聖遺物に祈るホテル
DOMUS SESSORIANA ドムス・セソリアーナ
─ イタリア・ローマ ─
私は、美術、宗教関連の取材が多いので、イタリアのローマをしばしば訪れる。その度に何処に泊まろうか?とホテル探しも楽しみの一つだ。
今回の取材はヨーロッパ最大の巡礼地としてのローマ。ローマの七大巡礼教会の一つ、エルサレムの聖十字架教会に付設するドムス・セソリアーナに宿泊することにした。
ドムス・セソリアーナは、ブランド・ブティックなどが軒を連ねるスペイン広場界隈から離れてはいるものの、ラテラノの聖ヨハネ大聖堂、古代ローマ帝国最大の遺跡、ローマを取り囲んでいた城塞からは徒歩1、2分。歴史散歩が大好きな私には、これ以上の立地条件はない。
ローマのフィウミチーノ空港からレオナルド・エクスプレスで終着駅のテルミニ駅に到着、駅前広場からバス14番に乗りホテルに向かった。ホテルに近いローマ帝国時代の城塞に築かれたローマの門の一つ、ポルタ・マッジョーレで下車して徒歩5分。ホテルといっても巡礼教会付設なので、すぐに分かった。
エルサレムの聖十字架教会は、コンスタンティヌス大帝の母で、4世紀半ばにエルサレムで数多くの聖遺物を発掘した聖ヘレナの邸宅の上に築かれたという。
聖ヘレナは、キリスト教の信仰を認めた大帝の母で、大帝が首都をローマからコンスタンティノープルに遷都した際に、新首都に引っ越した。彼女は齢80歳を過ぎて、コンスタンティノープルから聖地に向かい、聖十字架の木片を始め、茨の冠、聖なる釘など数多くの聖遺物を発掘した猛女で聖人だ。聖ヘレナの家が現在の聖十字架教会の地にあったか?否か?の真偽のほどは別にして、少なくともこの地には4世紀頃に邸宅があったようだ。
宿泊するホテルは教会を挟んで右側に本館、左側に別館がある総数80室の中級ホテルだった。教会の右側にある入口を入ると大きな絵画があるエントランスとレセプション・ホールとなる。
アサインされていた部屋は別館で、本館から別館に行くには教会のエントランス・ホールを横切らなければならない。厭が応にも襟を正し、緊張して厳かな空間を抜けると旧修道院を改装したホテルの客室となる。修道院を改装したホテルなので質素で簡素。余計な飾り物がないインテリアは好感が持てる。
元修道院のホテルには珍しくエアコンがギンギンに効いていて、温度差アレルギーの私には食傷気味だったが、その不満を吹き飛ばすような景観が翌朝の朝食時に待っていた。
建物最高階のテラス・レストランが眺望が、これぞローマ!と感動した。
眼下にローマ帝国時代のローマの城壁、その向こうにはヴァチカンの四大バジリカの一つ、ラテラノの聖ヨハネ大聖堂が見える。ローマで何度か宿泊したが、これだけの眺望を有するホテルは他にないのではないだろうか?
料金は一部屋70ユーロ(約1万円:取材当時)でローマにしては比較的廉価。高級ホテルの施設、サービスに慣れた旅人には不向きだが、料金優先で、一図に、祈り、泊まるを目的としたカトリック信者には最適なホテルだ。
Domus Sessoriana
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