きのこ
昨日ハツタケが採れたと連絡が入った。福岡ではよく採れて、父と一緒に山に行ったものだ。出汁がよく出るキノコで鍋物にこれがないと気の抜けた味になる。岐阜ではあまり珍重されない様子でたくさんいただいた。九州ではきのこを「ナバ」という。傘が風に煽られてひっくり返った状況を「傘がナバになった」と言ったりする。岐阜ではキノコのことを「コケ」と呼んでいる。地方で呼び名が変わるのは楽しい。一緒に分けていただいた「アンズタケ」は卵とよく合うのでオムレツにして美味しくいただいた。日本では毒キノコと呼んでいる地方もあるが、ヨーロッパではジロールと呼ばれポルチーニやトリュフと並んで珍重される。
毒キノコといえば20年ほど前の経験だが、蓼科にある友人の別荘を尋ねたときに庭いっぱいにキノコが生えているのに感動したことがある。20種類ほどあったが、持ち込んだ『山と渓谷社』と『保育社』のキノコ図鑑と首っ引きで照らし合わせた。これはいいだろうというキノコを集めて料理した。色々料理したと言っても油炒めとカレーだったが天然のキノコは想像を絶するほど美味い。特に倒木に生えていた天然の「ナメコ」は言葉がでないほど美味しかった。さて、どの図鑑にも載っていない、「オニフスベ」によく似た丸いキノコが残ってしまった。「オニフスベ」と違うのは成長の速度だけ。「オニフスベ」は観てる間に大きくなるのだがこのキノコは大きくならない。ジーと眺めていたけど、半分くらいなら良いか、と勝手に判断し、2人で半分に分けて油炒めにして食べてみた。カットした断面は写真のように外周がゼリー、緑の部分が多分傘になるのかカチカチの粉体にみえた。芯は白く柄になる部分だと思う。味は恐怖で覚えていない。食後、恐怖を紛らすために色々話し込んでいるうちに、テレビから緊急ニュース「本日蓼科方面で毒キノコを食べた親子が病院に救急搬送されました。重体とのことです」が放送された。2人で顔を見合わせ絶句した。半年程経ってからNHKの「自然のアルバム」という番組でスローモーションで詳しく放送してくれて、恐怖のキノコの正体は「キヌガサタケ」であったことが判明した。中華料理で頂いた時は当時を思い出して、緊張感を楽しんでいる。
更に世界中の漫画、図鑑で有名になっている毒キノコに「ベニテングタケ」がある。毒キノコといえばこの絵が描かれている。私の親しくして頂いた先輩が、文科省の環境保護委員に任命されていて、上高地に監視事務所を持っていた。上高地に遊びに行ったときにもう1人のスタッフと「ベニテングタケ」を採って来ていた。「どうするの、この毒キノコ」と行ったら、「食べてみな美味しいよ」というから「大丈夫?」と聞くと自分から食べて見せた。おそるおそる食べてみるとまあ美味しい部類ではある。イボテン酸に慣れてないのでそう感じたのか、念のためもう一本食べようと食べ始めて半分くらい食べたところで、先輩曰く「そのくらいでやめた方がいいかも」私は「ベニテングタケ」の大物を一本半食べ、いまも元気です。
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