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急患

遠隔地を走行中に電話がかかってきた。
車を停めて電話に出ると小さな声で「腹が痛くてどうにかなりそう、病院に連絡して」と言っている。

聞き取りにくいので何度も聞き返すと、古い知り合いの男性で、介護施設に入っているはずの知人だった。

とにかく、お腹が痛くて片手で抑えているので片手しか使えない。
携帯は、私の番号を押したらしい。

通話が切れてしまったので、どうしたものか考えたが、救急車を呼ぶにも現認していないので受け答えができない。

咄嗟に、警察に電話してみた。

状況を説明して、彼の携帯の番号と住所を教えた。

電話を受けた警察官が他所からの新任だったらしくて、土地勘がなくて住所がわからないらしい。

携帯を鳴らすが、出ないとのこと。一刻も争う様子で住所を探している。

私も地理はうろ覚えで、周りの状況を思い出して伝えるが、2年ほど行っていないので状況が掴めない。

市役所の老人介護担当に連絡して貰えばすぐわかるはずだが、日曜日なので連絡がつかないらしい。

当直の警察官が、名乗り出てくれて地図と首っ引きで私の記憶と照らし合わせている。

電話の向こうでは数名の方が色々な情報を集めている様子が伝わってくる。

30分くらい経過した頃に、とりあえず現場近くに行ってみますとの連絡が来たので安心していた。

それから1時間半くらい経過した頃、また警察から連絡があり、明るい声で、「救急車で搬送されましたが、なんともありませんでした」と連絡があった。

「よかった、ありがとうございました」と返事したものの、『救急車で搬送されているのに何事もなかった』とはどういうことかと考えてみるに、
警察の言う「なんともなかったと」医者の言う「なんともなかった」は全く別の意味だと言うことに気がついた。

天気が良くて、一人助かって、日本のシステムは素晴らしいと感じた1日だった。

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