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海を渡る母親たちの覚悟@ケアワーカー送り出し国からのレポート


「日本に行ったら3年間は(母国に)帰ってこれないけれど、それでもいいですか?」

これは外国人ケアワーカーの就職面接でのワンシーンです。雇用主として、この質問が異国で働く彼女たちの「覚悟」を確認するためのものであることは理解できます。


面接会のシーン

介護の仕事は24時間365日、誰かが現場にいなければなりません。施設で忘年会を開いても、全員が揃うことはなく、必ず誰かが業務に従事しています。

人手不足が深刻な介護現場では、外国人ケアワーカーが一時帰国する数週間の空白は、シフト管理上の大きな負担となります。

しかし、私自身が20代の時、アメリカで「外国人ケアワーカー」として働いた経験から、この「3年間帰国できない」というコミットを求める質問に、違和感を覚えました。

さらに、子供を持つ親となった今では、母国に子供を残して何年も離れて暮らす母親たちの気持ちを想像すると、胸が痛みます。

彼女たちに海外で働く理由を尋ねると、多くは「子供の教育費を稼ぐため」と答えます。子供のために、子供と離れて暮らす選択をした彼女たちの覚悟、その尊さを、私も親になって初めて実感しました。

私は現在単身でフィリピンに住んでいます。1年ぶりに帰国した際、5歳の息子が10センチも背が伸びていて驚きました。



家事やケアの腕前はプロ級であっても、だからといって家庭的な人間ではなく、いつも仕事のことばかり考えています。

パンデミックで家族と一緒に過ごしていた時期でさえ、ヘルパーの仕事に没頭しすぎて、妻から「一緒に住んでいるのに長期出張に出ているようだ」と言われたほどです。

そんな仕事人間の私でも、1年ぶりに成長した息子に再会し、フィリピンに戻る際、泣き出す息子の姿を見ると、胸にこみ上げてくるものがありました。そして、立派に子育てをしてくれる妻には感謝の念が尽きません。

もしパンデミックがなければ、家族と共にフィリピンで暮らしていたでしょう。そちらの方が望ましいシナリオでした。

しかし、子を持つ外国人ケアワーカーたちの心情を深く理解するきっかけは、逸していたはずです。

外国人ケアワーカーにとって、頻繁に帰国することは難しく、渡航費も大きな負担です。そのため、雇用契約期間中は日本で仕事に専念し、技術を磨いてお金を貯めるという考え方は正論ですし、一般論としてそのようにアドバイスする人がいても不思議ではありません。

しかし、そうした一般論にとどまらず、親として共感し、彼女たちの気持ちに寄り添えるようになったことは、外国人ケアワーカーを支援する私にとって、大きな財産になりました。

親の愛情に国境はありません。

日本の介護現場と海外から来る「母親たち」がより良い関係を築くためには、彼女たちの「覚悟」に対するリスペクトと、子を想う親への、深い共感力が必要だと感じました。


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