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保護猫Alto(アルト)がFIPになって寛解した件

我が家の可愛い猫、Alto(アルト)は保護猫カフェ「鎌倉ねこの間」を経由し、4か月の時にお迎えをしました。私たち夫婦にとって猫を家族として迎えることは人生で初めての経験でわからないことばかり。猫について教えてくれたのはうちの可愛いAltoでした。Altoと出会えたこと、FIPが寛解したこと、全てに感謝しています。

FIPについて調べると絶望的な気持ちになってしまう記事ばかりが目につきます。FIPになった当時、もっと情報があればと強く感じました。現在、子猫を飼っている、または猫コロナウィルス(FCoV抗体)が高い1歳前後の猫ちゃんを飼っている飼い主さん達に役に立つことを願い、注意点、FIPになるまでの経緯、などについて記事にしようと思いました。

妻がアルト日誌を毎日つけ続けてくれたので、妻と一緒に以下の通りまとめてみました。

FIP(猫伝染性腹膜炎)について

FIP(猫伝染性腹膜炎)は多くは1歳未満の子猫で発症、致死率はほぼ100%であり、完治を望むことは難しいようです。生存率は極めて低く、発症すると平均生存期間は僅か9日間と言われています。またFIPには、①ウェットタイプ、②ドライタイプ、③混合タイプがあり、Altoは①ウェットタイプでした。FIPが治るということを「寛解(かんかい)」と言うそうで、再発のリスクもあることから「完治」とは表現されないようです。

清潔な環境(家全体も猫のトイレも)、適度な運動と遊び、適切な食事(総合栄養食)でも猫コロナウイルス陽性の猫はFIPになる可能性があります。我が家の猫Altoは生後6か月で猫コロナウイルス陽性判定。FIPになるのは1歳まで、劣悪な環境で発症1割未満だと信じ込んでいました。『1歳を過ぎたし、過ごしやすい環境を整えているし、AltoがFIPになるわけがない』と、愚かにも思っていました。しかし、Altoは1歳1か月でFIPウェットタイプと診断。幸い初期段階で判明し、治療を開始したため、84日のムティアン投薬を完了し、投薬終了から3か月が経過し、猫コロナウイルス・FIPともに陰性、無事に寛解と診断していただきました。2023年4月5日時点で1歳7か月。


猫コロナウイルス陽性の場合に気を付けること

AltoのFIP前後でおかしいなと思っていた症状をいくつか記載しておきます。何かおかしいと思ったらすぐに動物病院に行くことをおすすめします。またその際に腹部のエコーなども見てもらった方が良いように感じました。またFIP発症前後で体調が急変してしまうため、後悔しないよう、何よりもまず猫ちゃんを優先してあげた方がいいと思います。うちのAltoの場合、思い返すと気になる症状は以下でした。初めての猫で何が正しいのかわからない状態でしたが、それでも早く気づけた方だったように思います。

  • 下痢が慢性的に続く(1日に複数回下痢を含む便)

  • 便の匂いが臭い(ツンと鼻をつく匂い)

  • 口臭がする、毛繕いした後生臭い(猫ちゃんは基本的に「超」良い匂い)

  • 若い猫なのに遊びにあまり興味を示さない、駆け回らない

  • 食欲低下(一般的な体重に対する食事量・カロリーが低い)

  • 若い猫なのに体重減少した後、食べる量が増えていないにも関わらず体重が増加する(腹水)

  • ある日から突然グーグー鳴きながらフミフミ(体調が悪い自分を落ち着かせているかもしれない)

  • 呼吸がすぐに上がる(腹水で呼吸が苦しくなる)

  • お腹にハリがある(腹水が溜まると、ゴムボールのようにお腹が張る)


Alto誕生からFIP治療薬投薬、寛解までの時系列 (2021年8月〜2023年4月)

2021年8月14日:誕生(静岡県田方郡函南町生まれ)、4頭兄弟でお母さん猫と一緒に保護。保護主さんとお母さん猫の愛情をいっぱい受けて育ち、離乳後10月4日からプリモス動物病院(神奈川県足柄下郡湯河原町)で保護

2021年10月:猫エイズ、白血病、猫ヘルペスウイルス、猫クラジミア、マイコプラズマ・フェリス、気管支敗血症菌、ジアルジア、コクシジウム、ノミ・ダニ・耳ダニすべて陰性、消化管内寄生虫 駆除済み、5種ワクチン一回目接種

2021年11月8日:ねこの間に譲渡

2021年12月20日:予防接種 フェリバックL−3接種

2021年12月21日:中宮家に譲渡。生後4か月。体重2.4kg

2022年2月14日:去勢手術。生後6か月。体重3.6kg

2022年2月19日:猫コロナウイルス 陽性。生後6か月。体重3.7kg

2022年3月10日:猫コロナウイルス 陽性。体重3.7kg

2022年6月6日:下痢のため動物病院を受診、糞便検査(浮遊検査)を行うも異常なし。ディアバスターとビオイムバスターを処方され経過観察。体重4.6kg

2022年7月5日:食欲と体重が落ちたため動物病院を受診するも、異常なしで経過観察。体重4.3kg。38.9℃平熱

↓↓FIPの疑いあり

2022年10月1日:下痢のため動物病院を受診するも、ディアバスターとビオイムバスターを処方され経過観察。体重4.5kg

2022年10月9日:腹部の膨らみを不審に思い受診、腹水と診断。FIPの可能性が極めて高いと宣告。1歳1か月。体重4.6kg。39℃

2022年10月10日:血液検査(猫伝染性腹膜炎ウイルスFeline infectious peritonitis virus(FIPV)パネル)の結果受領、FIPと診断。体重4.6kg

2022年10月11日:ブルーム動物病院が休診日のため受診できず、地域の動物病院で猫インターフェロン製剤と抗菌剤の皮下注射を投与してもらう。体重4.6kg。40.4℃

2022年10月12日:ブルーム動物病院(神奈川県横浜市鶴見区)を受診、FIPの初期ウェットタイプと診断。40℃。Xraphcom(MUTIAN) 450mg/日で投薬治療開始。体重4.72Kg。TBIL(総ビリルビン)0.3mg/dL(ブルーム動物病院、片山先生執筆のFIP論文より、TBILの数値が高くないことで生存の確率が高い可能性について言及されていた)糞便検査及びα1AG検査(2000以上:基準範囲0-736μg/mL)により猫コロナウイルス、FIP、陽性

FIP投薬時のスケジュール (Mutian84日、それ以外は途中で終了)

2022年10月20日:ブルーム動物病院受診2回目。MUTIAN投薬9日目。体重4.02kg(腹水がおしっこで抜けて▲0.7kg)。体重減少のためXraphcom(MUTIAN) 400mg/日に投薬量変更。

2022年11月4日:体重が4.25kgに増加したため、Xraphcom(MUTIAN) 450mg/日に投薬量変更。

2022年11月9日:ブルーム動物病院受診3回目。MUTIAN投薬29日目。体重4.3kg。糞便検査及びα1AG検査(285:基準範囲0-736 μg/mL)により猫コロナウイルス、FIP、陰性

2022年11月28日:ブルーム動物病院受診4回目。下痢のため診察。整腸剤(ベラチン、ベクタス20)で経過観察。体重4.52kg

2022年12月22日:ブルーム動物病院受診5回目。体重4.52kg。糞便検査及びα1AG検査(264:基準範囲0-736 μg/mL)により猫コロナウイルス、FIP、陰性

2022年1月3日:Xraphcom(MUTIAN)投薬最終日。84日の投薬完了。体重4.7kg。

2023年2月2日:ブルーム動物病院受診6回目。体重5.0kg。糞便検査及びα1AG検査(255:基準範囲0-736 μg/mL)により猫コロナウイルス、FIP、陰性

2023年2月12日:ブルーム動物病院受診7回目。下痢のため受診。整腸剤(フラジール250mg、ディアバスター)で経緯観察。体重4.96kg

2023年4月1日:ブルーム動物病院受診8回目。体重5.6kg。投薬終了から3か月。寛解かどうかの検査。併せて下痢パネル(遺伝子検査)を実施。 

2023年4月5日:FIP寛解!


Alto FIP前後の観察のメモ(主に2022年9月〜10月)


見返してみると、2022年9月15日に4.1kgまで体重が落ち、そこから徐々に体重が増加したため、この日から腹水が出ていたのではないかと考えられる。4.1kg去勢済み猫の適正摂取カロリー242kcalに対し、9月の平均摂取カロリーは185kcal。食欲不振、下痢の頻度増加が見られた。

2022年>

9月10日:緩い便、赤いジャム状のもの。4.25kg, 172kcal

9月14日:下痢。191kcal

9月17日:下痢。この頃から、夜就寝時、自分のベッドを踏み踏みグーグー言うようになった。思い返すと具合が悪いためにこの行為をしていたのではないかと思われる。踏み踏みグーグーは10月8日まで毎晩続いた。188kcal

9月21日:下痢。203kcal

9月22日 :下痢。172kcal

9月29日:緩い便。139kcal

9月30日:赤いジャム状のもの。116kcal

10月1日:下痢、便の臭いがキツイ。動物病院受診、整腸剤で経過観察。胃腸を休めるために無理に食べさせないようにという指示。4.5kg, 93kcal

10月2日:かなり緩い便と良好な便、1日2回。159kcal

10月4日:1日2回、便の臭いがキツイ。156kcal

10月5日:硬い部分と緩い部分、臭いがキツイ。80kcal

10月8日:嘔吐、ソファに登ろうとしてジャンプできず、弾き返されてしまう。この頃から起きた後に必ずしていた伸びが見られない。4.6kg, 74kcal

10月9日:息切れが見られる。便は1日3回、今まで登り下り出来ていたソファやベットの移動が大変そうで、各所に踏み台を設置。くしゃみ10回。4.6kg, 124kcal

10月10日:FIP診断、この頃から歯ぎしりのガリガリ音を立てるようになった。113kcal

10月11日:舌の色が薄いピンク(健康な時は濃いピンク)。苦しそう。動物病院で繋ぎ治療で注射をしてもらうと、午後はよく眠り、食欲もあり、一時と比べると元気そう。この時のつなぎ治療が良かったのではないかと感じている。4.6kg, 94kcal,40.4℃

10月12日:ブルーム動物病院初受診、ムティアン投薬開始。薬の副反応として耳折れ、脱毛、肝臓の数値悪化、ひげが抜けるなどがある可能性があると言われる。幸いAltoはどの副反応もなかった。呼吸が苦しそうにフーフーしているときがあった。ガリガリ音(この日で最後)。夜、羽で遊ぶ。4.72kg, 160kcal, 40℃

*以下、○×はムティアンの投薬成功と失敗について

10月13日:家でのムティアン投薬開始。8時〜10時の2時間の絶食。10時に投薬器で投薬。11時まで1時間の絶食。200mgが2錠、50mgが1錠の計3錠。××××〇××〇×〇。ムティアンに加えて、ウルソデオキシコール(肝臓疾患)、プレドニン(ステロイド、炎症、自己免疫症)、イグザレルト(血栓)、クロピドグレル(抗血小板剤、血栓)、アミノウォーカー(筋肉づくりをサポート)、ミラタズ(食欲増進の塗布薬)6種類の投薬開始。歯茎が白い。4.5kg, 197kcal

10月14日:×〇〇〇。歯茎が白い。投薬3日目にして、お腹が凹んできた(腹水がなくなってきた)ように見える。水をよく飲み、よく眠る。毛繕いと寝起きの伸びが戻った。足をお腹の下に入れて眠ることができた。尻尾がピンとしていてご機嫌だった。多量のおしっこ。4.3kg, 219kcal

10月15日:×〇〇〇。毛繕いでグーグー。多量のおしっこ。4.2kg, 286kcal

10月16日:×〇〇〇。色々なことに興味を示すようになった。4.15kg, 332kcal

10月17日:××〇〇××〇。ごろんごろんしてご機嫌。ヤモリを発見して追う!撫でたらグーグー。73cmある脱臭機に一飛び(垂直飛び)4.25kg, 287kcal

10月18日:〇〇×〇。舌は濃いピンク色。4.1kg, 349kcal

10月20日:ブルーム動物病院2回目受診。体重減少のためXraphcom(MUTIAN) 400mg/日に投薬量変更。200mg錠を2錠。この日でアミノウォーカーとミラタズ投薬終了。4.02kg, 452kcal(10/12 4.72kg → 10/20 4.02kg、8日間で▲0.7kg、▲14.8%)

10月21日:〇×〇。この日でウルソ投薬終了。ダイニングテーブルに一飛び。4.05kg, 323kcal

10月22日:〇〇。この日でプレドニン終了。4.05kg, 272kcal

10月24日:〇〇。蹴りぐるみ(ペンギン)でキッキング。真夜中の大運動会が復活。夏以来。この日からほとんど毎晩駆け回ったり、野生になり大運動会をしている。4.1kg, 242kcal

10月27日:×〇〇。ケージの上へ一飛び。羽とレーザーポインタでよく遊ぶ。4.2kg, 248kcal、

2023年>

1月3日:吐き戻しや緩めの便などはあったが、大きな異常や再発の兆しなく、2023年1月3日をもって84日間の投薬完了。ただの1度も薬の吐き戻しをせず、投薬を嫌がらず、毎日3時間の絶食を我慢したAlto,とっても偉かったね。


FIP治療するために行ったこと

FIP診断前後にGoogleで検索した方針は以下です。現住所や治療方法から、いくつかの条件で合致したのが神奈川県にあるブルーム動物病院でした。ムティアンは未承認薬かつ高額治療のため、すぐに治療のための意思決定ができないことがあります。色々と調べてみたところ、おそらく迷っている間に状態が悪化して治療できずに亡くなるパターンもあるようでした。

  • FIP治療に強い神奈川県にある動物病院を探した

  • FIPに関する論文を探した →ブルーム動物病院の片山先生が見つかった

  • FIP治療に使われている薬を探した →Mutian(ムティアン)


おわりに

FIP治療でご尽力いただいたブルーム動物病院の片山先生、植村先生、動物看護師・医療スタッフの皆様に心から感謝しています。片山先生は親身に相談に乗ってくださり、またスタッフの皆さんもいつも丁寧な対応していただけたので、安心してAltoを任せることができました。私たちが寛解の診察時も次々とFIPになった猫ちゃん達が診察に来ていたようで、FIP治療のために駆け込む猫飼いさん達が多かったように思います。

FIP闘病を頑張ったAltoからは、命の重さ、いかに毎日の変わらない日々が大切なのかを教えてもらいました。そんなAltoと縁を繋いでくれた保護猫カフェの鎌倉ねこの間にもとても感謝をしています。引き続きAltoのことをケアしつつ、楽しく毎日を過ごし、時期が来たらAltoにもお友達を迎えてあげることを計画しています。

もしFIPについて知りたいことがあれば、私たち夫婦のしていること、経験したこと、苦労したことしかお話しできませんが、情報共有させて頂きますのでご連絡ください。


参考用リンク

MUTIAN協力動物病院

ブルーム動物病院

片山先生論文(英語)

論文(日本語)はPDFなので、こちらのリンクから


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