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異国で磨かれる介護の専門性

静岡県の施設に10名の外国人ケアワーカーを送り出すことが決まり、彼らの日本での活躍をサポートするため、出国前トレーニングを計画しています。

限られた時間で、彼らが介護士として成長できる効果的な教育を考えています。

介護は日常生活の支援です。


しかし、各人の「日常」は異なるため、決まったパターンを覚えるだけでは不十分です。食事介助や排泄介助などの基本的な技術も、利用者や施設ごとに大きく異なります。そのため、送り出し国で細かい技術を教えることには限界があります。

介護の難しさの一つは、私たち自身が介護を受ける立場になった経験が(ほとんど)ないということです。経験をしたことがないサービスを他人に行うのは難しいものです。

特に、入浴介助や排泄介助を受ける人の気持ちを理解するのは極めて難しいでしょう。


逆に、「介護を受ける立場を疑似体験すること」こそが、介護士として最大の学びだと考えます。介護を受ける経験を通して、利用者の気持ちに寄り添う力を育むことができるからです。

もちろん、現実的に私たちが裸で入浴介助を受けたり、オムツを交換してもらう経験を積むことは困難です。


その一つの方法は、日常生活で不自由さを感じる経験を積むことだと思います。


例えば、海外で生活することがその一例です。異なる言語や文化に囲まれた場所での生活は、日々の中で多くの不便さやストレスをもたらします。

日本で働く外国人労働者も、同じような経験をすることでしょう。この不便さこそが、介護の疑似体験となり得るのです。

私自身、長い海外生活を通じて多くの不自由な経験をしました。英語がうまく話せず、市役所で冷たく扱われたり、猛暑の中、エアコン修理業者に何度も約束をすっぽかされたりと、数え上げればきりがありません。

自分の日常生活を思い通りにコントロールできないストレスは、非常に大きかったです。

しかし、こうした不自由な経験を通じて、介護施設で生活する利用者さんの気持ちを少しずつ理解できるようになりました。言葉が通じないもどかしさや、些細なことでも他人の助けが必要な無力感を「体験」したからです。

さて、出国前トレーニングでは、介護を受ける人が感じる「日常生活を自分でコントロールできないもどかしさ」について、理解を深めてもらおうと思います。

これから日本で働く彼らは、「労働者」としてだけでなく「生活者」として海を渡ってやってきます。


日本での生活を夢見る候補者たち

日本での生活は、言葉や文化の違いから不自由さやストレスを感じることがあるでしょう。しかし、その経験こそが、介護現場での共感力を育てる貴重な学びであることを理解してほしいと思います。

介護とは、日常生活を支援する仕事です。

日常の不便さを経験すればするほど、より共感力のある介護ができるはずです。

日本は超高齢社会のトップランナーであり、介護士として技術や知識を高めるには最適な環境です。

その一方で、異国で暮らす「生活者」としての不自由さが、さらに介護士の専門性を高める素晴らしい機会になるのです。

「日常生活を自分でコントロールできないもどかしさ」

そのもどかしさを抱えた人に、どう寄り添うか。この問いを候補者全員と共に深めていきたいです。


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