセスや準備を称えること。さいごに、そのおかげで自分がいかに心地よくなれるかを感謝することです。これを習慣化していけば、お相手があなたのことを好きになるのは時間の問題です。
リハーサルで愛の言葉を自分のモノにできたと思ったら、いよいよ本番です。どうしても緊張してしまうという場合には、誕生日とかクリスマスイブとかバレンタインデー(ホワイトデー)とか、国民的なイベントを大義名分に使うことでハードルを下げられると思いますよ。ちょっとしたプレゼントを手渡しながら、用意した言葉を照れずに伝えましょう。きっと相手の人も感激するはずです。そして、そのあとの二人の時間は、これまでとはちょっとちがった世界になると思います。キラキラしたまばゆい世界を、どうぞ二人でたゆとうてください。