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プラートの聖母のベルト
Sacra Cintola di Prato
聖母マリアは天使たちに導かれ被昇天したので、地上には聖遺体は残っていない。しかし聖母マリアが生前身に付けていたベール、衣服など数々の聖遺物が地上に残されている。イタリア中部のプラート(Prato)に聖母マリアのベルトがある。9月8日の聖母マリア聖誕の記念日にはヨーロッパ各国、各地の聖母マリアに献堂された教会、聖遺物のある教会で祝祭事が営まれる。
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聖母マリアが被昇天した際に、聖トーマスが墳墓を訪れ、被昇天を疑っていたところ、被昇天の聖母マリアが身に付けていたベルトを外し、空中から聖トーマスに渡したという。そのベルトはエルサレムで長いこと聖職たちにより保管され、代々受け継がれていたが、12世紀にエルサレムに巡礼したプラートの商人ミケーレが譲り受け、プラートに持ち帰った。
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プラートの商人ミケーレは「聖なるベルト」をプラートに持ち帰った後、
長い間「黙して語らず」秘蔵していたが、死の直前に真実を明らかにしてプラートの聖ステファノ教会(現在の大聖堂)に寄贈した。14世紀末に聖母マリアのベルトを顕示するために大聖堂の入り口近くに聖母マリアのベルトの礼拝堂が築かれた。しかし当時は聖遺物の盗難が頻繁にあり、通常、礼拝堂は盗難除けのために厚い鉄格子で厳重に防備されていた。
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プラートには、すでに6世紀頃から教会があったとされるが、現在の教会は10世紀に聖ステファヌスに献堂した教会を基盤に12世紀から15世紀にかけて修改築が行われた。
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9月8日10時から聖母マリア聖誕の特別ミサが大司教の司式で行われる。市長、市議会議長、商工会議所会頭などプラートのお歴々が参加する中、荘厳な特別ミサが執り行われる。
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聖母マリアのベルトは繊細なヤギの毛の繊維で織られ、金襴緞子で縁取られている。ベルトは緑色の布で造られ金刺繍とされているが長年の経年変化で黒ずんでいる。特製の聖遺物容器に入れられ、祝祭事以外は聖母マリア礼拝堂の祭壇に顕示されている。
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特別ミサで聖なるベルトは信者に公開された。コロナの時期のみ大聖堂内でプラート市の重鎮と限られた信者のみに。
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通常の教会建築では主祭壇のある後陣にあたる部分に、この大聖堂はトランセプト(袖廊)があり、主祭壇にあたる部分に主礼拝堂、その左右に二つの礼拝堂が、計五つの礼拝堂がある。主礼拝堂には15世紀の修道士で画家であったフラ・フィリッポ・リッピにより聖ステファノと洗礼者聖ヨハネの生涯がフレスコ画で描かれている。修道士フィリッポ・リッピの傑作として知られ、この壁画を観賞に教会を訪れる人も多い。
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通年だと聖母マリアのベルトは、大聖堂正面右角に造られた説教台から信者たちに公開されていた。説教台は15世紀半ばのルネサンス彫刻界の巨匠ドナッテロの傑作として芸術的価値が高い。説教台が大聖堂外部に築かれている例は数少ない。この大聖堂では説教台は聖堂内にもあるので、聖母マリアのベルト礼拝堂に近い教会正面角に、大聖堂前に集まる信者たちに聖なるベルトを顕示するために築かれたのだろう。
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太鼓隊を先頭にファンファーレを鳴らしながら、聖なるベルトの御開帳を知らせるためにプラート市内をパレードする。