飛び魚
この世のものと思えない美しいものを見て感動した。何年経っても、そのイメージは忘れない。もう一度見たいとも思っている。写真、映像フィルムなどで飛魚を見かけることはあるけど、全く別物だ。本物は写真にも映像フィルムにも撮れないことがわかった。
釣船は日の出直前に出港する。スタート地点に集合し、時間とともに出発する。大体1時間から1時間半くらいの距離を走る。その間は仕掛けの点検、装備の点検、体調の異常がないか確認したり様々な用事がある。簡単な朝食を取ることもある。
通常はキャビン内で、乗り合った人達と情報交換をしたり仲良くなったりしておく。釣りの現場では様々なトラブルが発生する。仕掛けが隣の人と絡まったり(おまつり)、魚がかかった時に竿を邪魔にならないところに動かして頂く、トイレに行くときにそばを通して頂くとか、様々な助け合いが必要になる。これらのことを気持ちよくして頂く為に仲良くなっておくことは大事なことだ。
時間が余り、天気が良い時は船縁に出ることもある。船縁に座り、今日の釣りをイメージしていく。その時ダークグレーの水面を見ながらぼんやり考え事をしていたら、この世の中でこれ以上なく美しいと思われる現象に出会わせた。朝日がのぼり水面もグレーからマリンブルーに変化し始めた頃、船縁に魚の群れがきた。船と並走している。そのうち加速していた魚が水中で胸びれを開くと空中に飛び出す。飛魚だった。何匹もあちらこちらで飛び出す。昔学校では「飛魚は海面をたたき飛び上がるとグライダーのように滑空して羽ばたかない。」と教わった。
目の前の飛魚たちは水中で加速すると、水中で胸びれを開き浮力を得る。そのままの勢いで空中に飛び出し、朝日に向かって高速で羽ばたいている。何度も何度も確認した。水中から水面近くになって飛魚が胸びれを開くその瞬間の色調が見事な輝き、煌くエメラルドグリーンだった。暗い色調の海の中で光り輝いている。叶うことならもう一度見て感動したい。
アゴ出汁のうどんを食べたいなどと不埒なことを考えて。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?