最強の認知症予防対策…。恋すりゃボケてる暇はない!
過日開催した七夕イベントでのアンケート結果と、参加者からの相談を受け、今回は禁断のテーマ(?)高齢者の恋愛について私見を書かせていただきました。
元気な高齢者の関心事トップはやはり認知症予防
7月7日の日曜日。地元の自治会で開催された七夕イベントで、120分ほどの講演を依頼されました。「ためになる話を面白く」と要望されたので、参加予定者の関心が高いテーマについて、事務局のスタッフに下調べをしてもらいました。結果、『ハマのお母さんたちに生涯ヒロインをまっとうしてもらうために』という演題を決定。前半は「クールな老後のすすめ」と題し、あるべき老い先へのそなえについて。後半は「認知症予防大作戦」と題し、脳年齢を維持するためのエクササイズについてお話ししました。
イベントの最後に簡単なアンケートに協力いただきました。今回の質問は、「エンディングまでにあってほしくないこと、望まないこと(一択)」と、同じく「あってほしいこと、やりたいこと(フリーコメント)」のふたつ。これも事務局および自治会長と協議して事前に決めたものです。結果は以下のとおりでした。
経験上、子ども世代が親のことでもっとも大変な目に遭うのは、認知症や介護の問題がほとんどです。今回も半数以上(58人中30人)の人が、認知症や要介護をもっとも恐れていることがわかりました。
意識調査で必ず現れる恋愛待望派
逆に、ポジティブな側面に目を向けると、人生のファイナルステージを悔いなく生きたいという価値観に係る回答が最多で25人(紫色)。具体的なイベントを答えた人が16人(緑)。そして、残る少数派が全体の2割という、大体いつもどおりの結果になりました。
もう慣れっこになりましたが、同様のアンケート調査を行うたびに、いつも一定の割合で「恋をしたい」という声があげられます。はじめは意外な感じもしましたが、知人の医師によれば、これは至極当然のことで、いつまでも元気で若々しく前向きに生きていくためには、だれかを好きでいることの効用は計り知れないものだそうです。
認知症という病気は、脳の海馬という箇所がダメージを受けることで認知障害や記憶障害が出るわけですが、実はその前段階で、感情をつかさどる前頭葉が機能不全となることが検証されています。逆に言えば、前頭葉にプラスの刺激を与え脳年齢を維持することが、認知症予防のポイントなのです。つまり、ウキウキワクワク・ハラハラドキドキすることで現代人にとっての最大リスクである認知症を遠ざけることができる…。
恋にときめく要介護高齢者たち。恋に年齢は関係ない!
実はこの仮説、すでに全国の介護施設で検証済みです。来る日も来る日も、身だしなみに気を遣うこともなく、浮かない表情で気だるそうに過ごしていた高齢者が、ある日突然、新しく入所してきた異性に関心を持つことでシャキッとするということがよくあります。部屋を出て食堂に向かう前に鏡をのぞいて髪を整えたり、部屋着を毎日取り換えるようになったり、歩行器に頼らず手すりをつたって自力で歩くようになったり…。こういう例は枚挙にいとまがありません。
カップルでやるゲームやダンスの際に言葉を交わしたり、スキンシップしたりするようになるとさらに若返り、館内の懇談スペースや中庭のベンチでデートするまでになるのです。好意を持つ相手と時間を共有することは、どんなクスリよりも、どんな名医よりもまさる特効薬。恋に年齢は関係ないということです。
巷には脳年齢維持のための様々なエクササイズが出回っていて、多くの介護施設で取り入れられています。介護スタッフが模範を示したうえで高齢者たちが実践するのですが、いずれもヤラされ感やノルマ感が先に立ち、残念ながら前頭葉に届けられる刺激も脆弱です。
ここだけの話、やっている介護スタッフが楽しんだり面白がったりしていないのに、やらされている高齢者の気分が高揚することなどあるはずありません。
でも、恋となれば話は別です。恋はするものではなく落ちるもの。自分の意思とは無関係で、私たちの本能がエンジンなのですから、成長ホルモンや快楽ホルモンの分泌が促進されるのも当然のことでしょう。
「もう一度、恋をしたい」と決意したひとりの女性
さて、七夕イベントの数日後に、ひとりの参加者から電話をいただきました。カウンセリング希望とのことで、本牧の豪邸にお邪魔させていただきました。女優の三田佳子さんを彷彿させる品のいい喜寿(77歳。まさに七夕っ!)の方で、お目にかかってすぐ、アンケートで「もう一度、恋がしたい」と回答した女性であることがわかりました。「そんなことをなかなか人前では言えないのだけれど、あなたの話に感化されてつい書いてしまった」とのことでした。
七夕イベントから帰宅した彼女は、昔懐かしいアルバムに見入ったり、若いころから大好きな二代目・松本白鸚さんの舞台のDVDを繰り返し観賞したり、読書サークルで見かけるナイスガイのことを想像してみたりだそうで、「あの講演会ですっかりソノ気にさせられてしまいました」と慎み深く頤(おとがい)を解かれました。
ご自宅にお招きいただいた趣旨は、私が講演の中で紹介した、認知症予防に有効とされる疑似恋愛エクササイズにチャレンジしたいとのこと。その具体的な進め方を詳しくお知りになりたくてコンタクトされてきたわけです。進め方についてガイドしたところ即決されて、毎月一回(全12回)さまざまなコミュニケーションゲームに取り組んでいただくことになりました。
疑似恋愛でも認知症リスクを遠ざけることがデキる!
毎年年初に行っている『初詣客100人に聞きました!何を願懸けしましたか?』では、常に「認知症になりたくない」がトップです。でも、認知症への危機感が高い一方で、具体的な予防をしている人はほとんどいません。医学的根拠のもとに確立された対策がないのですから致し方ありませんが、実は全国の介護施設からは、認知症の問題行動の緩和事例が多数報告されています。
私どもでは5年をかけて100事例を分析し、前頭葉に快楽刺激を与え脳年齢維持に絶大な効果をもたらすであろうエクササイズを体系化しました。具体的な内容は、以下のようなコミュニケーションゲームで構成されていて、カラダとココロとアタマに、自然とときめきを喚起できるような仕掛けになっています。
「想い人を決める」・「想い人の名前を繰り返し書く」・「想い人に捧げる和歌を詠む」・「歌詞を見ずに想い人に捧げる歌を歌う」・「想い人への想いを独白する」・「想い人をデートに誘う」・「想い人の手を握る」・「想い人とハグをする」・「想い人とキスをする」・「想い人と恋人になる」(以上、疑似恋愛講座編)・「想い人をデートに誘う」・「想い人に告白する」(以上、実践編)
仮にバーチャルであっても、恋をすることで確実に成長ホルモンが分泌され、免疫力が高まります。ボケてる暇なんかありません。それが恋です。前述の医師によれば、高齢になると生殖機能が損なわれる一方、性欲は死ぬまでなくならないとか。同じハラハラドキドキでもギャンブルはリスキーですが、年齢を重ねてからの恋はいいことづくめなのです。
読者のみなさん。もう一度、恋をしてみませんか?
自分はもうそんな歳じゃないよなんて、言ってる場合じゃありません。肝心なのは、実際の年齢ではなく精神年齢です。すべてはシニアのみなさんがもっとも恐れている認知症を回避して、前向きな人生を全うするためです。美しき若葉の頃に立ち戻って、私たち人間にだけ与えられた崇高で荘厳なる恋の世界で、炎の薔薇を咲かせてみてはいかがでしょう。
恋愛に触れると、人は誰しも詩人になります。想いを寄せる人のたったひとつの眼差し、たったひとつの微笑、たったひとつの言葉によって瞬時に勇気づけられる世界。そこに意中の人がいるだけで、それ以外の景色などまったく眼中に入らなくなってしまう世界。この忌まわしくて穢らわしい人間界において、唯一無二の汚れなき神聖な世界。それが純真無垢な人間性に宿る恋愛に他なりません。
アダムとイヴ、イザナキとイザナミから始まって、万葉の時代から今日に至るまで、人間がもっとも心ときめく精神行為は、オンナとオトコの恋愛です。今ならLGBTQもOKです。恋愛をしてこその人生かもしれません。読者のみなさんも、もう一度、恋をしてみませんか?
恋すりゃボケてる暇はない…。さあ。恋せよ、愛せよ、そして生きよ!
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