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安心老後のパートナーはいずこに

前回の記事で、もっとも有効な終活とは、いつでも・なんでも・気軽に相談できる専門家を確保しておくことだという話をしました。

偶然でかけた終活セミナーでソノ気になって、いくら医療や介護や財産分与のことを勉強したところで、後期高齢者ともなれば、残念ながら知識として定着することはむずかしいし、いざとなった時に、学んだ情報を脳から検索・抽出してきて実践に移すことは不可能に近いと思うからです、経験的に。

それよりも、何かあってもなくても、雑談を交わすような感覚でフリートークのできる然るべきプロを見つけて、関係をつないでおくこと。これこそが、何よりも実際的で役に立つ「老い先へのそなえ」になるはずです。

ということで、そんな安心老後のパートナーになり得るのは、いったい誰だろうと考えてきたわけですが、なかなか適当な人が見つからない。で、消去法的に残ったのが、一般的には認知度の超・低い「社会福祉士」に行き着くわけです。

欧米のソーシャルワーカー同様に、日本にも、高齢者援助の専門技術を有する国家資格者がいます。それが「社会福祉士」です。「はぁ?なに、その資格」と言われてしまいそうですが、たしかに世間的認知度は低いものの、使いようによっては実に価値の高い専門家。それが社会福祉士なのです。

社会福祉士をご存知ない人のために、その定義を付記しておきます。社会福祉士とは、「専門的知識及び技術をもって、身体上もしくは精神上の障害があること、または環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うことを業とする国家資格取得者」(社会福祉士及び介護福祉士法)です。

日常的な困りごとや老い支度に係る相談窓口として、社会福祉士を確保することの意味は大きいはずです。福祉の専門資格ではありますが、社会福祉士になるためには、福祉全般はもとより、医学や法律についてもかなり勉強しなければ国家試験に受かりません。

つまり、広く浅く、何についてもある程度は対応できるのが社会福祉士の強みなのです。その守備範囲は実に広く、これを利用しない手はありません。もし仮に、具体的な用件で医者や弁護士が必要になった場合には、社会福祉士を通じて紹介してもらえばいいのです。そういった、地域でのネットワークも彼らの武器です。老後のあらゆる問題に対処し得るだけの知識と技術と人脈を兼ね備えているということです。

ひとつ問題をあげるとすれば、みなさんの地域で社会福祉士を見つけるのが、思いの外むずかしいということです。日本の社会福祉士は、欧米のようには認知されていないので、はっきりいって稼げません。ですから、独立して事務所を構えている社会福祉士は数が少ないのです。ほとんどが、病医院や介護施設等に勤務しながらひっそりと生息しています。あと、ごく一部の世渡り上手な社会福祉士は、自治体や社会福祉協議会に勤務しています。

安心老後パートナーとしていちばん望ましいのは、独立型の社会福祉士です。どこの組織にも属していないため、自由な発想で柔軟に動いてもらえるからです。病院や施設などに勤務している社会福祉士は、組織の歯車として動かねばなりませんから、創意工夫を凝らして臨機応変に対応してもらえないことが多いでしょう。ましてや、役所勤務の社会福祉士は、言うに及びません。

それでも、彼らでも就業時間外や休日はフリーのはずです。その社会福祉士個人として相談に乗ってもらえる親しい関係を築くことができれば、それでも十分に役に立つかもしれません…。いや、ちょっとムズいかな…。


いずれにせよ、読者のみなさんが安心老後のパートナーとなり得る社会福祉士を探そうと思ったら、まずはインターネットで「お住いの管轄自治体名(スペース)独立型社会福祉士」と入れて検索してみる。それでも見当たらなければ、病医院や、自治体の介護保険課や高齢福祉課、社会福祉協議会に出向いて、「こちらに社会福祉士とかいう国家資格をお持ちの、相談業務のプロはいらっしゃいませんか?」と訊いてみるしかありません。

でも、ひとたび見つけてしまえば、社会福祉士本来のミッションからして、むげに追い返されることはありませんので、遠慮なく相談してみてほしいと思います。

いまは元気で自立している人でも、年齢とともに時系列的に心身の機能が落ちていきます。通常は、あるタイミングで何かしらの症状を発症し、急性期と称される医療を要する時期を経て、慢性期(療養期)、終末期を経てエンディングを迎えるわけです。シニアの時系列的な心身機能の推移に対応して必要な手続きやサービスを支援するという、社会福祉士本来の仕事(ソーシャルワーク)からすれば、100歳まで生きなければならない時代における社会福祉士の価値は実に高いと思います。

繰り返します。円滑な老後を手にしようと思うのであれば、終活ブームに乗せられて銀行屋や法律屋に無用なおカネを使うよりも、いつでもなんでも気軽にコンタクトできる相談窓口を確保することです。社会福祉士は、超高齢社会の救世主となるポテンシャルを秘めています。是非とも、お住まいの地域で探してみていただきたい。チャネルを作っておいて決して損はないはずです。

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