雪崩ビーコンパークの製作
1. BCA Beacon Training Park
2021年3月28日、BCAの「Beacon Training Park」と同等の機器を作れないかと依頼がありました。参考のためコントローラと子機(Beacon送信機)を少しの間お借りすることにしました。親機は単1電池4本、子機に至っては単1電池を6本も搭載しているのですごく重いです。1シーズン雪の中に埋めておくのでこのような電源なのかもしれません。また、筐体もすごく頑丈なのはプローブで小突き回されるためでしょう(※ベニヤ板が付くそうですが…)。コントローラの方はスイッチ類が防水仕様で使い勝手はすごく良さそうです。
2. XBeeモジュールを使った試作
無線モジュールは資料が豊富で比較的安価(JPY2,900)だったXBeeを使うことにしましたが、周波数が2.4GHzなので積雪中の減衰が気がかりです。この頃は距離の伸びるLoRaモジュール(920MHz)が人気でしたが、価格が倍以上するので止めました。
その他、雪崩講習会で使用するので、せいぜい2~3日埋めて動作すれば良いので、電池は単三アルカリ電池にしました。プローブヒット検出は歩数計などに使う加速度センサーを使いました。
2021年12月23日、試作機の詳細は省略しますが、スキー場まで行くのは(寒いし…)面倒なので、七北田川沿いの畑に行ってきました。見通し距離なら400~500メートルは安定していました。でもビニールハウスに隠れるとやっぱり厳しいです。
2022年4月に月山でテストを行い、XBeeの中継器を入れて湿雪で50~60cmは使えるとこが分かりました。冬の雪崩講習会に投入しましたが、中継ルーターが必要なので課題が残ります。
3. LoRaモジュールを使った試作
3.1 LoRa版試作機の製作
秋月電子で920MHzのLoRaモジュール(E220)を比較的安価(JPY1,980)で扱っているので購入しました。これは日本向けに技適を取得した中国製モジュールで、オリジナルのARDUINO用ライブラリを日本仕様に従って修正して、家から100m程離れて動作はOKでした。周波数帯や出力(20mW)はヒトココと同じなので期待が持てます。
2023年2月3日、なんとかWORモードのスリープ動作も上手くいったので子機2台の試作基板を発注しました。
2023年3月17日、組み上がったLoRa版のビーコンパークをいつもの七北田川そばの畑に持って行ってテストしてみました。XBee版は400m程度でしたが、こちらは地面に置いて700m以上飛びました。ビニールハウスの障害物も問題ありませんでした。
3.2 宮城蔵王で実地試験
2023年3月27日、すみかわスキー場でビーコンパークの検証をしてきました。あとみ坂でやるつもりが強風でスキー場はクローズ、歩いて行っても爆風予想なので徒歩圏内の斜面を使いました。昨日の雨でビチャビチャかと思ったら意外に乾いていました。最大1.5m程度埋めたビーコンでXBeeモジュール(2.4GHz/+8dBm)とLoRaモジュール(920MHz/+13dBm)を比較しました。前者は中継ルーター併用でOK、後者は直接通信で楽勝でした。
3.3 雪崩講習会向けビーコンパークの製作
ビーコンパークの子機用に古い雪崩ビーコンを送って貰いました。Tracker DTSが3台でMAMMUT Barryvoxも3台、AB1500が2台集まりました。いずれも単三アルカリ3本で動くようにしました。
2023年4月27日、4月になってからずっと作業していたビーコンパークが出来ました。当分半田ごては持ちたくないです。
LoRaモジュールはXBeeと入れ替えてもいいように、Arduino互換のシールドで製作しました。
改造したArduinoライブラリは以下に置いています。基板はPCBWayに登録していますので、README.mdを参照してください。
子機はXBee版と同じサイズのケースを使いましたが、基板の互換性はありません。
2023年4月28日、組み上がった親機と子機を持って、いつもの七北田川そばの畑に持って行ってテストしてみました。アンテナを内蔵したので少し条件が変わったかもしれないですが、地面に直置きの子機以外はあまり影響はなかったみたいです。
その後、2024年2月に栂池高原で行われた全国雪崩講習会で実証テストを行い、問題なく使用できるとお墨付き(?)を頂きました。