雪崩ビーコン送信機の試作
DDS(Direct Digital Synthesizer)モジュールを使って1sec周期の間欠発振器を制作し、457kHzを中心に周波数をHz単位で変化させることができます。 この発振器を使って、市販の雪崩ビーコンの周波数特性を解析することが出来ます。
1. 試作機の構成
試作にはPSoCというアナログ回路を内蔵したワンチップマイコンを使用しました。 『ARM PSoCで作るMyスペシャル・マイコン』を参考にFreeRTOSで動かしています。
あまり難しいところはないですが、DDSの出力をPSoCに取り込んで、デジタル出力(+5V)したものを2SC1815と2SA1015のSEPP(Single Ended Push-Pull)でドライブし、LPFを通してバーアンテナに接続しています。 バーアンテナはラジオ少年の通販が購入した15mmφ×18cmの大型フェライトを使用しています。 単に手元にあったので使ってみたかった・・・ということでコイルを巻いたのですが、フェライトが磁気飽和してしまうのか、市販ビーコンより飛びがいいということはないようです。
※回路図に興味がある方はご覧ください。
2. 受信特性の測定
このビーコン送信機を使って送信周波数を10Hz単位に変えて、市販されている雪崩ビーコンの周波数特性の距離表示を測ることができます。 緑色の"PULSE Barryvox"はかなり急峻なフィルターが使われ、且つ受信範囲内の距離表示は一定です。 同じ世代の青色の"Tracker3"も急峻なフィルター特性ですが、受信範囲内は平坦ではありません。 これはデジタル・フィルターの次数が少ないせいだと思われます。 デジタル・ビーコンとして初めて開発された赤色の"Tracker DTS"の特性はかなりブロードです。 おそらく高周波増幅器で使っているセラミック・フィルターの特性がそのまま現れていて、デジタル・フィルターは使っていないと思われます。
3. DDSのキャリブレーション
DDSモジュールはeBayで中国の業者から購入するとJPY1,000以下で購入できます。 40MHzまで使えるAD9850を搭載したモジュール(実質10MHz?)は125MHzの水晶振動子を使っています。 比較的誤差も少ないようですがGPSで生成した周波数カンウンタで測ると457KHzで数Hzのズレがありました。
PSoC5LPにはEPROMが内蔵されているので、ここに補正値を保存すれば、あとは立ち上がり時に自動で補正するように出来ます。 キャリブレーションのためにGPSで生成した基準10MHzを入力し2000msのゲートを作ります。 このゲートをDDSで発生した10MHでカウントして周波数(10MHz+/-Δ)を計測します。
このDDSモジュールの125MHz水晶発振器はTCXOではないので、安定するまで時間がかかります。 電源を入れて10分程待つと10MHzに対してΔ=+83.00Hzで安定しました。 これは+8.3ppmなので、+/-50ppm程度の安価な水晶発振器を使っているようです。 水晶発振器の周波数(125MHz)をCLKIN、DDSの周波数設定値をWとすると、DDSの出力周波数 fOUT = (W × CLKIN ) / 2^32 です。 WをDDSに設定するとき、DDSの出力周波数をf×(1-83.00/10,000,000)と設定すればfOUTの補正が出来ます。
EPROMには偏差Δ"+83.00"をテキストで書き込んでおき、起動時に10MHzの時の偏差として読み出します。 送信時の周波数はロータリーエンコーダー1クリックで10kHzにしました。