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『海のトリトン』と城みちる

 『アニメ大国建国紀 1963➤1973』(中川右介著 集英社文庫 2023.10.25)を読んで、子供の頃にぼーっと見ていた日本の創成期のアニメーションは手塚治虫を筆頭とする実作者たちと共に西崎義展や高橋茂人などの立派な香具師の存在がなければ成り立たなかったことがよく分かる。

 個人的に最も強烈な印象を受けたアニメーションが「原作:手塚治虫」「プロデューサー:西崎義展」「演出:富野喜幸」による『海のトリトン』のラストシーンで、このアニメを見たことで正義と悪の区別がつかなくなった日本の子供は意外と多いような気がする。

 ところで城みちるのデビュー曲「イルカにのった少年」の元ネタはソフィア・ローレン主演の『島の女(Boy on a Dolphin)』(1957年)らしい。確かに元ネタは『島の女』ではあろうが、『海のトリトン』が放送されたのは1972年4月1日から9月30日までで、城みちるのデビュー曲「イルカにのった少年」がリリースされたのが1973年12月30日なのだから、「イルカにのった少年」が売れた要因として『海のトリトン』の「地ならし」が少なからず貢献したのではないかと個人的には思っている。