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かのように『悪は存在しない』

 それにしてもラストシーンには驚かされた。記憶の限りではイエジー・スコリモフスキ監督の『アンナと過ごした4日間』(2008年)以来の予想を裏切る驚愕のラストシーンだった。

 ところでそのラストシーンなのであるが、既にnoteにおいても多く論じられており全てを読んでいる訳ではないので、屋上屋を架すようなものだが簡単に私見を記しておきたい。

 主人公の巧が保育園に迎えに行くことを忘れてしまった結果、娘の花は行方不明になってしまう。ようやく巧は草原にいる花を見つけるのだが、花は親子の鹿と対峙していた。鹿は傷を負っているのであるが、ここで疑問が生じる。もしも猟銃で撃たれたのであるならば、銃弾は鹿の体を貫通するか体内に残っているためにあのように立ってはいられないと思う。つまり鹿の傷は、親子で一緒にいることに嫉妬した花が投げた石で負傷したと推察する。
 おそらく花の心情を察することができた巧は、鹿に近づこうとした花を制止しようとした高橋を羽交い絞めにする。当時巧の家にいたのは高橋の部下の黛である(手を負傷しただけの黛が花の捜索に関わっていないというのも不思議ではある)。巧は花を家に連れて帰って疑似ではあるにしろ「親子三人」で過ごそうと決心し、それには高橋が邪魔だったのである。花の状態がよく分からないし、高橋に一言断るのも自身のキャラに合わないために、「最善」の方法が高橋を地面にねじ伏せて失神させることだったのであろう。

 もはや濱口竜介監督はどのように撮っても駄作にはならないんだろうね。