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虎毛山塊と禿岳東面の沢

虎毛山塊は皆瀬川流域の山で、凝灰岩のスラブを特徴とする渓相は栗駒山とはずいぶん違います。イメージは『恐竜ランド』、凝灰岩の大スラブの沢床には赤い亀甲模様があったり、臼ヶ岳の麓にはウッシーが出てきそうな沼沢沼もあります。『日本百名谷』で全国的に有名になった万滝もこの流域です。

須金岳の北側も虎毛山塊といって良いですが、南側は禿岳東面と同じ江合川流域です。いずれも鬼首からアプローチするので仙台からのアクセスが良く、よく登られているバリエーションルートです。豊富な積雪による雪食地形による急峻な谷なので、滝は巻けずに直登する必要があり緊張します。



皆瀬川流域

虎毛山/皆瀬川~虎毛沢

1/25,000地形図では赤湯又沢から虎毛沢と名前が変わります。赤湯又沢からはナメがきれいで、新人を連れてゆくには良い沢です。上部二股は右俣に入り、小さな滝を越えて登山道に出ます。複数パーティの場合は大湯から入って車を回収できますが、小人数の場合は悩ましいかもしれません。

皆瀬川~虎毛沢概念図 (1990.6月)
虎毛沢 (1990.6月)

虎毛山/春川~ダイレクトクロアール

春川のアプローチから虎毛山に伸びる明瞭なルンゼが見えます。春川の亀甲摸様の赤いナメ床は、六角形の中に滑巻まであり、なかなか凝っています。出合は滝を3つまとめて巻いた先ですが、藪っぽくて貧相なので、天気が悪いとわかりにくいかもしれません。入口の60mナメ滝が格好いいです。その後はガスっていたのであまり印象はなく、最後は虎毛山の湿原の一角にでました。

春川~ダイレクトクロワール概念図 (1988.7月)
ダイレクトクロワール・60mナメ滝 (1988.7月)
春川から正面にダイレクトクロワール(1991.8月)

虎毛山/春川本谷

春川本谷のメインは多段100mといわれている大滝です。下部20m滝は巻いて行き、上部はロープを付けて2ピッチでした。手がかりは豊富ですが高度感があります。滝の上は特に問題もなく、湿原を繋いで灌木帯の藪漕ぎで虎毛山避難小屋にでます。

虎毛山/春川本谷 (1991.8月)
春川・沢床の亀甲模様 (1991.8月)
春川本谷 (1991.8月)
春川本谷 (1991.8月)

最初に訪れたのは1996年8月の宮城県北部地震の前だったので、春川中間部の沢がきれいな状態でした。その後、地震の後に再度行くと、三滝の前で左岸の山体が地滑りを起こして堰止湖ができていたり、釜が埋まっていました。上部はあまり変化がなかったので、どうも震源地はこのへんだったかと推測しています。

虎毛山/春川本谷概念図 (1991.10月)
春川本谷 (1991.10月)

虎毛山/春川~万滝沢

この沢は虎毛山を代表する沢になっていますが、『沢登りの本』(岩崎元朗, 白水社,1983)で紹介されていたからだと思います。自分では登れる気がしませんでしたが、怖いもの見たさで精鋭パーティについて行きました。

万滝沢・赤いゴルジュ入口 (1993.10月)

赤いゴルジュは中間の滝が登れそうになく高巻きしましたが、この巻きも悪いです。結局、前衛滝が越せずに敗退し延々と須金岳稜線まで高巻きすることになりましたが、そう悪い巻きではありません。滝の落口からは下を見ると怖いの一言です。上部はのんびりしたもので、少し藪を漕いで湿原に到達し、春川本谷と同じく虎毛山避難小屋に入りました。

虎毛山/春川~万滝沢概念図 (1993.10月)
万滝沢・前衛滝と万滝 (1993.10月)

虎毛山/役内川流域/赤倉沢

虎毛山の登山道は赤倉沢沿いに暫く行ってから尾根に取り付きます。沢をそのまま詰めれば虎毛山に登れますが、最初の15m滝が巻けないので、直登できないと敗退することになります。あまり興味はなかったのですが、リベンジマッチに付き合って登った沢です。

虎毛山/赤倉沢概念図 (1999.9月)
堰堤を越えて最初の15m滝 (1990.9月)

赤倉沢にはもう一つトリックがあって、水線を入れ間違えると延々と藪漕ぎをするハメになります。また、上部で登山道に最接近したところで沢を離れるのがポイントです。記録を見るとこの沢の評価が分かれるのはこのせいです。

赤倉沢上部のコンターライン

軽井沢山/皆瀬川~大滝沢

皆瀬川の旧森林軌道跡に出合がある沢で、75m大滝がポイントです。大滝は中段に斜めに走るバンドまでは群段状で、その先は完全なシャワー・クライミングになります。特に落ち口付近が嫌らしく、40mロープでは少し足りません。たいした藪漕ぎもなく尾根に上がりますが、右岸の尾根を下り損ねて小鳥谷沢を下りました。

皆瀬川~大滝沢概念図 (1988.6月)
大滝沢・大滝75m (1988.6月)

吹突岳/皆瀬川~小滝沢

吹突岳は東面に雪崩によって浸食された顕著な露岩帯を持ち、冬の虎毛山や須金岳から見るとひときわ目立った存在です。夏道の無いこの山への登路として小滝沢があり、一つ下流の大滝沢に対する呼称でしょう。昭文社の山と高原地図「栗駒・早池峰」には鳥谷林道へ続く夏道が吹突岳の山腹を通って記載されています。1/25,000地形図では、高松岳~小安岳間にあるピークの分岐から石神山に続く道ですが、今も残っているかは不明です。

ゴルジュ帯は手がかりが豊富な滝が多く、巻いたのは一つだけでした。ロープを出したのは詰めの10m涸滝で時間がかかりました。尾根の藪漕ぎで嫌になる頃、登山道に出たのはラッキーでした。

吹突岳・皆瀬川~小滝沢概念図 (1990.9月)
小滝沢 (1990.9月)

皆瀬川・沼沢~臼ヶ岳

沼沢沼がある沼沢については以下のno+eに書きました。

皆瀬川~猿子倉沢

猿子(ましこ)倉沢は温泉で有名な赤湯又沢の隣の沢で、ここも温泉の噴気があります。最初に登ったときは入口の小さな釜が嫌で延々高巻きましたが、2度目は釜を越えて25m滝を小さく巻きました。右俣、左俣いずれも石神山の登山道に出ました。

皆瀬川~猿子倉沢概念図 (1992.8月)
猿子倉沢 (1992.8月)

高松岳/赤湯又沢

赤湯又沢は誰が広めたのか、露天風呂がある沢として全国的に有名になったようです。最初に訪れたときは赤土の露岩や泥の水たまりに湯気が湧いている程度でした。温泉目的なら交通の便を考えて、湯ノ又温泉の方から登って往復したほうが良いようです。

高松岳/赤湯又沢概念図 (1990.8月)
高松岳避難小屋 (1990.8月)

禿岳~須金岳周辺

須金岳/杉の森沢

須金岳周辺は鉱山で栄えたと言われています。この杉の森沢にも石組みや試掘した後が残っていて、上部に巻き道があったりします。最初のゴルジュ入口の2段6m滝は無理やり越えないと高巻きが面倒です。その後は釜を泳いだりするので夏向きの沢です。最後まで行かずに水沢森へ逃げると藪漕ぎなしで登山道に出ます。

須金岳・杉の森沢概念図 (1990.7月)
杉の森沢 (1990.7月)

禿岳・火ノ沢

火ノ沢は遅くまで雪渓が残るのでその名前が付いたと聞いたことがあります。屈曲部には8月だというのにまだスノーブリッジが残っていて高巻きしました。この先の滝は巻けないので全て直登します。上部の滝はヌルヌルして嫌ですが、残置スリングに助けられて登った記憶があります。

禿岳・不動ノ沢と火ノ沢概念図 (1996.8月)

禿岳・不動ノ沢

不動沢は火ノ沢よりは格段に険悪なことで知られています。確実に登れる人がいないと難しい沢です。不動大滝60mがポイントですが、その手前でも難しい滝がありました。大滝は左岸を登るのが正解のようですが、雨のなか中間で左にトラバースしてしまい、右岸を登ったのでかなり難しかったです。

不動沢・不動大滝上部 (1997.9月)

禿岳・小倉ノ沢

禿岳東面では一番左側、花立峠寄りにある沢です。沢の入り口が分かりにくく、3度目でようやく本流を登りました。80mと言われる滝はロープを出しましたが、難しくはなかったと思います。

小倉ノ沢・80m滝上部 (1998.7月)

鬼首・軍沢川~軍沢岳

軍沢川の黒滝は以前から知っていましたが、アプローチが長すぎて登る機会がありませんでした。鬼首道路が開通して、トンネル入り口から降りられるので、一泊の予定で出かけました。
黒滝は周辺に巻道を期待していたが、それらしいものはなく、定石どおり右岸の尾根から巻きました。上から見ると滝の上で右俣と左俣が合流して大きなナメ滝になっていて、予定していた右俣には出られません。遡行記録がどれも左俣を辿っている訳です。鉄砲平に泊まり、翌日はそのまま左俣を詰めて三県境を経て軍沢岳に向かいました。頂上付近は少し濃い藪ですが、全体としてはそれ程厳しくはなく、北尾根を下って秋田県側の鬼首道路の上に出ました。

鬼首・軍沢川~軍沢岳 (2015.7月)
軍沢川のスノーブリッジ (2015.7月)
軍沢川・黒滝 (2015.7月)
軍沢川・黒滝上部 (2015.7月)



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