永久磁石はなぜ磁力を生んでいるのか?
磁石はなぜ磁力を生んでいるのでしょう? 電磁石のように巻いたコイルに電流を流すと磁石になるものもありますが、身近にある磁石は電池もなしで、鉄を引き付ける力を持ちます。何もエネルギーを使わないで磁力を放射する永久磁石はフリーエネルギーなのでしょうか?磁石の仕組みを説明しながら、永久磁石の磁力の謎を解説していきます。
磁石は周囲に磁場を作ります。磁場といえば磁石の周りに鉄粉や砂鉄を撒いたときに出来るパターンを思い描くでしょう。しかし、この模様は磁場とは少し異なります。鉄粉は磁場にさらされると磁化します。小さな磁石になります。その両端がN極S極に向かって引かれます。鉄粉のなかで磁場から受ける力のベクトルが合成され、方向が向くのです。鉄粉が磁化されると両隣の鉄粉と反発するので、鉄粉の並びは線のように揃いますが、これは磁場を直接表わしているのではないことを注意してください。
ほかにも磁場を見るには電流を流した銅線の周りに鉄粉を撒く方法があります。
銅線に電流を流した場合も銅線を中心に円形の磁場が現れます。でも、これもよく考えると鉄粉が磁化され、ローレンツ力で磁場に対して直角に鉄粉が揃う様子を見ているのです。
ところで、もっとも単純な磁場はなんでしょうか?一般には原子の中にある電子がコマのように回転するスピンの向きがそろっているからと説明されます。しかし電子が回転したとしても、磁場が発生するかは不明です。磁場は電場の変化が産むのですが、電子のような素粒子が持つ電荷がその場で回転しても電場の変化が生じることはないからです。
もっとも単純な磁場は陽子、電子といった電荷を持つ粒子が加速されたときに生じます。例えば、銅線の中を自由電子が移動するとき、周囲の電子や原子核に影響され、少し動いては戻ったり、曲がったりを繰り返しながら、ゆっくりとプラス極の方に動いていきます。この時の速度は秒速数センチといわれています。自由電子は加速するときだけ磁場を発生させるので、反対向きの磁場も生じますが、全体で見るとプラス極に移動するほうが多いので、片方の磁場が外に出てくることになります。銅線に電流を流したときに生じる磁場は無数の自由電子から放射される磁場の合成であるのです。
荷電粒子が加速されるときに磁場が生じるということは、荷電粒子から放射される電場が磁場の原因であることがわかります。一般に電場はプラスから出てマイナスに収束すると考えられています。
しかし、よく考えるとこの時の電場も曲がっているのではなく、仮にその場所に小さな電荷を置いたときに生じる合成されたベクトルを見ているのです。実際の電場は電荷から直線的に放射されています。
プラスの電場、マイナスの電場は互いに相手の極性を判断しているわけではありません。ただまっすぐにひろがって、途中にあった誘電体に電荷を与えているだけなのです。離れた場所にある誘電体(物質のほとんどは誘電体)に電荷を与える現象を静電誘導と呼びます。静電誘導によって電荷を得た物体は極性を持つため、プラスとマイナスに力を及ぼされ、内部でベクトルが合成されるわけです。
ではどのようにして磁場が発生しているかといえば、軌道電子です。原子核の周囲を回る電子は小さな半径を周回しています。とくに金属原子では外側の電子は比較的周回しやすい状態です。この軌道電子の周回が磁場を生んでいて、無数の軌道電子の周回の向きがそろうと外側に磁場が出てきます。
もう少し詳しく見ていくと、中心の荷電粒子が力を受けると電場の変化が生じます。
クーロン力が周囲に広がっていくとき、非常に速い速度なのですが、粒子が動くことでクーロン力が変化する―密度が変化します。この密度の変化が磁場ではないかと考えられます。クーロン力の変化に伴い、それを受けた物質には静電誘導が連続して生じるため、ローレンツ力が働きます。
電場の変化に対して直角にローレンツ力が働くので、動いた荷電粒子の後方に円形の力の渦が生じます。この方向性を持った力が磁力であると考えられます。
銅線内部では無数の電子が移動して、小さな円形磁場を生じさせていて、そのベクトルの合成が外に現れます。
コイルを巻くと円形磁場が引き伸ばされ、N極とS極が現れます。永久磁石の場合も同じで、細かな磁区から生じるベクトルの総和が外に出てきます。
話を原子に戻すと、鉄などの金属では外側にある軌道電子が比較的動きやすい状態です。この部分の電子は周囲から電磁波を受け、その磁場の影響で小さな半径で回転しています。周回転することで熱―電磁波を再発生させているのです。この電子の周回転の方向がある程度そろうことで、外に磁場が現れるのです。無数にある電子の周回転する向きがベクトルの総和として出てくるわけです。コイルの仕組みと同じです。
磁場を発生させている電子は、じつは熱を発生させている電子と同じです。磁石の温度を上げると磁場がなくなります。また磁性体に磁場を加えて、急激に取り去ると温度が下がる磁気冷凍効果があります。温度を低下させても磁石の磁場は減少します。このことからも磁場を発生させている電子の周回は、熱の原因となる電磁波を発生させていることがわかります。最近では光を当てて温度を下げる光学冷却という現象も発見されました。
つまり、永久磁石は周囲の熱を受け、軌道電子が周回することで電磁波の再発生、熱の放射を行っていて、電子の周回する向きが同じであるため物質全体では磁場が発生しているということなのです。永久磁石の原因は熱です。
このように電荷から磁場が生まれる仕組みを理解すると地球磁場の発生が、内部にある溶けた鉄ではないことがわかります。
衛星軌道上から重力の微小な変化を調べるには衛星の軌道がわずかに変化する様子を観測しています。これは電離層の中を飛んでいる人工衛星が帯電することで、地表の電荷の変化を捉えていると見ることが出来ます。重力異常は地表の岩石が帯びている電荷の変化なのです。
大量の岩石が蓄えている電荷が、自転により加速度を得ると磁場が発生します。加速度をくわえられた方向に直角に磁場の向きが現れます。上の図は地球の電荷が磁場を発生させている様子がわかります。
上の図は惑星の自転方向と磁場の方向を現した図です。土星、木星はガス惑星で大気が高速で回転しています。プラスの電荷が回転しているせいで、磁場が発生しているのです。地球の岩石に含まれる電子はマイナスなので、自転方向が同じでも磁場の向きは逆になっています。このことからも地球磁場のダイナモ理論は間違っていることがわかります。
このほかにも太陽の多極磁気、2極から4極に変化する原因なども推測できるでしょう。火星の磁場がまばらな原因も岩石の帯電で説明できるはずです。永久磁石が磁場を長時間発生できているのは周囲の熱からエネルギーを受けているためです。この仕組みは宇宙での磁場を考えるうえでも役に立ちます。
タイトル画像は木星の磁場ーブルーホール
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