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Enjoy Illuminations of Science Education and Culture!!

執筆者名:下平剛司
(JAAS教育対話促進プロジェクト)

 こんにちは~、教育対話促進プロジェクトの下平剛司です。

 気が付けば科学教育Advent Calendar2023も最終日ですね~。ということで最終日らしく、科学教育AdventCalendar2023の主催者として、本企画を通して感じたことを振り返っていこうかなと思います!


「科学教育」は1つじゃない

 今回のアドベントカレンダーを振り返ってみると、「本当に多様な切り口が科学教育にはあるのだ」と思わされます。

 アドベントカレンダーの中では、幼児や小学生のような幼い子ども、中学生や高校生のような多感な年ごろの生徒、大学生や大学院生のような専門性を磨く学生、日常の傍らで科学を楽しむ社会人、身体的・年齢的なハードルを抱えながらも科学文化に親しむ人々など、様々な人に向けた「科学教育」を見ることができます。

 別の角度から見るならば、学校のような公的な場での科学教育もあれば、地域やオンラインでのコミュニティ、音声メディアのような私的な場での科学教育も見て取ることができるでしょう。

 ほかにも、記事を通して描き出されている「科学教育」という営みに関わってきた/いる中での喜びや困難、苦悩、そこに至るまでの人々の積み重ねや軌跡も、それらのストーリーを魅力的に感じさせます。

 改めて、アドベントカレンダーの記事の切り口・トピックの数々は、「科学教育」が持つ豊かさの現れなのだと思わされます。

科学教育を通して "つながる"

「科学教育」という傘のもとに集う

 せっかくの機会なので、ここで『科学教育で繋がる場を創ること』という教育対話促進プロジェクトのビジョンと絡めながら、今回のアドベントカレンダーを位置づけていければと思います。
(「難しい!」って人は読み飛ばしてください笑)

 「科学教育」という言葉は、定義するのがとても難しい言葉です。科学教育の名を関する日本科学教育学会においても、『会員が関心を持つ研究領域が科学教育である』という態度がとられるほどです。
 これには、科学教育という分野・領域では、科学や教育といった営みは時代や社会の変化、学問が発展するのに伴ってその中身や輪郭を変動させていく必要があるという性質が関係していることは間違いないでしょう。

年会論文集の執筆要項の「執筆内容に関する留意事項」には,研究領域について「日本科学教育学会の会員が関心を持つ研究領域の研究である.」と明記されている(日本科学教育学会,2014).これは,本学会の研究領域は,限定されたものではなく,常に会員自身の研究によって決まることを意味する.つまり,「科学教育」の範疇は,会員自身が時代の変化や幅広い学問領域の動向を踏まえて決める.

中山迅(2014): 会員が方向づける日本科学教育学会の研究,科学教育研究, 38-3
https://doi.org/10.14935/jssej.38.167 

 このような流動性・曖昧性を保持しつつも、数々の実践が行われ、学問領域として成立し、今回のアドベントカレンダーでバリエーション豊かな記事が集ったのは、「科学教育」という言葉が『アンブレラターム』となることで蓄積されてきた文化の表れであり、言葉の力そのものでしょう。

想像力の一端を他者にゆだねる

 「科学教育はその関心を持つ人たちによって行われるものの総称だ」という立場を採用するとき、同時に『取りこぼしているものへの可能性』を引き受けることでもあります。
  僕自身、今回のアドベントカレンダーの記事の中でも「そういった実践があるのか」「そういった物の見方があるのか」「そういう感じ方があるのか」というような驚きや気付きがたくさんありました。

 このとき、「何か取りこぼしていることがないか?」というアンテナや感性、想像力を持つことは、科学教育に関わるうえで重要な要素の1つだと思います。

 だからといって「自分はたくさん科学教育に関わってきてたくさん調べたから取りこぼしはない!自分の結論が最も良いものだ!」という態度を取るには、科学や教育という営みの全体像に比べれば、私たち人間の手のひらに収まるものはあまりに小さいでしょう。

 だからこそ、「科学教育」を考えるときの想像力の一端を他者にゆだね、他者の考える "科学教育" と自身の考える "科学教育" を比較し、その違いを受け入れ自身の "科学教育" 像を絶えず更新していく必要があります。

 もしかすると、この態度は「自分の頭で考えて判断できるようになれ!」というようなリテラシー観と一見対立するように思えるかもしれません。しかし、「自分の頭で考える」ことがとても危険であることもまた事実です。

 「科学教育」という複雑で難解な営みを考えていくには、自分で考えるだけでなく、その思考の一端を他者にゆだねる勇気をもち、かといってその手綱を手放さないような態度をとること、そういった態度を肯定する風土や文化を作っていくことが大事だと、改めて思わされました。

「自分たちの手だけで何かができる」という自力思考的な発想を疑い、自分の思考に警戒心を持つこと。「自分の頭で考える」の代わりに私が勧めたいのは、「他人の頭で考えること」です。それは、「他者の想像力を自分に取り入れる」ことだと言い換えられます(後略)。

谷川嘉浩(2022): スマホ自体の哲学 失われた孤独をめぐる冒険

科学教育の輝きとぬくもりを感じよう!

 いろいろと難しいことを書きましたが、「科学教育」という営みや文化を楽しむことがなによりも大事です。

 科学教育の実践をするもよし、科学教育という営みを研究するもよし、科学について語り合うもよし、その楽しみ方は千差万別です。アドベントカレンダーの記事は通して見えてくるのは、その豊かさの一端です。

 それぞれの記事は科学教育の中の一側面を照らし出すだけでなく、人の営みとしてのぬくもりを確かに感じさせてくれるものになっています。それらを少しでも感じていただければ、アドベントカレンダーの企画者冥利につきるというものです。

 最後に、科学教育AdventCalendar2023に寄稿してくださったみなさま、そしてその記事を読んでくださったみなさま、ありがとうございます。
 これからも「科学教育で繋がる場」をともに創っていきましょう!

※本記事は「科学教育 Advent Calendar 2023」の企画に関連した記事です。
※本企画は特定の宗教に関わる宗教活動ではありません。
※紹介いただいた記事の内容がJAASのSNSポリシー教育対話促進プロジェクトnoteの運用ガイドラインに反すると判断した場合は、記事を削除させていただくことがございます。

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