「コーヒーは発酵食品である」という話
コーヒーって液体になって僕たちの口に運ばれるまでに、意外と多くの過程を経ています。(だから沼にはまる人も多いみたいですが)
その中でも香りに大きく影響を与える「発酵(醗酵)」についてのお話。
発酵とは?
発酵とは、微生物(乳酸菌、麹菌、酵母など)のはたらきによって食物が変化し、人間にとって有益に作用すること。
微生物学上「発酵」と「腐敗」の区別をつけることは難しく、結果として生まれるものが人にとって有用ならば「発酵」、そうでない場合を「腐敗」と呼ぶそうな。
コーヒー豆における発酵
コーヒー豆はおおよそ
果肉をとる
豆の周りの半透明の膜(ミューシレージ)をとる
乾燥させる
脱穀
という手順を経て生豆になるのですが、
この豆の周りの半透明の膜(ミューシレージ)をとるという工程で発酵が用いられています。
この工程では、基本的に以下のような流れで発酵が行われています。
微生物がミューシレージにある糖分(スクロース)とペクチンをエネルギーを変換する
その過程でエステル化合物が生成される
この化合物が香りのもととなってコーヒー豆に付加される
エステル化合物とは、リンゴ、ブドウ、バナナのような香りを作る元となるものです。
つまり、発酵具合をコントロールすることで、エステル化合物の量を調整できるので、香りを調整することができるそう。
発酵をしないとほとんど香りのしない黒い液体ができ、逆にしすぎるとエステル化合物が多くなりすぎると酵素臭がきつくなってしまいます。
コーヒー豆においては、発酵が味を決めていると言っても過言ではないぐらい重要なプロセスだと言われているみたいです。
精製方法の違いによる発酵の違い
先ほどコーヒー豆における発酵の流れを説明しましたが、詳細な原理は豆の精製方法によって大きく異なります。私の理解が追いついた「ウォッシュドプロセス」と「ナチュラルプロセス」での発行の原理を紹介します。ただの文系大学生なのでご指摘があればうれしいです。。
ウォッシュドプロセスによる発酵
ウォッシュドプロセスは水槽につけておくことでミューシレージを取り除きますが、その過程で発酵が行われます。
発酵の主体となるのは水中の常在菌です。
まずペクチン分解菌がミューシレージの中のペクチンを小さな糖類に分解します。
その糖類を栄養源とする乳酸発酵菌や酵母が増殖します。
増殖した乳酸発酵菌や酵母がそれぞれ有機酸(乳酸や酢酸など)とアルコール類を生成します。
それらが結合してエステル化合物が生成されるというプロセスです。
よくわかりませんね。とりあえず
ミューシレージ内のペクチン→糖類→有機酸&アルコール→エステル化合物
という流れです。
エステル化合物が水槽の中で生豆に付着することでフローラルでフルーティーな香りがほのかに生豆に付加されます。
また、生豆にもともと含まれていたブドウ糖などの単糖類が水中微生物によって消費されるため、それらの量が少なくなって味が柔らかくなる傾向もみられます。
pHを測ったり、水の粘土を調べることによって発酵の進み具合を調整しやすいのもウォッシュドプロセルによる発酵の特徴です。
ナチュラルプロセスによる発酵
果実自体が持っている酵素による追熟や発酵とともに、
果実表面に付着している芽胞形成菌や乳酸菌などの細菌による発酵も始まり、その後、酵母や糸状菌(カビ)が増殖するという流れです。
発酵の進行具合は果実の乾燥具合と密接に関係しており、水分が少なくなると、まず細菌や酵母の増殖が低下します。醗酵系の香りの元となる成分は主に細菌や酵母によって生み出されるので、
素早く乾燥させるとあまり香りが出にくくなる
ゆっくり乾燥させるほど発酵感の強い香りになる
というのがナチュラルプロセスによる発酵の特徴です。
また、果実が乾燥していくにつれ、果実の中の成分が濃縮され、一部が生豆に移行することでウォッシュドよりもコクのある濃厚な味わいになります。
むずかしい
と、原理を説明してきましたが、筆者自身もようわからんなーって感じです。
大事なのは発酵をコントロールすることによって味をコントロールできるという部分かと思います。
それぞれの農園で検証が繰り返されて、良い発酵具合を見つけるための試行錯誤が行われいているようです。
話題のアナエロビックファーメンテーション(嫌気性発酵)なども原理が分かればもっと面白くなりそうですね。また気が向いたら書きます。
良いコーヒーライフを。
参考
旦部幸博. コーヒーの科学. 講談社. 2016
https://www.youtube.com/watch?v=5JO0-QymtcE
https://onibuscoffee.com/blogs/news/65