【TFT】スタッツ効率から見るアイテムビルド考察

 はじめまして、k5です。
 今回はTFTことチームファイトタクティクスの考察というか攻略記事。

 さて、タクティシャン諸兄におかれましてはこのゲームにおけるアイテムの重要性は重々ご承知のことと思います。アーティファクトや紋章を除いた合成アイテムだけでも64種ものアイテムが存在し、どのユニットにどの3つを持たせるかの選択肢は幅広い。それでいて、その選択はチームの強さに大きく影響し、ときには構成や☆3の存在以上に順位に影響します。

 しかし、実際に持たせるアイテムを選ぶ際はなんとなくで決めてしまう方も多いのではないでしょうか。「これが強い気がする」「統計上、これがよく使われてる」「前はこれで勝てた」などなど…。それが間違いというわけではありませんが、私はもう少し客観的な指標を持っておきたい。
 というわけで、アイテムの強さを数字の面からフラットに評価してみよう、というのが今回の趣旨です。数値化が困難な特殊効果や仮想敵を必要とする議論はいったん排除し、装備したユニットの基本的なステータスがどれだけ上昇するのかだけを分析します。アイテムの強さ自体の把握はもちろん、分析の過程でステータスの評価基準やアイテムの代替性への理解を深め、ランダム要素の多い実戦でより早く的確な判断をくだす手がかりとすることも目的の一つです。



前提

 上述の通り、本記事ではアイテムのみの、数値化できる性能を評価します。逆に言えば、それ以外の要素は一切考慮せず存在しないものとして話を進めます。具体的には以下です。
・敵ユニットの性能全般
・装備ユニットのスキル性能
・他の味方ユニットの存在
・構成効果やオーグメント、その他の特殊効果
見ての通り、かなりモデルを単純化します。このあたりを設定するとその分だけ話が恣意的になってしまうのでやむをえません。
 結果的に、本記事の議論はあくまで机上論です。一つの指針ではありますが、絶対的な正解ではないことをご理解ください。むしろ上リストの要素を考慮するとアイテムの優先順位は入れ替わることが多いでしょう。ただ、きちんと内容を理解すると上の要素がどのように効いてくるかも多少予測は立つようになります。
 また、本記事は執筆時のパッチ14.21を基準としています。たまに基礎的な仕様が変更されることもあるゲームですのでご注意ください。


タンク編

 ここから本題。まずはタンクに持たせるアイテムについて考えます。
 今回はタンクの最も重要な役割、「より長く生き残ること」に主眼をおきます。つまりどんな装備が一番堅いのか、もっと言えばガーゴイルストーンプレートとワーモグアーマーはどっちを優先するべきか、という話です。

理屈と計算過程

 この議論をするために、体力と防御を評価する手段として「実質体力」という概念を考えます。数学の話がメンドい方は下のグラフまで飛ばしてください。
 まず、TFTにおけるダメージ計算式は本家のLeague of Legendsと同様の、以下のものが使われています。

$$
\begin{align*}
実際に受けるダメージ=元ダメージ \times \frac{100}{100+防御}
\end{align*}
$$

これの$${実際に受けるダメージ}$$に体力を代入して、元ダメージについて解けば、その体力と防御を持つユニットを倒すために必要な元ダメージが計算できます。

$$
\begin{align*}
元ダメージ=体力 \times (1+\tfrac{防御}{100})
\end{align*}
$$

この右辺から計算される「ユニットを倒しきるために必要な元ダメージ」を実質体力と呼ぶことにします。右辺を読み解くと、たとえば防御40なら$${体力 \times (1+0.4)}$$となるように、防御が体力を割合上昇させるような式になっているのがわかります。防御1点は体力1%と同等の堅さを持っていることになり、実質体力は「防御をすべて体力に変換した場合のユニット体力」とも言い換えられます。実質体力3000のユニットは、防御力0・体力3000のユニットと同じだけ攻撃を受けられるということです。
まあこの辺の話はLoLと同じなんで、詳しく知りたい方はLoLの考察を探してください。

 というわけで、タンクアイテムの目的は実質体力、$${体力 \times (1+\tfrac{防御}{100})}$$を上げることです。体力と防御が掛け算の関係にあるため、体力が高いほど防御の価値が、防御が高いほど体力の価値が上がるといえます。ではその均衡点、最も効率の良い耐久ステータスはどの辺なのかを、タンクアイテム二大巨頭であるガーゴイルストーンプレートとワーモグアーマーを例に見てみましょう。

 ガーゴイルは体力を100、両防御を25上げます。さらに効果で自分を狙う敵1人につき防御が10上昇するので、装備時の実質体力は

$$
\begin{align*}
実質体力_ガ=(体力+100) \times (1+\tfrac{(防御+25+α)}{100})
\end{align*}
$$

です。一方、ワーモグは体力を600上げたうえで12%増加させます。
なお、体力は加算系を全部足した後で割合系をまとめて適用する仕様です(検証済)。

$$
\begin{align*}
実質体力_ワ=1.12 \times (体力+600) \times (1+\tfrac{防御}{100})
\end{align*}
$$

これらの式を$${実質体力_ガ=実質体力_ワ}$$として解けば、ガーゴイルとワーモグが等価値になるステータスが求められます。逆に、そのステータスからずれているほど、片方の価値が高いとも言える。

ガーゴイルとワーモグはどっちが強いのか

 ごちゃごちゃ言いましたが、結論はこれです。

ガーゴイル vs ワーモグ

 ユニットの体力と防御を見て、図の線より左上側にいたらガーゴイル有利、右下側にいたらワーモグ有利となります。敵の数によってガーゴイルの強さが変わるのでややこしいですが、普通に前衛と後衛を並べるパーティのメインタンクであれば3体くらいで想定していいんじゃないでしょうか。
 たとえば、3コストタンクのモルデカイザーは防御50で体力は☆に応じて850/1530/2754と増えていきます。上の図で防御50の軸を見ていくと、☆2の体力1530であれば敵5体とかを想定しない限りワーモグ有利、☆3になると体力が2754まで増えてガーゴイルが有利になってきます。実際にはモルデはスキルでシールドを獲得して体力が+400くらいあるので、☆3ならほぼガーゴイル一択と言ってもいいでしょう。
 実際のステータスと図を見比べると、ほとんどのタンクが☆2まではワーモグ有利になることに気づくと思います。序盤~中盤は敵数も少ないため、さらにワーモグ優勢です。構成効果などに多い防御上昇や体力の割合上昇も体力の固定加算が大きいワーモグと相性が良く、序盤戦では圧倒的に強い防具と言えます。逆に、タンクが☆3まで育つ場合はそれだけでかなり体力の基礎値が上がるためガーゴイルが強く、終盤になってからワーモグを作っても序盤ほどの影響力は望めません。上位確定後の1位争いなんかではそこまで役に立たないということです。
 また、普通はいずれか片方を持った時点でラインの逆側に振れるため、☆2でもワーモグ2枚よりはワーモグガーゴイル1枚ずつの方が強いです。他のアイテムや構成効果との兼ね合いを考える場合でも、なるべく両方が上がるように配分するといいでしょう。

他のタンクアイテムについて

 上記2つ以外のタンクアイテムはいずれも基礎性能や汎用性で劣る部分があり、それを効果や物理魔法の偏りで補う構造なため単純比較が困難です。極論、相手が全員攻撃キャリーで殴る構成だったらブランブルベストが最強アイテムですからね。ただ、防御が高いユニットや☆2では体力を、体力が高いユニットや☆3では防御を盛った方がいいというのは基本原則です。サンファイアケープや揺るがぬ心は体力の固定値加算が大きいので前者、ドラゴンクロウやブランブルベストは防御に優れるので後者の運用。なお、体力をn%増やす系の効果は体力加算とも防御加算とも別の3枠目に当たります。素材の観点ではチェインベストをキープしておくと、サンファイアにして体力上げるかガーゴイルにして防御上げるか後から選べるので便利だったり。
 また、現パッチのモルデやヴェックスのように魔力依存でシールドを獲得するユニットは魔力を上げることで間接的に体力を盛れるので、クラウンガードやアイオニックスパークといった魔力防具を体力枠の代わりに採用することができます。特にメイジ構成におけるヴェックスなんかは2連キャストによる膨大なシールドが主力になるため、表記上は低体力ながらワーモグよりも魔力防具2種の方が採用率も勝率も高いです。


攻撃キャリー編

 記事のノリがわかったところで次は攻撃キャリー、つまり通常攻撃のダメージ効率のことを考えていきましょう。
 スキルのことを考えない今回において、おそらく最も実態に近い議論ができる項目でもあります。通常攻撃がダメージの大半を占めるので、その効率を突き詰めることがキャリーとしては一番正解に近いはず。

理屈と計算過程

 通常攻撃の時間あたりダメージ効率、dpsには4つのステータスが影響します。攻撃力、攻撃速度、クリティカル発生率、クリティカルダメージです。このうち、クリティカルダメージを上げられるアイテムはなぜかずっと誤植が直らないインフィニティエッジとジュエルガントレットしかないので、クリティカルダメージはとりあえず140%で固定して話を進めます。
 通常攻撃による1秒間のダメージ期待値は以下のように計算できます。

$$
\begin{align*}
秒間ダメージ&=攻撃速度 \times 攻撃力 \times (クリ率\times1.4+非クリ率) \\
秒間ダメージ&=攻撃速度 \times 攻撃力 \times (1+クリ率\times0.4)
\end{align*}
$$

 クリティカルの処理だけ少し面倒ですが、書いてあることはシンプルですね。二行目は非クリティカル率が$${1-クリティカル率}$$であることを利用して整理しただけです。
 ここで、それぞれのステータスをユニット自身の数値とアイテムなどによる増加率の形に書き換えます。

$$
\begin{align*}
秒間ダメージ&=S_0(1+S_a)\times D_0(1+D_a) \times (1+(0.25+C_a)\times0.4)
\end{align*}
$$

 Sが攻撃速度、Dが攻撃力、Cがクリティカル率で、0付きは元々の数値、a付きは増加率です。また、元のクリティカル率は現状25%で統一されているため、直接代入してあります。増加率が見やすいよう整理しましょう。

$$
\begin{align*}
秒間ダメージ&=S_0(1+S_a)\times D_0(1+D_a) \times (1.1+C_a\times0.4) \\
&=S_0D_0(1+S_a)(1+D_a) \times 1.1(1+\tfrac{4}{11}C_a) \\
&=1.1S_0D_0(1+S_a)(1+D_a)(1+\tfrac{4}{11}C_a) 
\end{align*}
$$

というわけで、この式を使えばアイテムや特殊効果を含んだ正確なdpsが算出できます。頭の$${1.1S_0D_0}$$はユニット自身のステータスで決まる元dpsで、アイテムや効果では変動しません。なのでそれより後の部分、$${(1+S_a)(1+D_a)(1+\tfrac{4}{11}C_a)}$$を最大化することが今回の目的です。

 ここまで真面目に読んだ方は薄々気づいていると思いますが、ユニット自身の攻撃速度と攻撃力の配分はアイテムの優先順位に一切影響しません。「攻撃力は割合上昇だから高攻撃力のやつに…」とか思いがちですが、普通に誤解です。dpsの視点から言えば、攻撃力+50%は常にdpsを50%上げる効果であって、その内訳が高攻撃力だろうが高速連射だろうが一緒です。攻撃力だけ見るのではなく、$${S_0D_0=攻撃速度\times攻撃力}$$が高いユニットに持たせるのが効果的、というのが正しい理解。攻撃アイテムはタンクよりキャリーに持たせようねという、まあ当たり前の話です。ちなみに、みんな大好きOP.GGのチャンピオン個別ページには本記事の$${S_0D_0}$$にあたる数値がDPSとして記載されています。参考までに。
 また、上の式を見てわかるもう一つの事実に、クリティカルの弱さがあります。$${S_a}$$と$${D_a}$$が同様に式にあらわれてdpsを上げるのに対し、$${C_a}$$は$${\tfrac{4}{11}}$$倍でしか効いてきません。たとえば素材アイテムのスパーリンググローブはクリティカル率+20%ですが、$${0.2\times\tfrac{4}{11}=0.07}$$なので、攻撃速度+10%のリカーブボウや攻撃力+10%のB.F.ソードにdps寄与で負けています。計算上、3つのステータスはある程度均等に上げた方がいいのですが、クリティカル率の影響が4割弱に抑えられることは知っておくといいでしょう。

1個だけ持つとしたら

 正直この章は$${(1+S_a)(1+D_a)(1+\tfrac{4}{11}C_a)}$$を上げようね、でほぼ完全に結論が出ているのでもうあんまり言うことはないです。ただ、実際にアイテムビルドを作るときの目安というか、どうすると効率良く上がるのかの方針は示しておきましょう。わかりやすい例として、まず各種攻撃アイテムを1個だけ持ったときにdpsが何倍になるのか実際に計算してみます。

1個だけ持つときのdps上昇率

 計算して並べるとこうなります。黄色枠は特殊効果発動時の数値です。
 まずデスブレードが相当に強いことがわかります。これはもう純粋に加算する値が高いからですね。クイックシルバーの左にギュッと並んでいる3つはいずれも$${S_a+D_a}$$が35%のアイテムで、デスブレードは当然50%なのでその大きさ(とダメージ増加)でこの差をつけています。インフィニティエッジが2番手に食い込むのも単純に攻撃力35%クリティカル35%の数字がすごいからです。流石にこれだけ数値が高いとクリティカルの寄与が小さかろうがあんまり関係ないです。
 次に、先述の合計35%組の比較はいろいろ興味深い点があります。まず計算式からわかる基礎理論として、$${S_a+D_a+\tfrac{4}{11}C_a}$$が同じ場合、3つそれぞれが上がる構成の方がdpsはより高くなります。そのため実は、攻撃速度だけを35%加算するレッドバフよりも、攻撃力25%と攻撃速度10%に分かれているジャイアントスレイヤーやルナーンハリケーンの方がスタッツだけならわずかに強い。そのわずかな差を赤バフが3%のダメージ増加によって逆転している、というのが上の図です。ダメージ増加は盛る手段が少ないので評価の仕方に困るのですが、$${S_a,D_a,\tfrac{4}{11}C_a}$$が高くなって効率が悪化してきたところで軽くつまんでおくと効率よく火力が伸びます。
 これらの影響を踏まえて、個人的に評価しているアイテムがラストウィスパーです。$${S_a+D_a=35\%}$$をしっかり確保しつつほぼ均等に配分し、その上でクリティカル率まで持つ理想的なキャリーアイテムだと思います。特殊効果も手堅い。ビルド全体で考えればインフィニティで攻撃力上げて、クイックで速度上げて、ルナーンでバランスとって…みたいな理想形に入る武器ではないかもしれませんが、そう毎度都合よく理想ビルドが作れるわけでもなく、攻撃力だけで3枠埋まったりするとまあまあ悲惨です。その点、ウィスパーは単体で完結したスペックのおかげで、他のアイテムや効果がどうなってようがそれなりに安定してDPSを上げてくれます。考えるのが面倒になった時にもとりあえずで使える、タクティシャンに優しい武器です。もっとウィスパー使え。

いろいろ例外:グインソーレイジブレード

 ここまでの議論で、賢明なタクティシャン諸兄は強い違和感を抱いたことでしょう。採用率トップ、勝率トップのキャリーアイテムが一度も登場していないことに。そう、グインソーレイジブレードです。上の図ではあれがないせいで攻撃速度系はクイックシルバーが最強ということになってしまった(実際、クイックはファイターよりキャリーが持つ方が強いと思います)。
 しかしこのグインソーという武器、性能が特殊すぎて本記事の前提ではどうしても上手く評価できないんですよね。基本的にクイックシルバーよりは強いと思いますが。仕方ないのでいくつか定性的な話だけ書いておきます。

  • 前衛が長持ちするほど強い
    通常攻撃をするたびに強くなるので、戦闘時間が長引くほど効果的です。要するにタンクが堅い方が強い。

  • 攻撃力とクリティカル率が上がっているほど強い
    結局、攻撃速度増加$${S_a}$$だけを大幅に上げるアイテムなので、他のアイテムは$${D_a}$$と$${C_a}$$に分散してる方が強いことになります。

  • 攻撃速度が高いほど強かったり弱かったりする
    評価をあきらめた主な要因。最終的な攻撃速度が高いほどより早く強化されていきますが、だからと言って他アイテムも攻撃速度系にすると$${S_a}$$に偏って上がることになり効率が悪化していきます。このプラスとマイナスがどの辺でバランスするかについても戦闘時間による部分が大きくて何とも言えない。とりあえず、ユニット自身の素の攻撃速度$${S_0}$$が高いほど相性が良いのは確かです。


魔力キャスター編

 スキルは無視するといいましたが、一応キャスターについても考察します。といってもスキル効果はユニットによって千差万別なので、実際に上げるべきステータスはしっかり効果を読んで決めるべきでしょう。今まで以上に机上論ですが、一つのモデルとして魔力だけに依存する単発攻撃スキルのdpsを考えてみます。

理屈と計算過程

 先に明言しておきますが、スキルdpsの話は厳密性が落ちます。そもそも、スキルによるダメージは通常攻撃のように直線的ではなく、発動の瞬間に一気にダメージを稼いでマナチャージ中はダメージ0になる階段状のグラフを描くためです。その階段を無理やり坂道にならすようにして議論をしているので、実戦との乖離はキャリー編よりずっと大きい。

 式も複雑なので一つずつ行きましょう。まず通常攻撃1発で10マナ溜まるので、1秒あたりのマナチャージ量は攻撃速度を$${S}$$とすると$${10\times S}$$です。これが最大マナの値に達するたびにスキルが1回発動するので、1秒あたりのキャスト回数は最大マナを$${M}$$として$${マナチャージ量\div最大マナ=\tfrac{10S}{M}}$$となります(この値は普通1未満です。1秒あたり0.5キャストとは2秒に1回キャストするという意味)。
 スキル1発のダメージはスキルの魔力反映率$${X}$$とユニットの魔力$${P}$$の積です。ここに秒間キャスト数をかければ1秒あたりのスキルダメージ、スキルdpsが疑似的に求められます。

$$
\begin{align*}
スキルdps&=X \times P \times \tfrac{10S}{M} 
\end{align*}
$$

キャリー編と同様、初期値と増加値の形に書き換えます。魔力は攻撃力と違って固定値加算であることに注意してください。また、魔力初期値は全ユニットが100で統一されているため、途中で代入します。

$$
\begin{align*}
スキルdps&=X \times P \times \tfrac{10S}{M}  \\
&= X \times (P_0+P_a) \times \tfrac{10}{M}S_0(1+S_a) \\
&= S_0X\tfrac{10}{M}(100+P_a)(1+S_a) \\
&= 100S_0X \tfrac{10}{M}(1+ \tfrac{P_a}{100})(1+S_a)
\end{align*}
$$

 やや複雑な式ですが、ゆっくり見ればそれほど難しいことは書いてありません。$${100S_0X}$$はユニット自身の能力によるdps、$${\tfrac{10}{M}}$$は通常攻撃ごとのマナチャージ効率、$${(1+ \tfrac{P_a}{100})(1+S_a)}$$が増加値による寄与です。この式をもとに各アイテムの強さを見ていきましょう。

ショウジンの矛とブルーバフはどっちが強いのか

 これは結構気になっている人も多いのではないでしょうか。初期マナを増やすだけでなく、恒常的にマナチャージの効率を上げて複数回キャストを助ける2種のどちらを使うべきか。この2つはいずれも魔力増加は15で攻撃速度やスキルの倍率には影響しないため、上式のほとんど部分を無視して比較できます。具体的には$${\tfrac{10}{M}}$$の上がり方だけ気にすればいい。

$$
\begin{align*}
\tfrac{10+5}{M} &= \tfrac{10}{M-10} \\
M&=30
\end{align*}
$$

見ての通り最大マナが30で同等の効率、より大きければショウジン有利で小さければ青バフ有利です。30ピッタリなら、初期マナの増加量とダメージ増加がある分青バフの方が強いですね。直感に反するかもしれませんが、この2つの比較において攻撃速度は関係ありません。2つとも攻撃1回あたりのチャージ効率を上げるアイテムなので、秒間攻撃回数は両方に同等に効きます。
 もう一つのチャージアイテムとしてアダプティブヘルムの後衛効果があります。正確に評価すると式に要素を増やすことになるので複雑ですが、マナチャージについていえば1秒間に3.3マナ溜まります。一方キャスターの攻撃速度は初期値で0.7以上あり、これにショウジンを持たせると1秒間に3.5マナ追加で得ていることになります。攻撃速度を上げればさらにショウジンが有利になっていくため、チャージ効率を求める場合は多少無理してでもショウジンを狙ったほうがいいでしょう。

キャリーと同じ図を出してみる

 せっかくなので、キャリー編で出したdps表と同じものをキャスターアイテムでも作ってみます。

1個だけ持つときのdps上昇率

他の寄与含めまとめて1.5倍にするショウジンがめちゃくちゃ強い。最大マナ30以下のときのブルーバフはこれより強いはずなので、持つだけで火力が2倍ぐらいになります。キャスターにとってマナ加速系はそれだけ重要度が高いということです。それ以外はキャリーと同様の傾向になっており、素のガードブレーカーとスタティックシヴは$${P_a}$$と$${S_a}$$の合計が同値ですが配分が均等に近いシヴが誤差レベルで強くなっています。
 ラバドンデスキャップとジュエルガントレットはよく比較されるスキル火力アイテムですが、今回の条件だとラバドンがダメージ増加によって上回る結果となりました。といっても、ラバドンは魔力特化で他アイテムをかなり選ぶのに対し、ジュエルはクリティカル付与という形で他枠の候補を増やす効果があるので一概にラバドンが強いとは言えません。ブーストした上で4位に甘んじたガードブレイカーなんかも、魔力・速度・クリティカルを兼ね備える武器なのでジュエルと一緒に積んでようやく真価を発揮できるところがあります。ただし、クリティカルの性質上ただでさえ直線的でないスキルダメージがさらにブレブレになる点は注意してください。上の図はあくまで期待値です。
 また、こうして並べるといわゆるキャスターアイテムは魔力増加ばかりに偏っていることがわかります。上で出した式からすれば$${\frac{P_a}{100}}$$と$${S_a}$$は均等になるよう上げた方がいいので、グインソーなどの攻撃速度アイテムも重要です。

初期マナ増加について

 上の図は初期マナ増加を一切考慮していません。最初のキャストの早さが上がるわけですが、どれだけ早くなるか(dps表のどこに位置するか)は元の最大マナと初期マナ次第ですし、1回目のキャストが早いことがどれだけ強いかもスキルの内容や戦況によるからです。
 アイテムで言うとナッシャートゥースの採用は初期マナと大きな関係があります。ファーストキャストが早ければナッシャーの発動が早くなり、結果的に攻撃速度が上がっている合計時間が伸びてdpsへの寄与が大きくなります。効果量自体は最強クラスなので、なるべく早く発動するようにしましょう。
 ちなみに、初期マナを増やすアイテムはほとんど+15です。例外はプロテクターの誓いとブルーバフ。プロテクターが30で青バフが20ですが、青バフは最大マナ10低下があるのでファーストキャストの早さはプロテクターと同じです。それこそナッシャートゥースを使う場合などはブルーバフはかなり有力な選択肢といえるでしょう。


まとめ

 最後に、今回導出した式をまとめておきます。

$$
\begin{align*}
タンクの堅さ&=体力 \times (1+\tfrac{防御}{100}) \\
キャリーの強さ&=1.1S_0D_0(1+S_a)(1+D_a)(1+\tfrac{4}{11}C_a) \\
キャスターの強さ&=100S_0X \tfrac{10}{M}(1+ \tfrac{P_a}{100})(1+S_a)
\end{align*}
$$

これを覚えてても別に大して良いことはないんですが、体力と防御は2200-50くらいでバランスする、攻撃力と攻撃速度とクリティカルは3:3:1くらい、魔力と攻撃速度は1:1に配分する、ショウジンと青バフはクソ強くて最大マナで使い分け、くらいは実戦でも考えられます。

 あと、本記事でファイターに触れなかったのは相手依存要素の塊だからです。今回のような方法論で彼らを論ずるのは無理があると思います。とはいえ、耐久についてはタンク編、火力についてはキャリー編を流用すればそこまで的外れにはならないはずです。3枠で上手に上げていきましょう。気持ちタンク寄りの方が強いように感じます。

 計算や理論に対する誤りの指摘や質問がありましたら、コメントにお願いします。必要に応じて随時訂正・追記はしていくつもりです。

 それでは、よきタクティシャンライフを。

続編を公開しました→https://note.com/j_l4_6/n/n42b10b9bd4d0


2024/11/04-公開
2024/11/05-各種ダメージ増加を入れ忘れていたのでデータ修正・関連する考察テキスト変更、ジャイスレとガーブレの強化状態を追加、ジュエル追加
2025/02/07-続編を公開

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