老健は厚生年金受給者でも入れて安い!

私の手元に、老健の利用料明細書があります。今年のはじめに都内の老健に入所していただいた3名の相談者(ご家族)からお借りしたものです。

【Aさん(84歳、女性。要介護1。東京都稲城市の老健に入所)】
 居住費・・・・・・・11,470円
 食事代・・・・・・・12,090円
 おやつ代・・・・・・ 4,774円
 売店購入費・・・・・   900円
 洗濯代・・・・・・・ 4,650円
 日常生活品・・・・・15,500円
 娯楽費・・・・・・・ 6,200円
 理美容代・・・・・・ 2,500円
 介護保険負担額・・・32,222円

 合計金額・・・・・・90,306円

【Bさん(87歳、男性。要介護1。神奈川県横浜市内の老健に入所)】
 居住費・・・・・・・11,100円
 食事代・・・・・・・11,700円
 おやつ代・・・・・・ 4,620円
 売店購入費・・・・・   520円
 洗濯代・・・・・・・ 4,500円
 日常生活品・・・・・15,000円
 娯楽費・・・・・・・ 5,800円
 理美容代・・・・・・ 2,500円
 介護保険負担額・・・32,785円

 合計金額・・・・・・86,025円

【Cさん(77歳、女性。要介護3。東京都世田谷区の老健に入所)】
 居住費・・・・・・・ 8,960円
 食事代・・・・・・・10,920円
 おやつ代・・・・・・ 4,312円
 売店購入費・・・・・   350円
 洗濯代・・・・・・・ 4,200円
 日常生活品・・・・・ 8,400円
 娯楽費・・・・・・・ 4,200円
 理美容代・・・・・・ 2,500円
 介護保険負担額・・・30,140円

 合計金額・・・・・・73,982円

しかも、この方たちは国民年金だけを拠り所に暮らしているため、「介護費限度額認定」という制度を利用することで、月額自己負担は1万5千円で済むことになっています。どういうことかというと、Aさんの場合、介護保険負担額32,222円のうち、15,000円だけを負担すればよく、差額の17,222円が、後日戻ってくるんです。だから、実質的な月額費用は7万数千円ということになります。

あと、細かい話ですが、老健は介護報酬から収益を得ることになっているため、入所者に処方した薬の代金や、他科受診(医学管理上、老健の主治医が他の診療科の受診を指示すること)に係る費用を、入所者に請求することができません。複雑な話ですが、要するに、入所者側は薬代や他科受診料を負担しなくてもいいという、ちょっぴり美味しい話までついてきます。

もちろん、厚生年金を受給している方の場合には「介護費限度額認定」を利用できませんので、介護保険負担額はすべてお支払いいただくことになります。さらに、居住費と食事代も所得に応じて高くなりますから、だいたい月額13万円くらいだと考えておいてください。15万円を超えるというケースはめずらしいです。それにしたって、老ホ(民間の有料老人ホーム)やグルホ(グループホーム)やサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の半分で済むわけですから、こんなにお値打ちなことはないでしょう。

なお、私ども独自の調査によると、特養の入所者の月額費用は平均7万円弱です。特養というのは、そもそも症状が重いことに加え、社会的・経済的に弱い立場の人から優先的に入れることになっています。イメージとしては、生活保護受給者から、国民年金誰を拠り所に生活している人たち(住民税非課税で、年収80万円以下)の階層となります。そんな人たちであれば、当然のごとく「介護費限度額認定」の対象になりますから、特養でも老健でも、両者間に、そんなに大きな費用の差はないと言ってよいのではないでしょうか。

ちなみに、私どもの相談者のなかにも、比較的ゆとりのある方で、グルホ、老ホ、サ高住に入られた方もいます。それぞれの月額費用の平均は、一切合切で次のようになっています。カッコ内の数字は件数です。

 グルホ(7)・・・・・ 243,336円
 老ホ (6)・・・・・ 272,872円
 サ高住(16)・・・・ 248,045円

これからわかるのは、やはり特養や老健は公的施設のことだけあって、超・超・超やすい! ということです。

例えば80歳で入所して100歳まで月額25万円の生活をしたとすると、年間で300万円、20年間で6千万円もの買い物をするのと同じことになるのです。下手をしたら1億円なんてこともあり得ない話ではありません。

私どもへの相談者の中には、大企業の重役で年収2千万円以上を稼がれている方もいらっしゃいます。しかし最終的に、民間の物件でなく老健を選択されるケースが多いのは、やはりこの経済的要因が大きいと思っています。ご家族や自分自身だって、この先、何が待ち受けているかわかりませんからね。

しかし、老健が費用的に安価だからといって、その中身までが安っぽいかというと決してそんなことはありません。特養については、なんとも言えませんが(苦笑)。

老健なら、「安いのに、いいじゃん!」となります。次回は、そこらへんのお話をしてみたいと思います。

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