ソロコンサート
この龍笛は30年ほど前ネット通信が始まった頃に入手したものだ。
京都の有名なお寺の雅楽部の方で住所名前を名乗られたので購入することにした。管筒に収まり切らない太管で特別製の漆塗りの箱が用意されていた。
はずみで購入したものの奏法がわからず25年程お蔵入りだった。既に購入していたことも忘れていたが、雅楽装束で活動されている人たちを見かけた。
呼び止めて話を聞いてみると、雅楽を普及するために活動しているとのことだった。自分が持っている龍笛のことを話したら是非見たいとの事だったので、後日持参することにした。
管は既に乾燥していて、手入れがされていないことは明白だった。先生が「吹かないと管が割れてしまいますよ」と仰ったので仲間に加えて頂き双方の手ほどきを受けた。
1300年も続いている雅楽の奥の深さに驚かされている。
知り合いの方から能管を売りたい人がいるとの事で拝見するためにお伺いした。
能管とは龍笛を分解して管内にノドという空気の流れを乱れさせる部品を組み入れて音階が出ないように調整された笛だ。
見せていただいた能管は時代物で立派な笛だった。私は音階のある龍笛を勉強しているので、能管を持っても利用することができない旨を伝えた。
持参した龍笛を見せて違いを説明した。
そこに居合わせた5〜6人の人が「龍笛の演奏を聴いたことがない。何か聞かせてくれ。」というので階下の小ホールで演奏してみることにした。
ここのお客さんは、真空管アンプを手作りしたり音楽に詳しい人たちばかりなので緊張する。
覚悟を決めて、季節は秋。秋の調子の平調から「五常楽急」と「賀殿急」を演奏した。
まさにソロコンサートだった。大拍手と絶賛の言葉をいただいて安堵した。
奏者は気がつかないのだが、笛の音が右の耳から聞こえたり左の耳から聞こえたり頭のてっぺんから聞こえたりとか、三方四方から聞こえて不思議な感覚だったとの事。
喜んでいただいて幸せだった。
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