介護地獄「救済の3原則」
私どもは、多くのみなさまからさまざまな相談を受け、それに対応する過程で、スタッフが判断に迷った時のために、「救済3原則」というものを設定しています。要は、老親世代もお子さん世帯も、できれば両方とも助けてあげたいけれど、実際にはそれはむずかしいということだって多々あるわけです。そんなときは、つぎの3原則に従って行動するようにしているのです。
・当事者よりも相談者(相談者優先)
・当事者と相談者の分離(両者分離)
・在宅よりも施設(即、施設)
ここ数年の間に急増している「老親や配偶者の認知症問題」。このケースは、だいたい同居している家族が限界まで追いつめられてしまっています。老親への愛情ゆえに、自分でできるところまではなんとかやろう。そんな思いが強いのだと思います。
でも、認知症を患った老親や配偶者に、その思いが届くかどうかは誰にもわかりません。届いているのかもしれませんが、問題行動(医学的には「周辺行動」)が出てしまったら、やはり閉ざされた狭い空間の中で顔を突き合わせながら暮らしていくというのは、ちょっと無理があると思います。
そんな場合には、共倒れになってしまう前に、つらいかもしれませんが距離を置くべきだというのが私どもの考えです。ご家族の方は、よく「うちの親(配偶者)は集団生活などできっこない」とおっしゃるのですが、意外とそんなことはありません。思いもかけないほどにあっさりと、病院や施設に溶け込んでいくものです。それが、看護や介護のプロのなせる業なのかもしれません。あと、もちろん、薬の効用も大きいとは思います。
さて、認知症に係る介護地獄から脱出するための最強シナリオは、『もの忘れ外来→認知症病棟入院→老健』です。
もちろん、ダイレクトに老健に申し込むという方法もないわけではありません。しかしながら、入所判定審査会(または判定会。施設長である医師の他、事務長・看護師長・介護支援専門員・介護サービス提供責任者等が出席し、入所申込者の入所の可否について判断するもの)を確実にクリアするためには、やはり病院からの紹介状(正確には、「患者情報提供書」)やソーシャルワーカー間の情報交流があることが望ましいでしょう。それに、そもそも、介護度認定申請の段階で主治医の所見が必要になりますから、どちらにしても、いったん病院を外来受診しておくほうが合理的だということです。
最終ゴールである老健への切符を手にするまでの流れは、全部で7ステップあります。これを社会福祉士や百寿コンシェルジュといったプロに頼めば、早ければ2週間、遅くとも30日あれば、ご家族は平穏な日々を取り戻せると思います。もし仮に、ご家族自身で実践しようとするならば、(あくまでも推測ですが)90日あればゴールにたどり着けるのではないでしょうか。
それでは、次の記事から、介護地獄から脱出するための最強シナリオについて詳しく書いていきます。本気で介護問題をなんとかしたいとお考えなのであれば、目を凝らして熟読してください。生半可な気持ちで文字だけ追っていたのでは、実際にその場面に対峙したときに、ご自身の窮状が相手に伝わりません。各場面ごとに、臨場感を持って、イメージトレーニングをしながら読んでください。
極端な言い方かもしれませんが、いざ本番ともなれば、演じるくらいの意識が必要です。リハーサルくらいのことはすべきだと、私は本気で考えています。決して冗談でなく、そこまでしないと、なかなか医療現場や介護現場の専門職たちを味方にすることはむずかしい・・・。つまり、彼らを巻き込まない限り、介護地獄から脱出することができない。そう考えたほうがいいと思います。
まぁ、もしも、どうしても不安だとおっしゃる場合には、社会福祉士や百寿コンシェルジュに依頼してください。その場合でも、問題解決の実戦的な流れだけは理解しておかれることをお奨めします。
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