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〝T字型人間〟と〝I字型人間〟

私は昔から〝T字型人間〟に憧れを抱いており、そうなりたいと思って生きてきました。〝T字型人間〟って何?という話ですが、〝T〟の文字の縦の〝I〟の部分が、その人の専門性で、横の〝一〟がそれ以外のスキルや経験やキャリアになります。

つまり、縦の軸のスペシャリストと、横の軸のジェネラリストのバランスがよい人が〝T字型人間〟といい、一つの専門性を突き詰めていく〝I字型人間〟との比較で使われたりもします。

学生時代に読んでいた、漫画「釣りバカ日誌」でこの〝T字型人間〟と〝I字型人間〟の話が出ていて〝なるほど~〟と感心したのを覚えています。

ところで、私の人生のファインプレーの1つは、22歳で自分の人生の軸を定めたことです。それが「介護」でした。介護を軸に専門性を突き詰めていけば、いずれ世界で活躍できると思ったからです。

時は介護保険が始まったばかりの2002年。「介護」と「世界」が結びつかず、誰からも信じてもらえませんでした。18年経って、ようやくですが、「介護」と「世界」が近づいてきました。周りからの見方も少しずつ変わってきたような気がします。日本の介護を世界に届ける活動は、これからが本番です。

【20代は浮き草】

さて、縦の軸を「介護」に定めたものの、なりたい自分像は〝T字型人間〟でした。なので、時間を掛けて横の軸を伸ばしていきました。趣味として取り組んだり、仕事として取り組んだりと様々です。

そんな20代の自分を表現するとしたら〝浮き草〟です。どこにも根をはらず、ゆらゆら動いています。しかし、常に縦の軸となる、根っこを伸ばす作業は続けていました。土地に根を生やせるくらいには伸びいきませんが、水に浮かびながらも少しずつ下へ下へと根を伸ばしていきました。

【寄らば大樹の陰】

浮き草の行きついた先が、なんとフィリピンでした。今は少しずつ土地に根を生やしていってます。まだまだ水面から上には伸びてきていませんが、22歳の頃に比べれば、水面上では葉っぱは広がり、根もだいぶ太くなってきました。

ふと気が付くと、外の世界では変化が起きています。〝人生100年時代〟とか言われています。副業が認められ、ポートフォリオ的なキャリア形成が認知され、組織に依存しない生き方が推奨されるようになってきているではありませんか。

大学時代のアルバイト先で、40代のバイト仲間からよく言われたのが、「社会人になったら〝寄らば大樹の陰〟」でした。ところで、今の時代の〝大樹〟っていったい何でしょうかね。

【孤独は自己対話の時間、介護は自分を見つめ返す仕事】

昨夜、介護関連のZoom懇親会で、介護技能実習生の話になりました。介護保険のない母国ベトナムで、介護のスキルを身に付けても、役に立つのかどうか。また、日本語を必死に学んでも意味があるのかどうか、などが話題に上がりました。ベトナム人介護技能実習生の将来を考えて、日本で介護士として働く意味があるのかどうかという問いかけでした。

それに対して私が思うのは、日本で身に付けた知識やスキルがそのままダイレクトに活かせるような、直接的な時間でキャリアパスが描ける時代はもう終わってしまった。

それよりも、日本に行って、どんな人間的な学びや成長が得られたのか、本当にやりたいことは何かを見つけられたのか、どんな人的ネットワークを形成したのか、など、長く続く人生を、柔軟に生き抜くために必要な人間力や仲間つくりが大切だと思います。

そして、海外から来る20代の若者は、そのことを直感的に理解しているようにも感じます。浮き草稼業の先輩として彼らに言えることは、〝T字型〟の縦の軸はなるべく早く見つけたほうがいい。そのためには、何度も何度も自分との対話が必要になります。

異国で味わう孤独な時間は、自己対話の時間。そして、介護現場で接する人々との出会いは、自分自身を見つめ返す絶好のチャンス。自分はどう生きたいのか。現代版、寄らば大樹の陰の〝大樹〟とは、まさに自分自身ではないでしょうか。

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