【デキる上司の十訓十戒019】長居しない ~風と共に去る美学~
私にとって最悪だった上司の話をしましょう。ノミュニケーション大好き上司でした。彼が大好きな肴は部下の説教でした。ノミュニケーションというのも、誰かをほめるような場になればいいのですが、経験からすると8割方が説教のような気がします。その場にいる部下を順番に説教し、飽き足らないと同席していない部下まで引き合いに出してくる。そんな人物でした。
当時、その上司は単身赴任だったため、マンションへ戻れば寝るだけなのです。要は、必要以上に早く帰宅したくないわけです。食事もかねて居酒屋で説教。続いて、女性が席についてくれるような店でチビチビやりながら説教。最後はカラオケスナックに連れて行かれ、誰ひとり一曲も歌うことなしで説教。出口なき説教ループです。挙句の果て、各店で2~3千円ずつふんだくられました。最悪です。
たまに役員とかが支店にやってくると、社内接待が始まります。許せないのは、そんな場ではひたすら腰が低い。「ごもっともで~」「まったくもって同感です」「おっしゃること、よぉくわかりますです、はいっ」がお決まりのフレーズでした。部下の間では、「バ課長の三つ覚え」と陰口を叩かれていました(笑)。
ある時など、私がメインで矛先にあがり、毎週一回、定時退社して英会話スクールに通っていたことをチクチクネチネチとつつかれました。本末転倒だというのです。「入社して3年間は、とにかく先輩の横について、会社のこと、製品のこと、顧客のことを貪欲に吸収すべきなのに、なぜ英会話なのか。意味がわからん。どうせ今時の若い奴(当時、入社2年目の23歳)は、ブロンドのボヨヨンのおねぇちゃん目当てなんだろう」みたいな感じで延々と説教されました。いまにして思うと、あれはれっきとした「いじめ」です(笑)。
あの晩、3つの店で少しずつ徴収された合計8千5百円のことは、決して忘れません。このネタは現在でも反面教師として使わせていただいているので、十分に元は取ったと思います(笑)が、まあ、あれは本当にひどかったです。当然のごとく、その上司はバチがあたって左遷されました。
話を戻しましょう。飲み会でも、雑談の場でも、とにかく先に引き上げるのがスマートな上司です。部下にしてみれば、やはり上司は評価者であり管理者です。突き詰めて考えればアンチな存在なのです。従って、どんなに和気あいあいとしたムードであっても、上司がいる場では気を遣っています。ペルソナ(仮面)を被っています。鎧をまとっています。上司であるあなただって身に覚えがあるはずです。
だからこそ、真っ先に退散するのが部下たちへの気遣いです。さわやかな風と共に立ち去りましょう。部下を近づけすぎず、遠ざけすぎず。この距離感が、良好な上下関係にはとても重要であることを再認識してください。